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その昔、日本各地から移住してきた人が多く住む北海道は、年越しとお正月の過ごし方が少し独特?なようです。最近は、”珍しい北海道の年越しの仕方”として注目されることも多くなりました。そんな北海道のおおむね定番な年越しと、お正月グルメなど、北海道の年末年始のあれこれについてご紹介します。
北海道でも日本全国と同様、年末には玄関の扉にしめ飾りを付けます。
年の瀬が近づくにつれ、輪締めなどと一緒にスーパーやホームセンターなどの店頭に並び始めるしめ縄ですが、北海道の「しめ飾り」は、とても賑々しいのが特徴です。
大人になってからその違いを知ったのですが、テレビのお正月番組などで映し出される、”松”や”ゆずり葉”、”だいだい”などのシンプルな本州のしめ飾りと比べると、北海道定番しめ飾りは、ずいぶんとカラフルで賑やかなことに気づき、驚いたものです。
一番特徴的な点は、福々しいお顔の”お多福”がついていること。
縁起ものの扇、鯛、小判などもついており、いずれも赤や金色といった色彩が鮮やかな点も特徴です。
そして、昔ながらの北海道的しめ飾りに必ずついているお多福のお顔は、製造者によって少し違います。
大抵は、販売店一店舗に付き一製造者のしめ飾りを販売しているので、その販売店と同じエリアの玄関には、同じお顔のお多福が見られる傾向があります。
一方、最近の北海道は、スタイリッシュでシンプルなしめ飾りを飾る家が多くなったり、そもそも昭和・平成の頃に比べ、しめ飾りを飾る家が少なくなったこともあり、一般家庭の玄関では、定番のふくよかなお多福顔はあまり見かけなくなりました。
ですが、ご商売をされている企業やお店の玄関先には、今も昔ながらのお多福がほほ笑む大きなしめ飾りを飾っています。
そういえば、以前は、年始になると車のフロントグリルのあたりに小さめのしめ飾りを付けて走る車が多く見られましたが、近年は見かけなくなりました。
北海道の年越しといえば、大晦日のごちそうです。
「1年に1度の」というわけではありませんが、とにかく豪華なお膳が並びます。
多くの家庭でよく聞かれる大晦日定番のごちそうは、お刺身やお寿司、カニ、茶碗蒸しをいただく家庭も少なくないようです。
そしてその茶碗蒸しは、北海道では栗が入った甘い茶碗蒸しが定番。
「お赤飯は小豆ではなく甘納豆」という北海道の食文化に通じるものかもしれません。
そんな中、大晦日定番のメイン料理のひとつは、おせち料理。
北海道では、大晦日の夜、お刺身やカニなどと一緒におせち料理が並びます。
そして、おせち料理などのごちそうに舌鼓を打ったのち、胃袋に余裕がある人は、年越しそばをいただくという流れ。
家庭によっては、夜のごちそうが食べきれないので、昼ご飯に年越しそばを食べる、という場合もあります。
そして年が明けたお正月にも、引き続きおせち料理をいただくのが習慣です。
そのおせち料理、もしくはお正月にいただく料理での定番が「飯寿司」(いずし)です。
最近は、飯寿司を漬ける家庭は少なくなりましたが、秋に魚と野菜を米麹で漬け、雪が降るころに食べごろになる甘酸っぱい発酵食品です。
使われている魚は、ホッケ、鮭、ハタハタ、ニシンなどがあり、もともとは地元で手に入りやすい魚を各家庭で漬けていたようです。
特にハタハタの飯寿司は人気があり、絶妙な加減で漬かっているハタハタは、生の雰囲気を醸し出しつつ、生にはない弾力感ある食感で、なんともいえない美味しさ。
また、おせち料理の定番、”身欠きニシンの昆布巻き”は北海道でも定番ですが、「鮭の昆布巻き」もよく見かけます。
飯寿司、昆布巻きとも、年末になると魚介の専門店やスーパーで店頭に並ぶほか、特に飯寿司はお土産店でも販売しているところがあるので、ぜひ1度味わってみてください。
そしてこちらもおせち料理とともに欠かせない「口取り菓子」(くちとりかし)。
北海道では、「口取り」で通じる練りきりの和菓子です。
大晦日、神棚にお供えしたあとで下げた口取り菓子をおせち料理と一緒にいただきます。
面白いのは、昔からおめでたい席で食べる鯛・海老などをそっくりかたどっているところ。
和菓子店で作る口取り菓子の中には、ケーキスポンジやすあまを使ってより本物に似せた伊達巻やかまぼこがあったり、珍しいところでは、鮭の切り身そっくりに作った口取り菓子を食べたこともあります。
口取り菓子は、おおむね12月28日頃から12月31日までのわずか数日間、和菓子店やスーパー、コンビニで販売します。
最近は、道内メーカーのほか大手製パンメーカーの口取り菓子も販売される一方、老舗の和菓子店では、予約販売のみを行っているところもあります。
北海道に旅行中、タイミングが合って購入できれば、1年に数日間だけ購入できるかなりレアなお土産になると思いますが、元旦には販売しないので、購入したい方は、年末の数日間をねらってください。
「北海道のお正月のお雑煮は?」と聞かれ、即答できる道産子はいないかもしれません。
というのも、北海道のお雑煮は、各家庭の先祖の出身地で食べるお雑煮の影響を受けていることがあり、お隣りの家のお雑煮は全く違う!ということもあります。
ダシの種類だけでも鶏ガラスープ、カツオだし、昆布だし、鶏ガラスープとカツオだしのダブルスープ、など。
具材は、けんちん汁のように野菜が多いものや、鶏肉とゴボウがメイン、鮭が入っているお雑煮などもあります。
そして味付けも醤油だったり、味噌だったりと、とにかくバリエーションが豊富。
ですが、個人的経験から、敢えて北海道のお雑煮の特徴を挙げると、鶏ガラスープを使った醤油味に、鶏肉・ゴボウ・大根・ニンジン・カマボコ・三つ葉、そして角餅が入っているお雑煮の家庭が多いようです。
北海道にお知り合いがいる場合は、定番のお雑煮を聞いてみると面白いかもしれません。
最後に、お正月の遊びの定番、「百人一首」(かるた)。
「下の句かるた」と呼ばれることもあり(北海道では「百人一首」と呼ぶと思います)、下の句を読んで下の句を取る、というある意味子どもでもわかりやすいルールの遊び方です。
ところが、取り札は紙ではなく「板かるた」。
書かれている文字も”変体かな”という昔の文字で書かれているので、子どもは、大人と一緒に遊びながら、最初は「みそ」(98番/従二位家隆)の札など、現在のひらがなと同じ札から取り始め、次第に慣れてくると難しい変体かなの札を取れるようになります。
ちなみに子どもに圧倒的に人気の札は、なぜか「乙女の」(12番/僧正遍昭)。
“板かるた”がぶつかり合うときに出る”木の音”を聞くと、しみじみとお正月を感じます。
北海道の年越しとお正月の過ごし方、興味を持っていただけたでしょうか。
実はお雑煮と同じように、移住してきた人が多かった県の文化もところどころに反映された北海道の年末年始文化です。
ぜひ、日本各地との違いも意識しながら、北海道の文化と旅を楽しんでください。