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パリ日本文化会館で怪獣特集、貴重資料や大スクリーンで見る巨大特撮映画

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2024年10月13日
公開日
2024年10月13日

パリ市内にあるパリ日本文化会館では2024年11月前半まで「怪獣映画特集」が組まれています。当時のポスターなど貴重な資料を並べた館内展示や講演会、怪獣映画上映がおこなわれています。

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怪獣映画特集の関連展示と映画上映

パリ日本文化会館の地上階エントランスホールでは、現在、怪獣映画特集の関連展示(2024年10月4日〜同11月2日)が開かれています。日本の怪獣映画に関連した海外版のポスターや冊子などを中心に、貴重な資料が並びます。これらは主に、フランスのコレクターが所蔵するものを借りて今回の展示に至ったとのこと。

資料はゴジラシリーズを中心にガメラなども含まれます。ポスター内の文言もフランス語で書かれており、パリならではの展示と言えます。フランス語版の資料を眺めていると、同じ日本映画でも外国映画のように見えるから不思議です。

地上階の展示とあわせて楽しみたいのが、期間中に館内で上映がおこなわれている怪獣映画の上映イベント(2024年10月4日〜同11月9日)です。1954年に公開されたゴジラシリーズの第1作『ゴジラ』をはじめ、『空の大怪獣ラドン』『大魔神 怒る』といった作品や、近年の『シン・ゴジラ』『ゴジラ-1.0/C』まで、1954〜2024年の怪獣特撮の歴史を幅広くカバーして上映されています。

料金は大人1名6ユーロとお値打ち。パリ日本文化会館の公式サイトから上映スケジュールと確認とオンラインでのチケット購入が可能です。

怪獣と戦後ポップカルチャーの講演

講演の様子

去る10月5日には、パリ日本文化会館で「怪獣と戦後ポップカルチャー」と題した講演会も開かれました。講演を担当したのは怪獣映画の研究者であるファビアン・モーロさん。1954年の『ゴジラ』以前の、戦前の特撮黎明期の様子から現在に至るまで、時折短い映像資料を含めながら、時系列で紹介していきました。

ゴジラやガメラといった王道の作品だけでなく、河崎実監督『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』などの作品にも触れ、満席の会場に集まったフランス人特撮ファンもうなる内容。なお同作品中で、フランス大統領としてエスカルゴ・サルコジという名前の役が登場するそうで、それを述べると会場からは「映像を!」と掛け声が飛びました。

1回の講演ではもったいないくらいの情報量のため、最後は話す速度が少しスピードアップ。日本における怪獣映画の全てをきちんと紹介したいという様子からも、同氏の特撮愛を感じられました。講演後の質疑応答では、会場からスーパー戦隊になどについての質問もありました。

ファビアン・モローさん

私にとって今回の講演は「怪獣映画」という点で興味があったため参加したのですが、講演者にファビアン・モローさんという名前を見つけて、記憶に引っかかる部分が。思い出してみると、モローさんとは、じつは今回の講演以前に個人的に一度接点がありました。

私は、2019年に『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』という映画のパリ(およびドイツやイギリスでの)上映を、同作品との縁もあってコーディネートしたのですが、パリ上映初日に、同作品に対する現地メディアの取材対応を行いました。その際に連絡をくれた一人がモローさんであり、当時も今回の講演のように、熱意あふれながら監督に質問をしていた姿が、今も記憶にあります。

それを思い出して、今回の講演会で再びモローさんのお顔を拝見できたことがとても嬉しく、また引き続きフランスで特撮研究の第一線で頑張っている姿を見て、とても感慨深く思いました。

なお『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』とは、戦前の1934年に公開された『大仏廻国』(当時の表記は『大佛廻國・中京篇』)のリブート作品です。『大佛廻國・中京篇』とは、愛知県東海市(当時は愛知県知多郡上野村)にある聚楽園大仏が人々の祈りを受けて立ち上がり、名古屋およびその周辺を歩いて巡るというもの。大仏が各地で名所を見物したり、人々に道徳を説くという内容です。

『大佛廻國・中京篇』を撮影したのは枝正義郎監督。ゴジラやウルトラマンなどを作り上げ、特撮の神様と言われる円谷英二を、映画の世界に誘った円谷の師匠とも言える存在です。『大佛廻國・中京篇』での大仏は、存在としては怪獣と対極にありますが、巨大という点では怪獣と共通項があり、日本の巨大特撮の最初期の作品です。

この主役である聚楽園大仏を実際に建立したのが、私の曽祖父で、そのつながりから『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』の公開時には、個人的にお手伝いを申し出る経緯となりました。そんな5年前のことを思い出しながらも、個人的に堪能した講演会となりましたが、それを差し引いても、今回の一連のイベントは十分に楽しめる内容となっています。

■パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)
住所:101 bis Quai Jacques Chirac 75015
URL:https://www.mcjp.fr/

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