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ヨーロッパの冬をきらびやかに彩るクリスマスマーケット。ホットワインで温まりながら屋台をのぞいたり、イルミネーションで華やぐ町を歩くだけで心躍りますよね。クリスマスマーケットは町によってその表情が異なりますが、今回はフランス東部の個性豊かな3都市のクリスマスマーケットをご紹介しましょう!
フランスのクリスマスマーケットといえば、木骨組みの家々が連なるアルザス地方が有名ですが、アルザスのなかでも、18世紀から染織産業で発展を遂げたミュールーズMulhouseでは、ほかの町とはひと味違うクリスマスマーケットが楽しめます。カギとなるのは「布」。この町の歴史であるテキスタイルの伝統を後世に伝えるため、ミュールーズでは約30年前から毎年クリスマスマーケットのためにテーマに沿った布が作られていて、店先やツリーのオーナメントとして町の至るところを彩っています。
飾り付けのメインは、クリスマスマーケット会場でもあるレユニオン広場に立つ旧市庁舎。ピンクの花崗岩で造られたかわいい旧市庁舎が、クリスマスの布でデコレーションされいっそうフォトジェニックに。この時期1階はショップになっていて、クリスマスの布で作られたオーナメントや雑貨を販売しているので、旅の思い出に買って帰ることもできます。この布のデザインを手掛けているのはミュールーズのテキスタイルアーティスト、マリー・ジョー・ジベルMarie-Jo Gebelさん。毎年異なる絵柄の生地を制作されて、もう20年になるのだとか。ちなみに2019年の布のテーマは「クリスマスのソナタ」。アルザスのハートモチーフも取り入れながら、天使が音楽を奏でるような美しいデザインに仕上がっています。
ミュールーズのクリスマスマーケットでは、スパイスの効いたパン・デピスや伝統的なクッキーのブレデルなど、アルザス地方ならではのお菓子が並びます。ホットワインもクリスマスマーケットの定番ですが、アルザスではクリスマスの時期にだけ発売されるクリスマスビールも人気!夕方になると地元の人々が仕事帰りに立ち寄って一杯という姿が多く見られる、ほっこりあたたかなクリスマスマーケットです。
クリスマスマーケットには移動観覧車が付きものですが、レユニオン広場に立てられた観覧車(大人5ユーロ)は、扉も窓もないカゴのみのオープンタイプ!上空からの景色がクリアな視界で楽しめますが、くれぐれも身を乗り出さないようにご注意を。
ミュールーズには、エルメスやサン・ローランといった一流ブランドがデザインの参考に利用している染織博物館があり、ファッション関係者にはよく知られていますが、毎年デザインの異なる布で町を彩るクリスマスマーケットは、おそらく世界でもここだけでしょう。観光客が多すぎず、ゆったりと散策を楽しめるのもおすすめのポイントです。
■ ミュールーズのクリスマスマーケット
・開催日程: 2019年11月22日〜12月29日
・URL: https://www.noel-mulhouse.fr
次はアルザス地方のお隣にあるロレーヌ地方へ。11世紀からロレーヌ公国の首都として栄えたナンシーNancyでは、18世紀にロココ美術が生まれ、19世紀末にはアールヌーヴォーが花開きました。植物をモチーフに美しい曲線を描く鉄柵やきらびやかな金装飾が今も優雅に町を彩り、まるで町ごと美術館かのよう。道行く人もどことなく上品な装いが多く、町の雰囲気にぴったり。世界遺産にも登録されているスタニスラス広場には、この時期大きなツリーが飾られ、夜には市庁舎でプロジェクションマッピングショーが繰り広げられます。
ナンシーでは毎年12月の第1週末に、サンタクロースの起源ともいわれる聖人サン・ニコラのパレードが開催されます。サン・ニコラの言い伝えは諸説ありますが、この地域では、悪い肉屋に塩漬けにされそうになった子どもを救った、という説がよく語られています。ですので、サン・ニコラは子どもの守護聖人として崇められ、パレードの際には子どもたちに小さなお菓子を配って回るのだそう。クリスマスマーケットのことをフランス語で「マルシェ・ド・ノエル」といいますが、ナンシーでは「マルシェ・ド・サン・ニコラ」と呼ばれるほど、聖人サン・ニコラ推し。2019年の市庁舎でのプロジェクションマッピングも、スーパーマン的なサン・ニコラが子どもを助ける愉快なストーリーでした。
スタニスラス広場の一角にある凱旋門をくぐるとカリエール広場に続いていて、ここに立つ大きな観覧車(大人6ユーロ)からはスタニスラス広場やその先の大聖堂まで一望できます。ミュールーズ同様、こちらの観覧車も窓なしタイプ。混雑具合にもよりますが、何周か回ってくれるのでシャッターチャンスもたくさんありますよ。
● ナンシーのクリスマスマーケット
・開催日程: 2019年11月22日〜2019年12月29日(一部2020年1月5日まで)
・URL: https://www.nancy-tourisme.fr/a-voir-a-faire/agenda-et-grands-evenements/villages-de-saint-nicolas/
聖夜にはシャンパンがぴったり…ということで最後はシャンパーニュ地方、ランスReimsのクリスマスマーケットをご紹介します。ランスは1000年以上にわたり、歴代フランス王の戴冠式が執り行われた歴史的にも重要な町。ランスのノートルダム大聖堂で戴冠式を行わなければ、正式なフランス王とは認められませんでした。そのノートルダム大聖堂の周辺に広がるクリスマスマーケットは、約140のスタンドが軒を連ね、フランス第3の規模といわれています。
なんといってもクリスマスマーケットにシャンパンのスタンドがあるのがこの町ならでは!ヴーヴ・クリコやルイナール、テタンジェなど名だたるセラーがあるランスだけに、本場を訪れたなら、少しくらい寒くてもホットワインよりシャンパンをいただきたいですよね。シャンパンは、シャンパーニュ地方で生産された発泡酒でなければ、シャンパン(フランス語でシャンパーニュ)と名乗ることが許されないお酒。ちなみに、シャンパーニュのぶどう耕作地と製造所は2015年に世界遺産に登録されています。
クリスマスマーケットのこの時期、ランスのノートルダム大聖堂では週末に約15分のプロジェクションマッピングショーが開催されます。映像のテーマは数年ごとに変わりますが、2019年は王の戴冠を描いた「レガリアREGALIA」。戴冠の儀式に必要な王冠や剣などがドラマチックに映し出されます。プロジェクションマッピングで歴史に想いを馳せながら、シャンパンで乾杯してみてはいかがでしょうか?
■ ランスのノートルダム大聖堂のプロジェクションマッピング「レガリア」
・開催日程: 2019年11月22日〜2020年1月5日の木〜日曜
木・日曜:19:00と19:20の2回、金・土曜:20:00と20:20の2回
・URL: https://www.reims-tourisme.com/regalia-spectacle-sur-la-cathedrale-de-reims/reims/fmacha051v50285x
■ ランスのクリスマスマーケット
・開催日程: 2019年11月22日〜12月29日
・URL: https://www.reims-tourisme.com/le-marche-de-noel
どの町のクリスマスマーケットがお好みでしたか?
今回ご紹介したミュールーズ、ナンシー、ランスは、それぞれアルザス地方、ロレーヌ地方、シャンパーニュ地方に位置していますが、2016年の地域圏再編により合併され、現在はグランテストGrand Estというひとつの地域圏に属しています。3都市を巡る旅のプランとしては、まずパリCDG空港からバーゼル・ミュールーズ国際空港へ飛行機で移動(約1時間)。空港からミュールーズの中心部へは車で30分。パリ市内から鉄道でミュールーズを訪れるならへTGVで約2時間40分。ミュールーズからナンシーへは鉄道で約2時間。ナンシーからランスへは鉄道TGVで約50分。ランスからパリへは鉄道TGVで約45分。(※2019年12月現在、ストライキの影響により鉄道は大幅に減便しています。ご旅行の際は最新情報をご確認ください)
町によって開催期間は異なりますが、通常11月末から12月末まで開催される町がほとんど。各町で2泊ほどしながら、個性豊かなクリスマスマーケット巡りを楽しんでみてください!
取材協力
●フランス観光開発機構
・URL: https://jp.france.fr
●ミュールーズ観光局
・URL: https://www.tourisme-mulhouse.com
●ナンシー観光局
・URL: https://www.nancy-tourisme.fr
●ランス観光局
・URL: https://www.reims-tourisme.com
地球の歩き方編集部 上田暁世