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5月の南フランスはイベントが盛り沢山です。そのひとつが毎年カンヌで開かれるカンヌ国際映画祭。世界中から公開前の映画作品が集まり、評価されます。並行してマルシェ・ドゥ・フィルムという映画の見本市も開かれており、各国の魅力的な作品を求めて世界中からバイヤーが訪れます。2024年の開催期間は5月14日〜25日。そのカンヌ国際映画祭に今年も来ました。
映画祭の期間のカンヌ市内は、毎年とても賑わいます。映画祭を取材するメディアや、映画ビジネスを扱う業界の関係者に観光客も加わって、町中がお祭りムードです。
メーン会場となるのが、映画祭の本会場であるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ。ここは一般の人は入れませんが、そうでなくとも町中の至るところで映画祭の雰囲気を感じられます。特に映画祭中日の週末は、フランスの祝日が合わさった連休とも重なって、カンヌ市内はとても大勢の人でごった返していました。
今年の日本関連の話題については、「ある視点」部門に奥山大史監督『ぼくのお日さま』がノミネート。今年の映画祭公式ポスターは黒澤明監督の『八月の狂詩曲』の1シーン、パルムドールを競うコンペティション部門の審査員のひとりには是枝裕和監督が就いています。スタジオジブリには名誉パルムドールが授与されています。
カンヌ国際映画祭の独立部門である「監督週間」には、日本から3作品が出品。久野遥子監督と山下敦弘監督の『化け猫あんずちゃん』、山中瑶子監督の『ナミビアの砂漠』、山村浩二監督の『とても短い』が選ばれています。なお監督週間の公式ビジュアルのデザインは北野武監督です。
今年で77回を数えるカンヌ国際映画祭ですが、時代に合わせて毎年少しずつ変化しています。そのひとつ今年はイマーシブ・コンペティション部門ができたこと。イマーシブとはVR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)技術を取り入れた没入型の作品のことです。
初年の今回はコンペティション部門8本とコンペティション外部門に6本が出品されています。イマーシブ・コンペティション部門には河瀬直美監督の『Missing Pictures: Naomi Kawase』が選ばれています。
映画以外のところにも細かな変化がありました。ごみの削減と環境への配慮から、映画祭参加者に配られていた紙のパンフレットはほとんどがデジタルに変わりましたが、今年はプレスルームなど一部のコーヒーの提供が、紙コップから繰り返し使用可能なプラスチックのコップになりました。
カンヌ国際映画祭に限らず、この廃棄物を少なくしようとする社会的な流れは、フランス全体で進んでおり、たとえばマクドナルドでは店内飲食を選ぶと、フライドポテトが紙製容器ではなくプラスチック製容器に入れられ提供されます。
権威や伝統ある映画祭という側面と、環境問題や女性の権利についてなど、時代に合わせていち早く変化を取り入れていく側面の、2面が混ざり合いながら毎年開催されています。
カンヌ国際映画祭の開催時には、メーン会場であるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレの周囲に、映画祭のオフィシャルショップが開いています。そこでは一般の人も、Tシャツやキーホルダー、バッグ、マグカップなど映画祭のオフィシャルグッズを購入できます。
今年の私のおすすめは、スタジオ・ジブリとカンヌ国際映画祭がコラボレーションしたポスター。今年はスタジオジブリが、個人ではなく団体として初めて名誉パルムドールを受賞して、スタジオジブリの宮崎吾朗監督もカンヌを訪れています。その2024年にふさわしい記念品です。
『紅の豚』のポルコ・ロッソが中央に、その周囲にジブリの主要キャラクターが配置された真っ赤なポスターです。
映画祭の雰囲気を楽しみつつ、カンヌ市内にある定番スポットも巡ってみましょう。
まずチェックしたいのが、パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレ周囲に地面に散らばる世界の著名映画監督の手形。今年のカンヌ国際映画祭のポスターになった黒澤明監督の手形もあります。
建物でいうと、パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレから東の小山、シュヴァリエ山の山頂にあるカストル博物館が必見です。中世にレランス諸島(カンヌの沖にある二つの島)の修道士によって建てられた城で、世界中の美術品が展示されています。塔の上からの眺望は抜群で、カンヌ市内を一望できます。
市庁舎の北にある市場は土産物探しなどに。ここではさまざまなお店が天井のある構造内の吹き抜けの市場内で露天を広げており、少量品から雑貨まで手に入ります。オリーブなどホテルの部屋でつまめるような食品から、南仏らしい産品も売られています。