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2025年ベトナム9番目の世界遺産として登録されたばかりのイェントゥ(正式な登録名は、「イェントゥ=ヴィンギエム=コンソン・キエップバックの遺跡・景観群」)。「地球の歩き方2026年絶対行くべきおすすめの旅先30選」にも選ばれましたが、ベトナム在住者でも行ったことがない人も多く、日本語のガイドブックやネットでの情報も少ない、まだまだ“謎多き観光地”です。
「イェントゥ」と聞いて、どんな場所か瞬時にわかる人は、かなりの“ベトナム通”と言えるでしょう。何を隠そう私自身も、イェントゥが世界遺産に選ばれたことを知った時、どんな場所なのかはおろか、どこにあるのかすら知りませんでした。イェントゥはハノイの北東へ車で3時間、クアンニン省にあります。同じく世界遺産として、ガイドブックでも必ず紹介されるハロン湾が、ハノイから車で2時間ですので、ハロン湾の方が近いように見えます。しかし実際は、ハロン湾は高速道路でアクセス、イェントゥはまだ高速道路が通っておらず、下道での移動となるため、距離的に見るとハノイから遠いのは、ハロン湾なのです。今回の移動は、私が所属しているサークルメンバーと一緒に車をチャーターしました。
そもそもイェントゥ山には何があるのでしょうか?
標高1068メートル。日本百名山の筑波山(877メートル)や開聞岳(922m)よりもちょっと高いくらいですので、日帰りで登ることができます。
この場所は、その昔、陳朝の第3代皇帝チャン・ニャン・トン王が、息子に譲位した後、出家して仏門に入り、後にベトナム禅宗の一派であるチュックラムを創設したとされており、“ベトナム仏教の聖地”と称されています。ベトナム人であれば、誰もが知っている場所で、テト(ベトナムのお正月)後には、頂上のドン寺を巡礼しようとベトナム全土から人が集まり、大混雑することで有名だそうです。
ドン寺に行くには、2つの方法があります。まずは徒歩で登る方法。もうひとつは、ロープウェイを乗り継いで行く方法です。同行してくれたガイドのチンさんによると、ご利益を受けたいと、初詣の際はお年寄りもロープウェイを使わず、自分の足で山の麓から山頂を目指して登るそうです。また3回お参りすると、更に運気が上昇するという謂れがあり、複数回訪れる人も多いとのことです。
時短を選択した私たち一行。ロープウェイを乗り継いで頂上を目指します。1本目のロープウェイを降りると、いよいよ登山スタートです。長い石段が続きますが、これはまだ序の口。道中には、様々なお寺や塔があるので、ゆっくり巡りながら、山頂を目指します。
・フエクアン塔(Huệ Quang Kim Tháp):チャン・ニャン・トン王を祀っている塔。このあたりには数百の塔があります。
・ホア・イェン寺(Chùa Hoa Yên):イェントゥ山の中でも中心的で重要な寺院とされています。
このあたりは、登山道が整備されています。都会の喧騒から離れ、気分もリフレッシュ。
・モッマイ寺(Chùa Một Mái):崖に建つ変わったお寺です。木の根お寺の中にまで侵食している自然と同化したような佇まいは、イェントゥ山にある数あるお寺の中でも、特に印象に残ります。
2本目のロープウェイを降りると、標高1000メートル近くになり、急に寒くなってきました。頂上まであと一息、頑張るぞ!と駅の外を見ると、雨。山の天気は変わりやすいとは言うものの、こんな低山でも。ここまで来たからには、頂上を見ずに引き返す訳にはいかないと、雨具を羽織って頂上を目指します。
これまで歩いてきた道は、比較的歩きやすかったのですが、石の階段も急でゴツゴツとしてした岩の形状で少し歩くだけで、息が切れます。途中、休みながら登っていき、あと少しで頂上!というところが、実は1番の難所。
山頂のドン寺に着いた時は、その場にいた全員が、風と雨と寒さで震えていましたが、とりあえず、やり切ったことに満足して、足早に下山しました。
・ドン寺 (Chùa Đồng):山頂にあるお寺。皆、このお寺を目指してきます。
下山途中に、お茶屋さんで一服。
・チャン・ニャン・トン王(Trần Nhân Tông)の銅像:雨の中でも遠くからでも目立っていました。
山の麓からロープウェイを使いながらのコースは、約3時間で戻ってくることができました。
*今回雨のため、回らなかったお寺もあります。拝観の順番は決まっていないため、地図を見ながら自由に回ることができます。
イェントゥ旅行を楽しみは、山登り以外にもうひとつあります。それが、レガシー・イェントゥ・Mギャラリーです。すでにイェントゥに来たことがある私の友人が、Mギャラリーに泊まるだけでもイェントゥに行く価値あり!と賞賛していたホテル。残念ながら、今回は日帰り旅行のため、宿泊はしませんでしたが、ホテル内のレストランやカフェは使えるということで、山登り後、ランチに行ってきました。Mギャラリーは山の麓にある、チュックラム文化センター内にあり、13世紀の陳王朝をテーマにしたホテルということで、ホテルの中はまるで宮殿のよう。ホテルの外観や内観が素晴らしいのはもちろんのこと、センター内には馬も飼育されており、その時代にタイムスリップしたような気分です。レストランでは、西洋料理や名物のタケノコを使ったベトナム料理なども食べることができ、別室のカフェでは屋外席も用意されているので、澄んだ空気と緑の中で、カフェタイムを楽しむことができます。
では、いざイェントゥ山に行きたい場合、どうしたら良いのでしょうか?旧市街にあるツアー会社に聞いてみました。数社尋ねてみましたが、現状イェントゥツアーを開催している会社はありませんでした。但し、ハノイからイェントゥへの直通バスがあります。ミーディン、GO!Thang Long(旧ビックC)、ロンビエンの各バスターミナルから、 朝4時〜8時台まで1時間に2本出ているようです(片道30万VND /約1800円)。慣れない土地での公共交通機関の利用は、不安も多いかと思います。割高にはなりますが、車をチャーターすることを検討されるのが良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。世界遺産に登録されたばかりということもあり、ハノイからのアクセスや周辺施設の環境が整うには、もう少し時間がかかりそうです。世界遺産に指定されているのは、今回紹介したイェントゥ山だけではなく、その周辺も含まれます。じっくり回りたい方は、宿泊前提でご検討下さい。