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2018年末に公開予定の『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』という映画が今、特撮ファンの間で話題です。内容は大仏が立ち上がり東京を歩き回るというストーリー。戦前の特撮黎明期に撮られた『大佛廻國・中京篇』のコンセプトを、現代に蘇らせようとした作品です。『大佛廻國・中京篇』はフィルムが現存しておらず、幻の映画と呼ばれています。その新旧『大仏廻国』についての展覧会「大仏廻国展」が、2018年8月11日(土)から同25日(土)まで、東京都荒川区南千住のGallery HIROUMIで開かれています。
『大佛廻國・中京篇』とは、特撮の神様と呼ばれる円谷英二を映画の世界に引き入れた、円谷の師にあたる枝正義郎により撮影された映画です。日本における特撮の初期作品として知られており、戦前の1934(昭和9)年9月14日に封切られました。
タイトル通り主演は大仏。愛知県知多郡の聚楽園(現在の愛知県東海市聚楽園)に鎮座する大仏が、諸人の祈願に応じて立ち上がることから物語が始まります。
立ち上がった大仏は、その後名古屋市内および名古屋近郊の名所を訪問。鉄道の高架をまたいだり、建物を枕に床に就いたり、他の大仏と対面したりと、ウルトラマンやゴジラなど現在の怪獣映画の元になるような特撮が用いられていました。
一方で、信心あるものは極楽へ上る、ないものは地獄へ落ちるといったような仏教思想に沿った描写や、当時の社会問題だった三原山心中事件にからめて、その心中者を叱るといった道徳的要素も含まれていました。
技術的には当時の最先端だったオールトーキー(音声付き映画)を用いました。一部をカラー撮影にして、天国および地獄を色付きで見せるなどの工夫も。当時の新聞を読むと、「中京篇」というタイトルから続編も考えられていたようですが、結局この一作のみで制作は終わっています。
大仏廻国展は2つの軸で展開されています。一つは『大佛廻國・中京篇』を撮影した枝正義郎監督が残した資料の展示。もう一方は、今年末に公開予定の『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』についての紹介です。
枝正監督の資料については、監督の孫にあたる佛原和義さんから提供された資料を主にしています。『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』の制作をきっかけに、広島にある佛原さんの実家から見つかった資料を公開。特に枝正作品のスチール写真は必見です。『最遊記』『哀の曲』のほかに、タイトル不明の作品などもあり、映画ファンにとっては貴重な資料が並びます。枝正監督と円谷英二が一緒に映る写真や、現存する唯一の枝正作品『坂本龍馬』の映像展示もされています。
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』については、劇中に登場する大仏をはじめ、今作を彩るクリエイターの作品が並びます。アートディレクター・高橋ヨシキさんによるポスター、浅井拓馬さんによる映画のコンセプトアート群、造形師・米山啓介さんデザインによる大仏3Dデータ出力像の展示など。戦前に話題をさらった同映画と大仏が、現在のクリエイターたちによりデザインも新たに、描かれています。同映画に出演するNMB48の岩田桃夏さんが劇中で着た衣装、宝田明さんなどロケの様子を撮った写真の展示もあります。
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』は2018年12月15日(火)に公開を予定。フィルムが失われてしまった『大佛廻國・中京篇』と、近い将来公開される『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』。まだ見ぬ両作品に期待と想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。
いかがでしたか。新旧『大仏廻国』の展覧会「大仏廻国展」を紹介しました。怪獣映画の元になったともいわれる特撮の世界を覗いてみてはいかがでしょうか。