キーワードで検索
国の重要文化財に指定されている旧奈良監獄を保存・活用した「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」が奈良市に開業しました。1908年に建てられ、2017年までの100年以上にわたり少年刑務所・更生施設として使われてきた「旧奈良監獄」を、星野リゾートが約7年をかけて構想・改修した施設です。「明治五大監獄」のひとつで、その全貌がほぼ現存する唯一の存在でもあります。早速訪れてきたのでレポートします。
館内に入ってまず出合うのは、全96室の独居房が連なる保存棟「第三寮」。受刑者たちが過ごしていた独房が、重要文化財に指定された当時の姿を保ったまま残されています。一部の部屋は中に入ることができます。
ヴォールト状の天井や高い位置に設けられた窓からはやわらかな自然光が差し込み、従来の“暗く閉ざされた刑務所”というイメージとは異なる、近代建築ならではの人権への配慮を感じる空間となっています。
ミュージアム内は「A棟」「B棟」「C棟」の3つの展示エリアと、独居房のある「保存棟」、そして「ショップ&カフェ」で構成されています。展示は単なる歴史紹介にとどまらず、「自由とは何か」を来館者に問いかける構成になっているのが特徴です。
A棟では「歴史と建築」をテーマに、奈良監獄の歩みや建築的特徴を8つの展示室で紹介。監獄制度の変遷や、受刑者によって作られたレンガ、奈良少年刑務所時代の役割など、多角的に理解を深めることができます。
最後のセクションには、「受刑者のある一日」と題したドキュメンタリー映像が上映されています。
中でも目を引いたのは、1/420スケールで作られた、奈良監獄再現模型。中央から放射状に舎房が広がる構造により、少人数でも効率的に看守できる仕組みが一目で理解できます。
B棟では「規律とくらし」をテーマに、刑務所での生活やルールを7つの切り口で紹介。展示はデザイン性が高く、視覚的にも理解しやすい構成になっています。各地の刑務所での布団の畳み方や支給品など、細かな違いも興味深く見られます。
「食事」の展示では、各刑務所の献立や食器が紹介されており、地域ごとの違いや工夫が見えてくるのも見どころです。
そのほか「規律」「衛生」「作業」など、普段知ることのない刑務所での生活が紹介されており、自分たちの日常と重ね合わせながら「自由」という概念を改めて考えさせられます。
かつての医務所を改装したC棟は、「監獄とアート」をテーマにしたギャラリー。5組のアーティストによる作品と受刑者による刑務所アートが展示されています。
入ってすぐ出合うのは、奈良出身のアーティスト・西尾美也氏による「声を縫う」。
受刑者たちの詩を約200人が刺繍で表現し、それらをつなぎあわせた大作です。布に刻まれた言葉と色とりどりの糸から、さまざまな感情が静かに伝わってきます。
最後の「むすびの部屋」では、館内で感じたことを言葉で届ける「プリズン ポストカード プロジェクト」を実施。鑑賞者自身も“表現する側”へと誘われる仕掛けになっています。
チケットは事前予約制で、公式HPより空き状況を確認できます。土日を中心にチケットが完売している日もありますが、平日は比較的空きがあり、ゆったりと滞在することができるのでおすすめです。
見ごたえのある展示が多く、気づけば長時間滞在してしまう人も少なくありません。私自身も、気づけば2時間半滞在していました。
放射線状に収容棟が並ぶ「ハヴィランド・システム」を体感できる中央看守所は、入場チケットとは別に予約が必要。文化財保護の観点から、1枠10人まで。非常に人気が高く、かなり先まで埋まっていますが、公式サイトでキャンセル枠が出ることもあります。
ミュージアム入口から集合場所まで徒歩で30分ほどかかるため、余裕を持ったスケジュールでの訪問がおすすめです。
また、学芸員による解説プログラム「スポットガイド」も必見。旧奈良監獄の歴史や建築、奈良少年刑務所時代のエピソードをコンパクトに分かりやすく紹介してくれます。参加することで展示理解がぐっと深まります。開催は11:00〜12:00、14:30〜15:30。(随時開催 各15分程度。時間変更の可能性があるため、来館当日にインフォメーションにてご確認ください)
カフェでは奈良監獄を象徴する赤レンガを模した「レンガカレーパン」や「チーズケーキ1908」などが人気で、時間帯によっては 早々に売り切れることも。ショップには、奈良監獄ミュージアムのオリジナルグッズや刑務所作業製品も購入できます。
重厚な赤レンガ建築に息をのみ、空間に立ち、当時の受刑者の暮らしに思いを馳せる。そして「自由とは何か」という問いを、自分自身に引き寄せて考える——。
来館者自身がその答えを見つけるために設計されたこのミュージアム。「美しき監獄からの問いかけ」というテーマなのも、深く納得させられます。
6月25日には、同施設内に独居房を客室に改修したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」も開業予定。保存棟の第三寮を除く4棟は、ホテルへと生まれ変わります。歴史と非日常が交差する特別な体験を、ぜひ奈良で味わってみてください。
■奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート
住所:奈良県奈良市般若寺町18
営業時間:9:00 ~ 17:00(最終入館 16:00)
定休日:なし(メンテナンス等の休館がある場合は、HPにてお知らせ)
入場料:大人2,500円~(奈良県在住者は割引あり)、学生・子供700円~、未就学児無料
アクセス:JR奈良駅(西口11番)/ 近鉄奈良駅(2番)よりミュージアム入口の前までの直通バス、または
JR奈良駅、近鉄奈良駅から「青山住宅行」または「州見台八丁目行」乗車後「般若寺」下車、 徒歩10分
URL:https://hoshinoresorts.com/nara-prison-museum/ja/