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競走馬の産地として知られる北海道新冠町。自然あふれる森の一画、新冠町太陽地区にある「太陽の森ディマジオ美術館」での思いがけない"幻想美体験"をご紹介します。
目次
北海道新冠町太陽にある「太陽の森ディマシオ美術館」は、廃校になった旧・太陽小学校をリノベーションした美術館です。
三角屋根の塔や神殿を思わせる柱が印象的な外観は、太陽小学校当時のデザインをほぼそのまま残し、フランスの幻想画家ジェラール・ディマシオの作品約200点を中心に、アール・ヌーヴォー、アール・デコを代表するフランス人ジュエリー作家・ガラス工芸家のルネ・ラリックの作品約250点などを展示しています。
「太陽の森ディマシオ美術館」の最もよく知られる作品を展示した「第2展示室」。
小学校体育館の造りを生かし、美術館としては珍しい自然光のもとで作品を観賞できる第2展示室は、世界最大級の油彩画(写真左側)とともにディマシオの作品が壁一面に展示されています。
ひとりの画家が描いたものとしては世界最大の油彩画といわれる作品は、そのサイズ感に圧倒されますが、驚くのはそれだけではありません。
幻想的な世界観を巨大なカンバスに描いたそれぞれのモチーフはあまりに細かく、そして幻想画でありながら写実的技巧を駆使していることに驚きます。
作品を鑑賞していると、展示室に変化が。
1日に8回、毎時30分に光と音によるプログラムを上映(上映時間9分)しているそう。
美しいステンドグラスからの採光がカーテンで遮られると、プログラムがスタート。
自然光で見るときの作品とは一転、より幻想的な世界観が広がり、宇宙空間を思わせる光景のなかに没入していく感覚を体験しました。
ライティングの変化とともに、作品の色相まで変わっていく様子は、もはや神秘の空間とも感じる不思議な世界。
ライティングの色相により、巨大な絵画のなかに浮き出して見える部分が入れ替わっていくと、絵画の隅々までをより深く鑑賞できるおもしろさも発見しました。
また、巨大な作品のサイズに合わせて四方に鏡が組み込んであり、鏡の上に立つと(床の鏡の上に立って作品に近づけるエリアがあります)、まるで作品の中へ入っていくような、さらには自分が作品の一部になったような感覚に陥り、時間が経つにつれ、神秘の世界に浮遊しているような不思議な感覚に包まれます。
この第2展示室は、巨大な作品のスケール感に加え、光や音、鏡の効果がおそらく見る人によって異なる想像もしないような感覚をもたらす、強烈なイリュージョン空間でした。
同じく旧体育館をリノベーションしたディマシオ作品と現代抽象アートの展示室もまた、自然光のもとで作品を鑑賞できます。
ディマジオの絵画作品とともに国内外の作家による立体アートが並び、その合間に置かれたベンチに座って作品の世界観を満喫できるのも魅力です。
「太陽の森ディマジオ美術館」の敷地内には、ルネ・ラリックと壹谷 旭のガラス工芸品を収蔵する4面ガラス張りの「ガラスの美術館」があります。
ガラスの美術館の建物は、旧・太陽小学校のプールをリノベーションしたそう。
光が燦燦と降り注ぐ美術館は、ガラス工芸品にふさわしい色と透明感のなかで作品を楽しめます。
一方で、本館の一画にも吹き抜けのホールを中心にルネ・ラリックのガラス工芸品やアンティークジュエリーを展示しています。
写真(↑)は、ラリックが好んだ自然モチーフのひとつ「すずらん」のネックレス。
一度に約250点ものラリックジュエリー作品や香水瓶・カーマスコットなどの作品を常時見学可能な国内最大級規模の展示室で、アール・ヌーヴォーからアール・デコへの変遷も垣間見ることができます。
一方で特筆したい点は、作品を展示する家具や床に敷かれたペルシャ絨毯。
何気なくホールになじんでいますが、アート作品のほかにも隅々まで視線を移していくと、美しい工芸品に出合う思いがけない感動があるかもしれません。
吹き抜けのホールには、ステンドグラスや豪華シャンデリア、そして貴重な工芸品に囲まれながらルネ・ラリック作品が展示されています。
個人的には、「太陽の森ディマジオ美術館」で最も特徴的な雰囲気を堪能したと思ったのは、このスペースでのディマシオ作品とラリック作品が融合した世界観です。
吹き抜けのホール両サイドの壁には、ガラス工芸品を見守るかのように飾られたディマシオの幻想画。
壁一面のステンドグラス「宇宙と銀河」とも相まった独創的なイメージが広がっています。
さらに個別のルネ・ラリック展示室に入ると、ディマシオ作品とラリック作品が一層融合し、より濃密な世界感を創造しているように感じます。
まさに宇宙を感じた空間。
圧倒的なディマシオとラリックの作品群に囲まれ、日常では発動しない想像力を掻き立てられたのかもしれません。
幻想的な空間が散りばめられた「太陽の森ディマジオ美術館」ですが、その雰囲気とは異なる一面も。
日本人作家作品の展示もあるとのことで、階段のネコの足あとに導かれ、2階へ行ってみると……
目に入ったのは、気持ちよさそうに床に寝そべっている看板ネコ"マスク"。
美術館の副館長でもあり、人見知りをしないそう。
このときは昼寝中だったので、モフモフ撫でたい気持ちを抑え、そっとその場を離れました。
すると、ネコをモチーフにしたかわいらしい作品の数々が並んでいます。
こちらはカラフルな心象画。
美しい色彩は、ステキなイスに腰掛けて、じっくりと観賞できます。
(展示室のアンティーク扉も美しい。)
こちらは、1階の展示室にあるヨーロッパの田舎をテーマにしたミニチュア陶芸作品。
まるで人々が動き出しそうな生き生きとした田舎の町や風景は、さまざまな角度から鑑賞して何度も楽しめます。
ディマシオやラリックが暮らしたヨーロッパのイメージが膨らんできます。
なお、美術館の敷地内にある「ディマシオ・グランピングビレッジ」を利用すると、もれなく"ナイトミュージアム"も体験できるそうです。
また、館内にはレストラン「アトランティス」があるので、食事やカフェタイムをはさみながら、ゆっくりと作品を鑑賞できます(「アトランティス」の記事はコチラ)。
最後に小学校の名残を感じる館内のスポット。
随所に懐かしさでほっこりとさせてくれるところも「太陽の森ディマシオ美術館」の魅力です。
雄大な日高山脈を背景に豊かな森をはじめ自然にあふれる新冠町へのドライブに「太陽の森ディマシオ美術館」、レストラン「アトランティス」へもぜひ立ち寄ってみてください。
(写真は、春、新冠町で羽を休めているハクチョウ。)