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Tere!(エストニア語で「こんにちは」の意)
2024年の夏休みももうおしまいですね。皆さんはどんな夏を楽しまれましたか?
私は夏の最後の締め括りに「死のダンス」を観てきました。「死のダンス」はエストニアの首都タリンにある世界遺産「旧市街」内、聖ニコラス教会にあります。
この教会はその名が示す通り、船乗りの守護聖人・ニコラスに捧げられた教会です(非常時には要塞として用いることもできるよう建てられたため、教会としては変わった造りで、入り口はわかりにくいところにあります。行かれる際にはお気をつけください)。
現在は教会と展望台と博物館、そしてコンサートホールの機能を持ち、クリスマス・マーケットの時期には建物内外にクリスマスツリーとオーナメントなどが飾られるので、冬の夜はとてもロマンチックな雰囲気のエリアになります。
さて私が観にきた「死のダンス」。この絵画は15世紀に描かれたもので、王様や偉い人と骸骨が一緒に踊っている絵画の下部分には「死は誰にも平等に訪れる」というメッセージが書かれています。
「死のダンス」は幅7.5メートルと随分幅長の絵画なのですが、もとはさらに長くなんと30メートルもあったそうです。巻き物みたいですね。絵にはあらゆる階級の人々と骸骨が互い違いに踊る絵が描かれていたそうです。
消失した部分についてなぜよくわかっているのかというと、実は「死のダンス」はここだけにある作品ではなく、かつてヨーロッパのあちこちでよく用いられた絵画モチーフなのだそうです(ここ聖ニコラス教会にあるものはリューベック教会にあった作品の模写だそうです)。
この絵画を観ると、14世紀に流行ったペストの恐ろしさと当時を生きる人々の諦観にも似た思想に触れることができるようで、私は幾度となくここに訪れてはこの絵を眺めています。
しかし今回、この絵画を観ている時に知り合ったドイツ人の方が教えてくださったのですが、ペストが大流行していた頃、ペストは水で感染する、そして踊ることでペストが予防できるという迷信があったそうです。なんと!!!
この「死のダンス」は王様でもお金持ちでも死には抗えないことを示しているのかと思っていたら、みんなで一生懸命踊ってペストを予防しているところの絵だったのかもしれない、どんな時もみんなで手を取り合ってがんばろう!という絵だったのかもしれないということを知り、びっくりしました。そういえばペストが流行ったからと言ってみんなで踊り出すなんておかしいですもんね。絵画に書いてあるメッセージにはもっと深い意味があるのかもしれませんね。
いずれにしてもその後「みんな平等」という考え方は政治を司る人々にとって邪魔な考え方のため「死のダンス」は消えゆく運命となったので、抗えないのは人も思想も絵も何もかも同じかもしれないなと思いました。
というわけで今回「死のダンス」をご紹介いたしましたが、一度、まだ生き残っている「死のダンス」と向き合ってみませんか?
私たち人類は今も踊っているのか、この絵は何を示唆しているのか、もしよかったらご自身の目で確認してみてください^ ^