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「タジキスタンに行くなら訪れるべき地」の筆頭として挙げられるのは、東部ゴルノ・バダフシャン自治州にまたがるパミール高原ですが、国際空港がある首都ドゥシャンベからのアクセスが極めて悪いという大きな難点があります。悪路でのアクセスを強いられるため、とんぼ返りの旅行でも最低1週間程度を要するため、特に日本発着の観光旅行の旅程に含めるとなると、無理な休暇調整を要することになります。
そんななか、タジキスタン西部にも、首都ドゥシャンベから1泊2日の旅程で気軽に訪れることが可能な、特筆するに値する名所が存在します。筆者が実際に訪問したので紹介します。
通称「Seven Lakes」として知られる同名所は、タジキスタン西部の都市パンジャケントの南南東約34kmの山中に位置する山岳湖の総称です。湖はファン山脈と呼ばれる険しい山岳地帯に位置しており、1年を通じて平地と比較すると平均気温が数度下がります。名称は各言語でҲафткӯл (タジク語)、Seven Lakes (英語)、セブン・レイクス (日本語) です。現地でタクシーを手配する際などには「Ҳафткӯл (Haft Kul)」と伝えると、最も通じやすいでしょう。湖は北から南に7つ並んでおり、徐々に標高が高くなります。各湖にはそれぞれ以下のとおり名前が付けられています。
ご覧のとおり、所要時間を計算すると日帰りでの訪問は不可能ではありませんが、出発地点をドゥシャンベやウズベキスタン側のパンジャケントとする場合、窮屈な旅程となる上、万一トラブルが発生した際に帰着予定時間への影響は不可避となります。悪路が多く、年季の入った車両が多いタジキスタンでは、タイヤのパンクやエンジンの故障はごく日常的な光景です。安全管理の観点からも、余裕のある旅程組みを推奨します。
7つの内で最初に目にすることになる第1湖は、含有ミネラルが豊富であることから最も濃く、はっきりとした色で観光客を魅了するといわれています。標高は海抜約1640mです。
2番目に現れる湖は、東西両岸を険しい山の斜面で挟まれているため、1日の大半を日陰で過ごします。一見すると第1湖に見劣りしますが、陽の光が差し込む時間帯には季節や光の度合いによって、湖面はさまざまな光を放ちます。
4番目から5番目の湖は、徒歩で1時間ほどの距離にあるため、ハイキングにはもってこいです。
「ジュマボーイ・ゲストハウス」は第4湖の後尾にある村の中腹に位置するこぢんまりとしたゲストハウスです。7つの湖沿いには幾つかの宿が点在しますが、おおよそ中間地点に位置するジュマボーイの宿は、第4湖と第5湖までの徒歩でのアクセスが容易であるため、おすすめです。
現在、予約を取るためには電話で問い合わせる必要があるためやや手間が生じますが、オーナーの息子さんがBooking経由で予約を受け付けられるよう調整中であるとのことでした (2023年9月初旬時点)。家族経営のほのぼととした宿で、シャワー設備や清潔なトイレが備わっているので大変便利です。パンジャケントからのタクシーの手配代行も行っているようです。
宿に売店はありませんが、RCコーラの1Lペットボトル (15ソモニ) と、バルティカ7のボトル (20ソモニ) を、在庫がある場合に限り別料金で購入可能です。
街頭がないため、夜は満点の星空がひろがります。目を凝らしていると、肉眼で流れ星がみられることもあります。
標高2140mに位置する第6湖「Marguzor」は7つの内で最も面積が大きく、全国版の地図にもはっきりとその名が刻まれています。乾季には水位が低下し、干上がった湖底では子ども達がサッカーをして遊びます。
第7の湖の標高は2400mほどまで上がります。同行した峻典さんは、「冷たい冷たい」と言いながら泳いでいました。つい試飲してみたくなるほど透明度の高い水ですが、放牧された家畜の糞尿が混入しているため、試飲することは推奨されないでしょう。
9月初旬のドゥシャンベはまだ暖かく降水量も少ないため、1年で最も快適な時期のひとつです。この感覚のまま、防寒着を用意せずにTシャツ1枚で7つの湖を訪れた筆者の判断は懸命ではありませんでした。7つの湖の訪問を計画する際は天候の変化や予期せぬトラブルに遭遇する可能性を踏まえ、薄手のダウンジャケット等の防寒具や軽食を持参するといいでしょう。
曇りの日にスマートフォンの低機能カメラで撮影した写真は、肉眼で見られる実際の湖の光景には匹敵しません。中央アジアを訪問する際は、7つの湖への訪問をぜひご検討ください。
記載価格は2023年9月12日時点、OANDA(146.5円=1米ドル)とタジキスタン国立銀行(1米ドル= 10.96ソモニ)発表の両替レートに基づいて算出しています。