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関西地方と東海地方の文化が混ざり合う三重県では、県内だけで見てもおでんに地域差を感じます。テレビなどで度々東西文化の境界線として取り上げられることもある三重県の地域別おでん事情を紹介します。
今回は三重県のおでん事情を綴ってみました。
筆者は関西出身者で、実家はおでんではなく、関東炊きと呼んでいました。
漫画・『おそ松』くんに出てくるチビ太が持っているおでんが、いわゆる関東炊きにあたるのだと漠然と知ったのも小学校高学年頃。
今でこそ、コンビニでもスーパーでもおでんは浸透しているので、もう関東炊きと呼ぶことも少なくなりました。
三重県に在住して約30年。すっかり三重県人になったのですが、同じ三重県内でもおでん事情が違うことが最近よく分かるようになりました。
関西のいわゆる関東炊きは、昆布や鰹節の出汁で少し味付けが濃く、また材料は大根に玉子、厚揚げ、ごぼ天等の練り物、こんにゃく、じゃがいもの代表選手に加えて、牛すじやタコ、昔はコロ(まだ鯨漁が可能だった頃、クジラの皮下脂肪を鯨油で揚げたもの)なども入っていました。
また東京周辺でよく見かける「ちくわぶ」はなく、焼きちくわを入れます。「はんぺん」も関西ではあまり見かけません。
東京でいう「がんもどき」は関西では飛竜頭(ひりょうず)とよんだりします。
そしてここ三重県なのですが、関西文化に近い名張・伊賀地区では、おでんに違いを感じたことはありませんでした。昆布と鰹節の出汁文化をそのまま受け継いだおでんが多い印象です。
三重県のなかでも県北西部の四日市市や鈴鹿市になると、食の事情が関西寄りの名張や伊賀地区と異なります。
東海地方、特に名古屋めしの影響も強くなり、おでんにも独特の特徴が出てきます。
そこで登場するのが、東海地方に欠かせない味噌文化です。名古屋では八丁味噌で煮込んだ名古屋味噌おでんがメジャーで、後述しますが、三重県のなかでも名古屋に近い地域では食文化が少し似ています。
話が少し脱線しますが、東海地方でも愛知の隣、静岡ではいわしやさばのだし粉や黒はんぺんが入った静岡おでんが市民権を得ており、関西風、名古屋風のものとはまた違った味を楽しめます。
三重県内でも名古屋に近い四日市市や鈴鹿市周辺では、ごくごく一般的に家庭で食べるおでんに味噌をつけて食べるそうです。(地元の方、老若男女約10人にお聞きしました。なかには幼稚園児のお子様もおでんに必ずお味噌だそうです。)
普通に出汁で炊いたおでん+お味噌。
関西地方では見たことのない(つけてみそ〇けてみそ)という万能味噌だれを使うそうです。
(早速、おっかなびっくり味見をしましたが、コチジャンのような熟成した豆みその風味はあるのですが、辛みはなく甘い優しい味。おいしかったです。)
田楽味噌とも違った食べ方で、関西の出汁おでんと名古屋の味噌おでんの融合?! といった感じでしょうか・・・。
おでんもさまざまな地域の食材と文化が溶け合っているのだなぁと妙に感心しました。
現代風にはロールキャベツやウィンナーなどもありますが、何より好きな食材を好きな味で食べるおでんが一番。
温かいおでんで、この寒い冬を乗り切りたいものですね。