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未来へ紡ぐ、諏訪の銘酒「真澄」の挑戦

加藤朋子

加藤朋子

神奈川特派員

更新日
2024年7月31日
公開日
2024年7月31日
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長野県・諏訪に蔵を構える宮坂醸造。日本酒好きなら一度は聞いたことがあるだろう優良酵母、「7号酵母」発祥蔵としても知られています。今回は、社長室 室長 宮坂勝彦さんに、蔵元ショップ「セラ真澄」をご案内いただき、今後の「真澄」の取り組みをうかがいました。多くの人に愛される「真澄」の魅力をご紹介します。

樹齢200年を超えている黒松を鑑賞しながら、試飲ができます
  • 広々とした空間
  • テイスティングルームの案内
  • 信州山椒オイルと煎り酒
  • 四季のジャム山根白桃

今回おうかがいした「セラ真澄」は、1997年にオープンした蔵元ショップ。食卓に集う人々を和ませる逸品や、日本酒文化、食卓を囲う素晴らしさを伝える品々が揃います。日本酒の他に、甘酒や器、調味料などが並び、諏訪のお土産を選ぶにもピッタリな場所。

昨年(2023年)は、同店の奥にある「松の間」をリニューアルし、試飲スペースも誕生しました。明るい光が差し込む広々とした空間で、樹齢200年をゆうに超える黒松を愛でながら試飲を楽しむことができる特等席です。

ビンテージの日本酒が並びます
  • 歴史を感じる階段箪笥
  • 展示スペースの入口
  • 趣のある通路

「セラ真澄」から奥に進むと、日本酒を保管する蔵や醸造施設があります。通常、一般公開はしていませんが、今回は特別にご案内いただきました。特別な展示スペースに、一歩足を踏み入れると、そこにはビンテージの日本酒がズラリ。1971年から現在まで、すべての年代の「真澄」が揃っていました。

1971年は、「大吟醸」など細かい部分まで「日本酒」を認識している人はほとんどいなかった時代。それでも先代は「余計なものは混ぜたくない」という思いで、一切手を抜くことなくていねいに日本酒づくりを続けていました。そんな「真澄」の古酒は、1971年から50年後の2021年に販売を開始していますが、まだまだ古酒があることを認知されていません。そこで、ひとりでも多くの人に「古酒」の存在を知ってほしいと考え、つくられたのがこちらの部屋。ここまで古酒が揃うと、まさに圧巻の景色です。

こちらに保管してあるものは一升瓶ですが、「セラ真澄」にて720mlのサイズで販売しています。宮坂さんは「代々いいお酒にこだわり、意図してそれを繋いできた。お客さま一人ひとりにとっての思い入れのある「年」があると思うので、それぞれの人にとっての特別な「年」を日本酒でお祝いしたい。その「年」の意味や価値を、真澄を通して伝えていけたらうれしいです」と話してくれました

諏訪は標高759mの土地。標高が高く山々に囲まれた場所は本来人が集まりにくい傾向がありますが、豊かな霧ヶ峰の伏流水に恵まれ、明治維新後の早い段階で鉄道が開通し、港町・横浜と繋がったことで、諏訪の地に人や物が集まるようになりました。その後、戦争の時代に突入。戦時中は、酒づくりの原料でもある「米」が貴重な存在だったため、酒づくりを続けることが困難だった時代でもあります。宮坂醸造も例外ではありませんでしたが、統廃合で暖簾を下ろした蔵も多いなか、1920~30年代に「いいお酒を真面目につくっていた」ことが評価され、蔵の統廃合から免がれ現代に続いています。

宮坂さんは「先代の、日本酒づくりへのこだわりや思いが途切れていたら今はない。「真澄」は数ある蔵の中のone of themかと思っていたけれど、only oneの蔵だなと改めて感じています。激動の時代の変化とともに歩んできた日本酒をいかに次の時代に繋いでいくか。いかに価値を呼び起こしていけるかを考えて酒づくりと向き合っています」と語ります。

365日あるうちの300日愛されるものをつくりたい

今回ご案内いただいた宮坂勝彦さん

宮坂さんは大学卒業後、2年ほど三越伊勢丹で販売に携わり、その後宮坂醸造へ入社。清酒製造の現場を学んだ後、イギリスの販売代理店で営業の研修に励みました。まったく別業界のお仕事ではありますが、それぞれの経験が今の仕事に繋がっていると話します。「新宿伊勢丹で働いていた頃は、ファストファッションが流行っていた時代。トレンドを安く早く手に入れて、また次の流行が現れたらそちらに移る。それが主流の時代でしたが、新宿伊勢丹の店頭には、ブランドらしさをまとった芯のあるプロダクトが並んでいました。ブランドのフィロソフィーがあり、譲らない世界観がある。ブランドの強さというものを間近で感じることができたのが、いい経験になりました」と宮坂さん。

「新宿伊勢丹を経て、改めて感じたことは「一時的なゴージャスさより、タイムレスなアイテムが好き」だと言うこと。蔵に戻ったら、タイムレスに愛される日本酒を表現したかった。365日あるうちの300日愛されるものをつくりたい。日本酒は10年後も20年後も存在すると思います。でも、いつ飲んでも「やっぱり真澄はいいね」と言ってもらえるお酒をつくりたい。嗜好性を持った日用品を目指しています」と笑顔で話してくれました。

「セラ真澄」でも人気の3本
  • 真澄スパークリングOrigarami
  • 真澄純米大吟醸七號(ななごう)
  • 真澄山廃純米吟醸真朱AKA

「真澄」と言えば「7号酵母」を連想する方も多いかと思いますが、「お酒ならなんでもいいわけではなく、真澄がいいと言ってもらえる酒づくりをしたい。だからこそ蔵に帰ってきて最初に「7号酵母」への原点回帰を行いました。同業界には18号や19号など、華がある酵母がたくさんあります。もちろん、それはそれで魅力がある。でも、インパクトでは負けますが、真澄は7号で勝負したい」と語ります。

「表現が大袈裟かもしれませんが、本気でラブ&ピースのためにお酒をつくっています。愛と平和。お酒を飲んだら、普段自分が言えないことや悩みなどが話せて、人と人との結びつきになる。日本酒が言葉の枠を超えて、愛と平和を繋いでいくものとして存在してくれたらうれしい。古来から人と神様、人と人を繋ぐものとしてお酒があります。たとえば、神社では、朝御饌・夕御饌(あさみけ・ゆうみけ)でお酒が出て、その後、直会(なおらい)で人々がお酒を酌み交わします。人と自然が繋がる瞬間として、日本で淡々と受け継がれてきた伝統のひとつ。こういった日本の精神性を、真澄を通じて体で感じてもらえたらうれしいです。蔵元として、諏訪大社のあるこの地で、御神酒をつくることができるのは誉だと思っています」と話してくれました。

そんな歴史ある宮坂醸造の日本酒を楽しむことができるイベント「上諏訪街道 まちあるき吞みあるき」が、10月5日(土)13時~17時に開催されます。場所は「セラ真澄」の目の前を通る甲州街道沿い。約500mに軒を連ねる五つの酒蔵を歩いて巡り、まちあるきと銘酒を堪能できる日本酒好きにはたまらないイベントです。メイン会場は、昨年同様、歩行者天国にして開催するそう。チケット販売や会場情報などの詳細は、諏訪五蔵ホームページにてご確認ください。

暑さが少し和らいだ季節に、日本酒を片手に諏訪ならではの呑みあるきを楽しんでみてはいかがでしょうか。

セラ真澄

住所
長野県諏訪市元町1-16
電話番号
0266-57-0303
アクセス
JR中央本線上諏訪駅から徒歩15分
URL
https://www.cellamasumi.jp/

上諏訪街道まちあるき吞みあるき

日時
2024年10月5日(土)13時~17時
URL
https://nomiaruki.com/
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