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もうすぐバレンタインデーですね。日本のように、女性から男性にだけプレゼントを贈る国ってほかにあるのでしょうか? プレゼントはチョコレートで義理チョコもあったりして、完全に日本独特の文化になっているような・・・。私が住むバレンシアにも独特のバレンタイン的習慣があるんです。今回はそのお話です。
まずは世界共通の2月14日のバレンタインデーですが、スペインでは恋人たちの日(Día de los Enamorados)とも呼ばれます。日本のように女性が男性の告白することも、義理チョコを配ることもなく、恋人同士、もしくは夫婦間でお祝いします。
どんな風に祝うのかというと、お互いにプレゼントを贈りあったり食事に出かけたり。プレゼントは相手が喜ぶものをあげるので人それぞれではありますが、お花や箱入りのチョコレートボンボン、そしてハート型のメッセージカードは昔からの定番(息子が幼稚園だった時に、クラスの女の子からハート型に切った赤い紙をもらってきました)。ほかにはアクセサリーや香水などが人気なようです。レストランでは、この時期にバレンタイン特別メニューを出すところもあります。
このようにバレンタイン商戦がないわけではありませんが、日本ほど熱狂的には見えません。もう長いことバレンタインデー前の日本のデパ地下に行っていませんが、今でおも混み混みなのでしょうか? ちなみに20代の頃の私は彼に手作りチョコレートボンボンを作っていたので、多めに作って会社に持って行っていました。懐かしい思い出です。
さて、バレンシアには10月にもバレンタイン的イベントがあるんです。主にバレンシア市と周辺の町でのみ祝われている10月9日のモカドラ(Mocadorà)です。この日はバレンシア州の日でもあり、州全体の祝日になっています。由来はというと、バレンシアでは3世紀にフランスで殉教した聖ドニス(バレンシア語でSant Donís)が恋人たちの聖人とされていて、カトリック教会ではこの日が聖ドニスの日にあたるからなのです。
モカドラでは、男性から女性に野菜や果物を模った小さくてカラフルなマジパン(アーモンド粉と砂糖を練って作るお菓子)を、スカーフに包んで贈ります。男性から女性への一方通行であること、贈るものが決まっていることが日本のバレンタインデーに似ていませんか? 10月に入るとパン屋さんやお菓子屋さんのウィンドーがマジパンやスカーフで色鮮やかになります。伝統的習慣だからかマジパンを買う高齢の男性を見かけることもあり微笑ましいです。
バレンシア市とその周辺の町だけの習慣なので、10月のはじめにバレンシアに来る方はぜひマジパンを買って食べてみてくださいね。スペインでもあまり知られていないので、私は昨年マヨルカ島から来た知人夫婦にマジパンをプレゼントしたら喜ばれました。
スペインでバレンタインデーが祝われるようになったのは20世紀半ばで、とある百貨店が仕掛けたと言われています。モカドラはそれより200年以上も古い習慣で、約300年前に生まれたそうです。
先ほども触れましたが、この日はバレンシア州の日。その由来は1238年10月9日にアラゴン王ハイメ1世がバレンシアをイスラム教徒から奪い返し、入城を果たしたことにあります。いつしかこの前夜は花火や爆竹で派手に祝うようになったそうです。が、18世紀に入り、スペイン継承戦争中にフェリぺ5世王はこれを禁止しました。そこでバレンシアの菓子職人たちは爆竹の形のお菓子を作って売り出し、人気を博したのだとか。その後、農業が盛んなバレンシアの農産物、野菜と果物を模ったお菓子も売られるようになりました。なぜスカーフに包むのか、なぜ男性から女性なのかも気になるものの、答えを見つけられませんでした。
近年では、毎年70トンものマジパンがモカドラの時期に食べられていると言います。若い世代にはあまり浸透していないように見受けられるのですが、今後もバレンシアの習慣として続いていってほしいと思います。