キーワードで検索
2024年5月3日にパリ日本文化会館で観光庁・日本政府観光局(JNTO)による日仏観光セミナーが開かれました。建築家の隈研吾氏、料理人のピエール・ガニェール氏らをゲストに迎え、日本とフランスについての観光などをテーマにした講演が行われました。来仏中の岸田首相も挨拶に立ち寄りました。
隈研吾氏の講演は、日本の里山と建築について。「日本は城壁などで集落と自然を分けて考えるのではなく、自然は常に人間の住む場所と常に繋がってきた」と日本とヨーロッパにおける街の構造の違いを述べなら、日本における里山の位置付けと重要性を述べました。
隈氏は、自ら設計した栃木県那珂川町にある馬頭広重美術館を、建築において里山の考え方を取り入れた例として解説。美術館の裏手にある里山および神社との関係性を生かしながら、建築に使うための木や石などの材料は、その里山から調達して建物を作ったことを説明しました。
今年6月29日までパリ日本文化会館では企画展「丹下健三と隈研吾展 -東京大会の建築家たち」が開かれていますが、そのことにも触れながら「フランスと日本の友情がオリンピックを機会に深く結びつく時になればいい」と、パリ大会を目前に控えるフランスでの日仏友好を願いました。
続いて岸田首相による挨拶と、岸田首相の地元、広島県の日本酒である「加茂泉」を使って壇上での鏡開きも行われました。
岸田首相は「印象派に影響を与えた浮世絵から現代の漫画、アニメまで、日本の芸術を評価するフランスの方々は、われわれ日本と感性を共有する大切な友人である」と述べ「(外国人観光客は)ここ10年で1000万人から3000万人へと3倍増の勢い。政府では2030年に6000万人に達する目標を掲げている。まだ発見されていない日本の魅力をフランスの方々に見出してもらいたい」と、さらなる訪日観光の促進を訴えました。
ピエール・ガニェール氏は、東京でも展開する同氏のレストランについて説明。日本での経験と日本における食素材の素晴らしさについて講演しました。
日本旅行業界(JATA)の高橋広行会長は、具体的な数値を出しながら「インバウンドは回復しつつあるがアウトバウンドがまだ回復していない」と指摘。その要因に、日本人のパスポート取得率の低さ、コロナ禍前と比べた時の国際線フライトの総座席数の低さ、円安などを挙げました。
高橋会長は「フランスは何度訪れても魅力的な観光コンテンツがある。サステナビリティを意識した高品質な旅行を提供できれば」とフランスの観光文化に触れながら、日本における海外旅行需要の増加への対策を求めました。
講演後は、パリ市内にあるミシュラン1つ星のレストラン「茶会席あきよし」の秋吉雄一朗シェフなどによる日本食などが振る舞われ、来場者が舌鼓を打ちました。