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下諏訪駅から徒歩5分ほどの場所にお店を構える「本田食堂」。信州食材を使った創作料理を目当てに来店するお客さまが多く、週末は予約でいっぱいになってしまうのだとか。今回は、リピーターはもちろん、食通が足しげく通う「本田食堂」におうかがいしたので、そのおいしさの秘密をご紹介します。
食通を唸らせる絶品料理を生み出すのは、「本田食堂」店主の本田由剛さん。名店と噂の「本田食堂」を営むからには料理一筋の人生かと思いきや、もともとはプログラマーだったというから驚きです。本田さんは会社員時代、プログラマーをしながら、趣味のキックボクシングをスタート。「試合までに◯kg減量を」と言われながらも、ラーメンが大好きで体重は右肩上がりだったそう。そこで「リバウンドはしたくないけれど、おいしいご飯が食べたい」という思いに火がつき、ネットで中華鍋を購入しました。これが、ご自身で料理を始めるキッカケになったのだとか。
けがをした際、キックボクシングの世界からは卒業したそうですが、ジムで出会ったタイ人と仲良くなり、海外に興味を持ち始めます。26歳のとき初めて海外へ出たことで、旅のおもしろさに目覚めベトナムやカンボジア、エジプトなどを周遊し、中東、東ヨーロッパを通り、アメリカへ渡りました。本田さんは「旅もしたいし料理もしたかった。でも、先に料理を始めてしまったら、旅に出れない気がしたので、まずは旅をすることにしました」と当時のことを振り返ります。
その後帰国し、東京・駒沢で飲食を始めました。紆余曲折ありつつも、駒沢で出会ったオーナーとの縁で、数年後に長野県に移住し、本格的に料理の道に入ります。「農家に直接野菜を取りに行くことがあって。初めて畑に行った時、田舎の怖そうな親父に、「カブを引っこ抜いて、食べてみろ」と言われたんです。言われるがまま、食べてみたらおいしすぎて感動した。「今まで食べてきたのなんだったんだろう」と思いました」と話してくれました。
このような経験から、「素材を生かす料理がしたい。そうすれば、お客さまが生産者のストーリーを知ってくれる。自分がパイプ役となり、お客さまも生産者も両方喜ばせることができる。人に喜んでもらえるのが好きなので、料理を通して、それを実現したい。今でも野菜は自分で選びに行くようにしていて、蓼科・塩尻・諏訪などの野菜を使ってメニューを考えています」。
「"食堂"という名前にしたのは、イタリアンでもフレンチでもなくジャンルにこだわらずに日常使いの店がいいと思ったから。少しだけ遊び心をプラスして、「食事って楽しい」を感じてもらえるお店にしたい」と本田さん。
そんな「本田食堂」ですが、もともとは太巻き専門店で、リノベして今の形になったそう。「その前はメガネ屋や時計屋、自転車屋だったと聞いています。お店を購入したときはボロボロだったけど、友人や仲間に手伝ってもらい、手作業で内装を変え、みんなでリノベして今のお店ができあがりました」と語ります。店内はどこか懐かしい灯りがテーブルを照らし、落ち着いた雰囲気でまとまっています。中庭にある大きな欅の木も印象的。私も何度か窓際の席を利用させていただいていますが、どの季節も楽しめる特等席です。
「下諏訪駅前通りは静かな通りですが、「駅前に来てよかった」と言ってもらいたい。そのため、毎月第4日曜日には「下諏訪角打ち」を開催して、店内をフードコートのようにしています。お店に入るハードルを下げて、地域を盛り上げていきたい」と話してくれました。
「本田食堂」のメニューは、すべて本田さんご自身が考えています。「アラカルトのメニューは基本的に同じ。ランチやディナーコースは、今、どの食材があるかで少しずつ変えています」。本田さんは、素材を活かした創作料理を手掛けていますが、「仮に胡瓜があったとして。確かに胡瓜なんだけど「家ではできない、すごい料理」をつくりたい」と語ります。
よく知っている食材でも、ひと口食べたら「ものすごくおいしい」という想像を超えたメニューを目指しているそう。私も何度かお店を訪れていますが、その度にメニューが変わり、新しい体験をさせてくれるので、また行きたくなってしまう。ついついリピートしてしまう人が多いのも納得のお店です。
高原から吹く爽やかな風が、気持ちいい諏訪の夏。これからの季節はまさにベストシーズンです。都内からでも日帰りで行ける距離なので、ぜひプチトリップで下諏訪の名店「本田食堂」へ足を運んでみてください