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タジキスタン共和国グルメレポートNo. 9 – ソビエト建築の老舗茶屋ロハット

村中 千廣

村中 千廣

タジキスタン特派員

更新日
2024年1月18日
公開日
2024年1月18日
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タジキスタンにはどのような飲食店があるかご存じですか?

英語でブラウザー検索をかけると、首都ドゥシャンベ市内の飲食店に関する一定の情報は得られますが、日本語で得られる情報は皆無と言っても過言ではありません。

手当たり次第にのれんをくぐり、タジキスタンで出合うことができるさまざまな料理を紹介していきたいと思います。

「おいしい」は、記述がない限り筆者個人の主観です。

いい部分をピックアップできるよう、2回以上利用し、3種類以上のメニューを味わよう心がけています。

食の水準は発展途上であるという見方もあります。批評に終始せず、明るくユーモラスなレポートとなるよう心がけます。

食あたりに関しては、どこで何を食べたとしても一定のリスクがともなうというのが同国の現状です。本稿は「安全」のお墨つきではございませんので、旅行者の皆様におかれましてはくれぐれも体調とご相談の上で、利用をご検討ください。

チョイホナ(Чойхонаи)とは?

タジキスタンの食レポート第9弾は「Чойхонаи Роҳат」。英語にすると「Rokhat Teahouse」で、日本語で表記すると「チョイホナ・ロハット」という具合の響きになります。意味は「ティーハウス・ロハット」であり、その名のとおり、おもにお茶を提供する飲食店です。

タジキスタンにおいてチョイホナは、古くから市民が集いお茶を楽しむ社交の場として知られています。地方の村々においては、若者が年配者との交流を通じて文化、政治、歴史に関する知識を得たり、道徳を学んだりするためのプラットフォームとしての役割も担っていたようです。チョイホナがタジキスタンの芸術や文学の発展にどれほどの影響をもたらしたのかは定かではありませんが、女性を歓迎する風潮が特段強くはなかったという点を除き、19世紀にオーストリアなどで人気を博したコーヒーハウスと類似した存在であったのかもしれません。

チョイホナは伝統的に、主に男性の社交の場所であると考えられています。都市部では必ずしもその限りではありませんが、現代においても特に地方のチョイホナでは、初老の男性が客の大多数を占める様子が確認できます。

おもに飲み物を提供するカフェのような場所を彷彿とさせますが、現代は「Ошхона (オッシュ屋さん)」と同義で使用される言葉となっており、飲み物に限らず、レストランとしてさまざまなタジク料理を提供しています。

※オッシュは中央アジア広域で親しまれているお米を油で調理した主食の料理です。

ЧойхонаиРоҳат

1958年に建設されたロハットは、市内で最も古いソビエト建築の建物の1つとして、ドゥシャンベのランドマークになっています。CNNより"World's Best Tea Houses"の1つとしても選出されたこともあり、国際的にも比較的知名度が高い存在です。

ソビエト時代のレガシーを一掃するという方針のなかで、ドゥシャンベ市内では多くの建造物が解体の対象とされてきました。ロハットに関してもたびたび解体候補として議論が発生しているため、残念ながら今後の存続が保障されているとはいえない現状があります。

辛うじて営業が続いている現在、チョイホナ・ロハットではどのような体験ができるのでしょうか。

©︎@chivillain 建物の外観

明かりが灯る建物の両端は、土産物などを購入できる売店となっています。

©︎@chivillain 営業時間外のファーストフード店

建物の正面には屋根付きの小さな家屋が両脇に軒を連ねています。冬期の営業時間は定かではありませんが、夏期はアイスクリームなどを販売する露店として営業しています。暑い日には多くの通行人が店の前で足を止める様子が見受けられます。

©︎@chivillain 屋外のテラス席

ソビエト連邦時代に生きていたことも、ほかのソビエト建築物を見たこともない筆者は、「ソビエト建築」と聞いてもあまりピンときません。「こういうものなのか」と、受け入れます。

©︎@chivillain 地上階の席
©︎@chivillain 奥に見えるトイレの入口らしき空間

人が見当たらないためてっきり営業時間外なのか疑ってしまいましたが、どうやらそうではないようです。

©︎@chivillain 店内への入口

料理を運ぶ女性スタッフが、一見トイレの入口のように見える木製のドアを開けて中に入る様子を目撃したため、違和感を覚えたことがきっかけとなり、店内への入口を発見しました。

©︎@chivillain 広々とした店内

店内は広々としており、天井や柱には美しい装飾が施されていました。

メニュー

メニューには英語の説明が併記されていたため、タジク語が分からない場合においても注文は容易です。

Шурбо(シュルボ)

©︎@chivillain Шурбо

1人前: 32ソモニ (約428円)

おなじみの国民的スープ、シュルボです。やや冷めていましたが、タジキスタンではスープが冷めているからといって駄々をこねるようなことは常識的ではありません。スプーンを口に運び「味は悪くないな」と、味わいながら寛容であることの大切さについて考えます。

Лагман”Рохат”(ロハット・ラグマン)

©︎@chivillain Лагман"Рохат"

1人前: 32ソモニ (約428円)

すでに一品スープを注文していましたが、固有名詞である店名「ロハット」が料理の名前に含まれる料理を賞味しないわけにはいけませんでした。実際は何のことない一般的なラグマンでしたが、挑戦しなければ、一生「ロハット・ラグマン」の実態を想像し続けるしかなかった未来となっていたことを踏まえると、体験が得られた事実に満足するべきでしょう。

©︎@chivillain ラグマンの麺

見た目とは裏腹にスープは優しい味つけです。不揃いの麺の太さに好感を持ちました。

Салат”Рохат”(ロハット・サラダ)

©︎@chivillain Салат"Рохат"

1人前: 24ソモニ (約321円)

タジキスタンではおなじみの生野菜の盛り合わせです。何でも料理名に「ロハット」とつければいいわけではないと思います。

Шашлыккуринный(鶏のシャシリク)

  • 串に刺さった状態で提供されます。
  • 華麗なフォーク捌きで串から外します。
  • 千切りの玉ねぎといただきます。

1人前: 30ソモニ (約402円)

鶏のシャシリクは大きな焼き鳥と呼んでも過言ではないと思われがちですが、実際には決定的な違いがあります。日本では鶏を串から外すことが推奨される場面と、串から直接かぶりつきたい場面があるかと思います。シャシリクに関しては串のままかぶりつくことは一般的ではありません。また、シャシリクはひと塊が鶏のから揚げ大の大きさであるため、中心部が半焼けの場合があり注意が必要です。

Люля-Кабоб”Рахат”(ロハット・カツレツ)

©︎@chivillain Люля-Кабоб"Рохат"

1人前: 36ソモニ (約482円)

トンカツという奇跡の食べ物と出生地が同じであることを誇りとする私たち日本人からすると、「これのどこが”カツレツ”なんだ?」と言いたくなりますが、その感想こそがロハット・カツレツが担っている責務のひとつなのでしょう。

いわゆる「カツレツ」はフランス料理であったものが、日本で独自のアレンジを施されてできあがった創作料理に過ぎません。当然世界には独自の発展を遂げた様々なカツレツがあり、ロハット・カツレツに関しては、ロシアやウクライナで親しまれる料理「カトリェータ (котлета)」と同系列のものとなっています。ロハット・カツレツは筆者にとって、如何に筆者が自身の「偏見」というレンズ越しにこの世界を見つめているのかを再認識させてくれるきっかけとなりました。

味はというと、香辛料を一切入れないメンチカツのたねを、500W設定の電子レンジで20秒温めたようなものでした。

おわりに

©︎@chivillain

「おいしいものを食べることだけがレストランに行く目的ではない」という視点を育ませてくれる場所、それが筆者にとってのタジキスタン料理店です。

©︎@chivillain 緑茶

フィルターが粗く茶葉が混入しがちな点はご愛嬌。

ЧойхонаиРоҳат

英語メニュー
あり(ただし、簡易的な説明)
英語を話すスタッフ
あり(ただし、簡単なフレーズに限る)
アルコール飲料の提供
あり

記載価格は2023年1月17日時点、OANDA(146.6円=1米ドル)とタジキスタン国立銀行(1米ドル= 10.95ソモニ)発表の両替レートに基づいて算出しています。

本稿は2023年1月時点の報告であり、今後の営業状況を保証するものではありません。

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