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予約から当日の車の鍵まで、全てスマホのアプリで関係する無店舗型のレンタカーが、今パリでは増えています。二大勢力はVirtuoとToosla。車の貸出や返却に人を介さないため、コミュニケーションのわずらわしさがない一方で、問題が起きた際の解決は、アプリ内メッセージやオペレーターとの音声通話を用いて遠隔でおこなわれるため、一定レベル以上の語学力を要します。今回は私の体験に基づいた各ケースをご紹介します。
パリ市内の場合、VirtuoおよびTooslaは、地下駐車場にその発着場所が設定されていることがほとんどです。いずれの地下駐車場でも「Virtuo→」「Toosla→」と車が停められている各社駐車スペースへの案内が表示されていますので、車までの経路はわかりやすいです。
一方で、旅行者にとっての最初の難関は、歩行者用駐車場入口のドアです。その駐車場の契約者であれば、駐車場入口のロックを開けるための非接触キーやドアコードを持っていますが、レンタカー利用者は持っていません。そのため、インターホンを押して係員の人にドアのロックを開けてもらう必要があります。入口近くが常に駐車場の管理人室とは限りませんので、まずここで自分の身分を伝える簡単なフランス語(場合によっては英語)が必要です。
駐車場内に入り車のレンタルを開始した後に、私がよく遭遇するのは、駐車場から出庫する際に出口のバーが上がらないという事態です。初めから、レンタカーのナンバーが出口の機械に登録してあり、そのナンバーを機械が認識してバーが上がる駐車場もありますし、車内に置いてある駐車券を使って出る場合もあります(駐車場によって異なります)。
ただ、それらがスムーズにいかず、ナンバーを認識するたタイプの駐車場でナンバーを認識せず出られなかったり、車内に置いてある駐車券の有効期限が切れており、多額の駐車料金が表示されるといったことを、たびたび経験しました。自分の後ろに車が待っていると、なおさら焦ります。
その際は、出口の機械のインターホンを押して「Virtuo(またはToosla)の利用者だけれど出口のバーを開けてください」と伝えます。駐車場によっては確認のために、その車のナンバーを求められますので、それも伝えます。インターホンがつながれば良いですが、つながらない(呼び出し音にはなるが誰も出ない)場合もあります。その際は、レンタカー会社に連絡して事情を説明し、出庫方法について指示を仰ぎます。
問題が複雑化するのは、金銭が発生するケースです。インターホンもつながらず、どうしても駐車料金を払わないと車を外に出せない場合、レンタカー会社から「一時的に立て替えて、後ほど請求してください」と言われることがあります。この場合は特に注意が必要です。
私は、Tooslaでレンタルした際にこのケースに遭遇したのですが、その時の駐車場は、車内のサンバイザーに挟んである駐車券を使って出るタイプでした。しかし、月初めだったため車内にある駐車券の有効期限が前の月末までになっており、Toosla側は事前にその確認と交換ができていませんでした。
まず、アプリ内のメッセージ機能で駐車券が有効でなく駐車場から出られないことと、料金がかかることを連絡。すぐに返事は返って来ず、その日のスケジュールも乱れてきそうだったため、音声通話で連絡。通話もすぐにはつながりません。いつも2〜3分は待たされます。そうしているうちに、メッセージで「あとで請求してくれれば立て替えるため、その場で払ってください」と言う回答がありました。
少し違和感を感じたため、有効期限切れの駐車券や機械に表示された駐車料金を写真に取るなどして、いくつか証拠を保存。後日、その際の駐車料金32ユーロをレシートともにTooslaに請求しました。しかしTooslaは、最初「払い戻しはできません」と回答。理由は、返却した車のサンバイザーに駐車券が残っていたため、最初にToosla側が用意していた駐車券を、私が出庫の際に使っていないからだそうです。
実際、そのサンバイザーに残っていた駐車券は、レンタカーを返却する際に私が入庫の際に取った駐車券を挟んだものであり(つまりTooslaの整備担当者は、その駐車券がどのような内容であるか確認しておらず、返却後の車内チェックを終えたと思われます)、これら経緯説明を証拠を論理的に提示しながら数回にわたってやり取りをして、ようやく返金が叶いました。
借りたレンタカーが、走り出してみたらパンクしていたということもありました。これもTooslaで遭遇した出来事です(じつは今回ご紹介しているトラブルは全て同日に起きました)。
レンタカー開始時は毎回、私は目視ですが空気圧の確認をしています。この日も確認したつもりでしたが、パリの市境を過ぎて高速道路に乗り、最初のサービスエリアでひとまず車を止めたところ、左後輪のタイヤが縮んでいるような症状を見受けられました。念のためサービスエリアにある空気入れで左後輪に空気を入れると、空気が漏れる音がします。パンクでした。
この日は駐車場を出る際に、駐車料金の件で時間をかなり取られており、それに加えてのパンクです。すぐにアプリのメッセージで報告を入れ、代車の手配を用意。その後、Tooslaと提携している整備会社から電話がかかってきて、今からレッカー車で向かうから場所を教えてくれとのことでした。
レッカー車の手配はありがたいのですが、「私はどのように帰ればいいですか?」と整備会社に問うと、「わかりません。私たちは車を引き取るだけなので、現場からの移動についてはTooslaに聞いてください」との返答。「高速道路から歩いて帰るんですか?」と尋ねたら「わかりませんが、車は引き取ります」との返事。Tooslaとは音声通話もなかなかつながらないですし、メッセージの返信も迅速でないため、なかなか解決策が見えてきません。
徒歩でパリまで戻るのは難しいため、これは自分で車のタイヤを替えるしかないのではないかと思い、数十年ぶり(車の免許を取ったすぐ後に一度だけ高速道路でパンクを経験)に自分自身でのタイヤ交換を決断しました。
しかしながら、久しぶりの交換には不安がよぎります。そこでサービスエリアに憲兵隊の車が停まっているのが見えたので、憲兵さんたちにタイヤ交換について相談。憲兵さんたちは、「私たちは職務上、直接車に触れることはできないが、あなたが作業することに対してアドバイスはできる」と答えてくれたため、憲兵さんに見守られながら交換をしました。
タイヤ交換を自力で行うことが決まったため、まず整備会社に自力で出発場所の駐車場まで戻ることを電話で伝え、その後にTooslaにも同様に報告。無事に交換をおこなって、出発した駐車場まで戻り、代車に乗り換え再び目的地を目指しました。やはりこれも(VirtuoやTooslaに限りませんが)、一連のことをコミュニケーションできる語学レベルが求められるケースです。
ヨーロッパはディーゼルエンジン車の割合が日本より多いですが、ディーゼルエンジン車にはガソリン給油口の近くにアドブルー(AdBlue)を入れる場所が並んでいることがあります。アドブルーとは、一部のディーゼルエンジン車に搭載されている尿素SCRシステムに使う高品位尿素水のことで、窒素酸化物を化学反応で無害化させます。そのアドブルーの補充費用の請求で揉めたこともありました。
これも上記の日に、Tooslaで借りたレンタカーの時だったのですが、目的地へ向かう途中にアドブルーの残量が少なくなっていますという表示が点滅しました。念のためにアドブルーの残量を示す警告表示を写真に撮影し、その写真とともに再びアプリのメッセージで連絡すると、Tooslaからは「お客さまで入れてください。その際の代金は後日レシートをお送りいただければ返金します」との返答がありました。
アドブルーが無くなってしまうとエンジンが再点火できず、今回の旅程をこなすことが困難であるため、アドブルーがあるガソリンスタンドで入れました。
後日、言われた通りに請求すると「証拠の写真がないため返金できません」との返答が。写真は以前のメッセージで一度送っていますし、返事に納得できませんでしたが、カスタマーサービスの担当者が毎回変わるため、そういうこともあるのかもしれません。返金ができないという抗議文と共に、残量表示の写真も再送したら、ようやく返金の手続きを取ってくれました。
これらのケースから学べるのは、社会システムや文化が異なる異国では日本と同じように物事が運ばないことが往々にしてあり、加えて語学面でのハンデなども加わり、現地の人であれば障害にならないことでも、外国人だともう一手間、二手間かかってしまうということです。
流暢でないやり取りをうまく補完するためには、自らの正当性を裏付ける証拠があるということがより重要になります。そのため何か問題が起きたら、十分過ぎるくらいの証拠を残しておくことが大切です。
なお、貸出時や返却時が地下駐車場の場合は、スマートフォンの電波が届かないため、駐車場内でアプリ経由でメッセージや通話ができず、電波が届くところまで出ておこなう必要もあります。
私の場合は、主にTooslaのレンタカーでトラブルがよく起きましたが、他のレンタカー会社にも同様のことが起きる可能性はあります。入念なチェックと準備を心がけましょう。