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青森県弘前市には、長い歴史の中で育まれた伝統工芸品が数多く存在します。それは、長く厳しい冬を乗り越えるための生活の知恵や、城下町に脈々と息づく粋の中から生まれた技術と美の結晶です。工芸品は「用の美」とも言われ、長い間多くの人の目や手に触れることで、使いやすさや完成度が向上してきました。また、その色や形は、弘前の生活慣習や文化的な背景とも深く関わっています。弘前が誇る工芸品の数々を紹介します。
津軽塗は、弘前市を中心に製作される青森県を代表する伝統工芸品です。その成立は、江戸時代中期、津軽藩四代藩主 津軽信政(1646~1710年)の時代まで遡る300年以上変わらずに受け継がれてきた伝統技術です。
漆器としては、1975年に福島県の会津塗や石川県の輪島塗と並んで、全国で初めて経済産業大臣指定伝統的工芸品に選ばれ、現在に至るまで青森県では唯一の同大臣指定伝統的工芸品です。
津軽塗は、「研ぎ出し変わり塗り」という技法が用いられます。代表的な4技法(唐塗・七々子塗・錦塗・紋紗塗)全てが、漆を数十回塗り重ね、塗り重ねた漆を平滑に研ぎ出して模様を表す方法で、約50工程、2ヶ月以上の日数を費やします。
この、時間と手間を惜しまない作業のために津軽塗を指して「津軽の馬鹿塗り」と揶揄されることもあります。しかしここには、雪国ならではの実直で粘り強い津軽人の気質が表れています。
■津軽塗
・URL: http://www.tsugarunuri.org/
江戸時代、津軽の農民は木綿の衣服が許されておらず、麻の着物を重ね着して寒さをしのいでいました。
こぎんは、冬の寒さが厳しい津軽地方で、衣服の保温と補強のために農家の女性が麻の布地に木綿で刺し子を施したことが始まりです。その後も女性達の美意識と工夫で多くの模様が生み出され、今日では色彩豊かでデザイン性の高い工芸品となっています。
こぎん刺しには、もともと刺すためのパターン図があるわけでも、手順書があるわけでもありません。手の込んだ柄を刺せることは賢い娘の象徴と言われ、皆が刺せないようなこぎんを刺すことが、当時の若い娘の願いだったようです。
青森県はブナの蓄養量が日本一と言われ、豊富なブナを活用した付加価値の高いものを作り出そうと開発されました。その製法は、テープ状にしたブナ材をコイルのように巻き、押し出して成型します。
これは、ブナのしなやかさと職人の技術があるからこそできる他に類をみない製品で、日本の新しいモダンデザインの可能性を切り拓いています。
ブナコは、ブナのテープをコイル状に巻いていく際、テープの巻き方やずらし方を変えることによって、実に様々なフォルムを生み出すことが可能です。それは従来の木工技術では実現できませんでした。
ブナコ製品は、2007年にフライングスツールがグットデザイン賞を受賞したほか、2012年には特別賞であるグットデザインロングライフデザイン賞を受賞するなど、デザイン性が非常に高いことが証明されています。
<進化し続ける弘前の伝統の技>
全国各地の伝統工芸品が、現代のライフスタイルに合わないなどの理由で衰退していく中、弘前の伝統工芸品は、伝統技術を守りながらもモダンなデザインや女性のライフスタイルに合わせた商品作りをするなど、進化し続けている工芸品が多くあります。
また、伝統工芸に携わる若手職人たちも、新しいことにチャレンジし、商品作りを進めています。ぜひ、弘前で素敵な作品をお探しください。
※本記事は、「日本の歩き方」内、「おでかけガイド」に2016年2月2日に掲載されたものです。