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「ソモニ」とは、ソ連崩壊後に流通していたタジク・ルーブルに取って代わり、2000年に導入されたタジキスタンの通貨です。国際的な通貨コード (ISO4217) は"Tajikistan Somoni"の頭文字である「TJS」とされていますが、「SM」とも略される他、ロシア語・タジク語でソモニは「Сомонӣ」と綴られるため、たびたび「CM」とも記載されます。
2024年4月時点で流通しているソモニ紙幣は、1ソモニ、3ソモニ、5ソモニ、10ソモニ、20ソモニ、50ソモニ、100ソモニ、200ソモニ、500ソモニの9種類です。ただし、1ソモニ、3ソモニ、5ソモニの3種類は使用可能であるものの、硬貨の積極導入にともない、見かけること自体がまれになっています。
紙幣:1ソモニ
寸法:141 × 65mm
デザイン (表):ミルゾ・トゥルスンゾダ (詩人)
デザイン (裏):タジキスタン国立銀行
ひと言:まれにおつりとして回ってくることがあります。
紙幣:3ソモニ
寸法:141 × 65mm
デザイン (表):シリンショ・ショテムール (政治家)
デザイン (裏):最高議会
ひと言:1ソモニ、5ソモニ紙幣と比較しても、より、見かける機会が少ない印象です。
紙幣:5ソモニ
寸法:143 × 65mm
デザイン (表):サドリディン・アイニー (作家)
デザイン (裏):アブアブドゥルロ・ルダキの霊廟
ひと言:1ソモニ、3ソモニ紙幣と比較すると見かける頻度は高い印象です。回ってくるものは、大抵年季が入ったシワクチャの状態です。
紙幣:10ソモニ
寸法:147 × 65mm
デザイン (表):サイード・アリー・ハマドニ (作家)
デザイン (裏):サイード・アリー・ハマドニの墓
ひと言:表面には生前のハマドニ、裏面には死後のハマドニが描写されているという非常に珍しいパターンです。ハマドニファンの方々には必見の紙幣です。
紙幣:20ソモニ
寸法:149 × 65mm
デザイン (表):アヴィ・スィーナー (医者、哲学者)
デザイン (裏):ヒッサール城
ひと言:筆者が個人的に最も気に入っている色合いおよびデザインです。9種類の紙幣の内、唯一人物が正面ではなく、しっかりと横を向いている紙幣です。天才と謳われた同氏の晩年の苦悩を表現したかったのでしょうか。
紙幣:50ソモニ
寸法:152 × 65mm
デザイン (表):ボボジョン・ガフロフ (歴史学者)
デザイン (裏):イスファラ郡ティーハウス「シノ」
ひと言:筆者は2018年以降に発行された同紙幣を未だ見たことがありません。50ソモニ紙幣が他と比較して汚れているのは、そのせいでしょうか。
紙幣:100ソモニ
寸法:156 × 65mm
デザイン (表):イスモイル・ソモニ (サーマーン朝統治者)
デザイン (裏):大統領府
ひと言:表面にはタジキスタンの英雄ソモニが描かれています。ソモニの名は通貨単位の名前にも用いられています。タジク人がいかに彼をリスペクトしているかについて、筆者が敢えて説明するのは野暮なことでしょう。
紙幣:200ソモニ
寸法:159 × 65mm
デザイン (表):ヌスラトゥッロ・マクスム (政治家)
デザイン (裏):国立図書館
ひと言:タジキスタンの両替所では必ずしも「〇ソモニ紙幣を多めでお願いします」等の要望が受け入れられません。まれですが200ソモニ紙幣を中心に渡されたり、逆にすべて10ソモニ紙幣で渡されたりすることもあります。200ソモニとなるとやや高額なので、買い物時に出すと嫌な顔をされることがあります。
紙幣:500ソモニ
寸法:162 × 65mm
デザイン (表):ルダキ (詩人)
デザイン (裏):大統領宮殿
ひと言:ルダキもまた、その名前を聞かない日はないほどタジク人にとっては重要な存在です。一方で「ひとつ、ルダキの有名な詩を教えてください」という質問をすると、無言になるタジク人も多いのが興味深いところです。これは筆者が樋口一葉さんの作品解説を求められても答えられないのと極めて類似性の高い現象かもしれません (注:ルダキの作品の多くはすでに失われ、現存するものも難解なペルシャ語で構成されているという背景があるため、筆者の不勉強と同列で語られるべきではない)。
紙幣:500ソモニ (2010年版)
寸法:162 × 71mm
デザイン (表):ルダキ (詩人)
デザイン (裏):大統領宮殿
ひと言:旧紙幣はデザインのみならず寸法も異なっており、財布への収まりやすさにはやや難が認められます。
1ソモニ、3ソモニ、5ソモニ硬貨の表面に描かれている人物は、それぞれ1ソモニ、3ソモニ、5ソモニ紙幣に描かれている人物と同様です。
補助通貨ディラム (タジク語で"дирам") には人物は描かれていません。100ディラムで1ソモニになります。
使い勝手が悪いと判断した人々が、勝手に合計1ソモニとなるようディラム硬貨をテープで固定したものです。ベタ付いている上に財布に収納すると盛り上がるため、おつりとして渡されると地味にテンションを下げられる代物です。ひとたびこれを手にすると、「手放すこと」が最優先事項となります。まるで終わりなきババ抜きに参加させられているような気分です。
2024年4月8日現在の公式両替レート (タジキスタン国立銀行) は、1米ドルの売却レートが10.9435ソモニとなっています。他国の事情に言及することは差し控えますが、筆者はタジキスタンで所謂「非公式両替レート」のようなものを見かけたことはありません。
銀行や国境周辺では外貨両替を持ちかける人々に勧誘を受ける機会もありますが、関りをもつことは賢明ではりません。また、銀行での両替においてもレートが記載された証明書等の発行が行われない事例がほとんどであるため、受理する外貨の額に誤りがないよう注意が必要です。
主要銀行で両替が可能です。取り扱い外貨は限定的であるため、米ドル、ルーブル、ユーロ以外の外貨を持ち込む場合は事前確認を推奨します。日本円の取り扱いがある機関は未確認です (ないことを明言するものではない)。
以下、筆者の利用実績が最も多い金融機関です。
高額紙幣の裏面には真新しい国立図書館、大統領府、国民宮殿などが描かれており、ややデザインのネタ切れ感が否めませんが、独自の配色と幾何学模様がとても素敵な紙幣であると言えます。また、ソモニ紙幣は短辺の長さが統一されているため、日本で購入する一般的な財布にも収まりがいいという実用性を兼ね備えています。