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フランスのなかでも絵本のようなかわいい町並みで人気のアルザス地方。中心都市のストラスブールに次ぐアルザス第2の町ミュールーズは、かつて染織産業が栄えた工業都市ですが、今はアーティストが集まるクリエイティブな町としても注目を集めています。町なかにはフォトジェニックなスポットやストリートアートがそこかしこに! そんなミュールーズの旅の楽しみ方をご紹介します。
フランス東部、ドイツとスイスの国境近くに位置するミュールーズは、パリから鉄道で約2時間40分。空港もあり飛行機だと約1時間の距離です。昔から水のきれいな川が流れていたことから「水車小屋」を意味するMulhouse(ミュールーズ)と名付けられました。
18世紀にミュールーズで染織産業が栄えたのも川のおかげ。染めた布を洗うためには水質の良い川が必要だったからです。水車のマークはミュールーズのシンボルになっているので、町なかのいろんな場所で目にするはず。
ミュールーズの中心部は歴史地区と呼ばれ、工業都市のイメージからはかけ離れたメルヘンな佇まい。歴史地区のレユニオン広場にはピンクの旧市庁舎やパステルな建物が並び、おとぎの世界のようなかわいさです。
ピンクの花崗岩で造られた旧市庁舎は、クリスマスマーケットの時期には布で飾られいっそうフォトジェニックに。この布は、町を発展させたテキスタイルの歴史と伝統を伝えるため、地元デザイナーが毎年異なるデザインで作っているプリント生地で、町の各地を彩ります。
ミュールーズの注目ポイントはパステルカラーの建物だけでなく、外壁や道路標識、ゴミ箱にいたるまで、さまざまなところでストリートアートに出合えること。思わずSNSにアップしたくなるおしゃれなアートにあふれています。こんなところに!? という気付きにくいスポットもあるので、滞在中いくつ見つけられるかチャレンジしてみるのも楽しいかも。
ウォールアートの家のすぐそばで、パリ在住のフランス人アーティストSTEWの作品を発見! 日本にも影響を受けているというSTEWは、鳥と花をカラフルに組み合わせたグラフィックアートが人気。町によくあるスチールボックスの側面に描かれているので、気づかず通り過ぎてしまいそう。見つけられると嬉しさ倍増です。
ユニークな道路標識アートは、フィレンツェ在住のフランス人アーティストClet Abrahamの作品。なんとミュールーズに200ヵ所近くもあるのだとか!
2012年にオープンした「モトコMOTOCO」は、かつてのテキスタイル工場を改装した、現代アーティストのためのアトリエ兼レジデンス。イタリアやスペインなど国内外から集まった約140人のアーティストが、日々ここで作品を作りながら暮らしています。
MOTOCOでは年3回展示会が開催され、アーティストたちと交流しながら直接作品を購入することができます。Tシャツやバッグ、インテリア用品にレコードまで種類はさまざま。
冬に訪れた展示会では、クリスマスプレゼント探しに訪れた地元客で大混雑! アーティストの1点ものは、人とは違う個性的なプレゼントを求めるフランス人に大人気なんです。チャンスは年3回と限られてはいますが、アート好きな人にはレアで楽しいスポット。
■ モトコMOTOCO
・住所: 13 Rue de Pfastatt, 68200 Mulhouse
・URL: https://www.motoco.fr/
18世紀から20世紀にかけて、テキスタイルの発展に伴ってあらゆる産業が活性化したミュールーズは、産業革命が起きたイギリスのマンチェスターになぞらえて、“フランスのマンチェスター”と呼ばれてきました。工業の歴史を物語る博物館がたくさんあり、その数はパリにも次ぐとも! 数あるなかからこの町を代表する3つの博物館をご紹介しましょう。
●一流ブランドも御用達「ミュールーズ染織博物館」
まずはこの町を発展させたテキスタイルの歴史を伝える「ミュールーズ染織博物館」。染色のための機械や貴重なインド更紗をはじめ、当時の起業家たちが世界各国で集めた布や洋服を見ることができます。
この博物館のユニークなところは、600万点もの膨大なテキスタイルのアーカイブから、デザインをアレンジして商用利用できること。現在アーカイブの一般公開はしていませんが、エルメスやサンローランなど世界の名だたるハイブランドも利用しているのだそう。そうしてできたテキスタイルはまだこの博物館にアーカイブされ、世界中のデザイナーにインスピレーションを与えています。
■ ミュールーズ染織博物館Musée de l'impression sur étoffes de Mulhouse
・住所: 14 Rue Jean Jacques Henner, 68100 Mulhouse
・URL: http://www.musee-impression.com
●世界最大の「自動車博物館」
車好きなら一度は訪れたい博物館がここ。1900年代半ばにミュールーズで繊維工場を経営していたシュルンフ兄弟のクラシックカーコレクションを展示した、世界最大の自動車博物館です。1万7000㎡もの広大な敷地に、超高速&超高額で知られる「ブガッティ」を中心に、およそ500台のレアな車が並びます。
2020年5月7日〜10月11日まで、ランボルギーニと60年代のポップカルチャーを交えた特別展「ポップ・ランボルギーニ」が開催予定。上の写真はMarcello Mencarini、ランボルギーニ・ミウラSVモデル(1973年)
■ 国立自動車博物館Cité de l'Automobile
・住所: 17 rue de la Mertzau 68100 Mulhouse
・URL: https://www.citedelautomobile.com/en/home
・アクセス: トラム停留所Musée de l’Auto下車
●ヨーロッパ最大の「鉄道博物館」
鉄道ファンならこちらをおすすめ。1844年の蒸気機関車から現在のTGVまで、100両以上が展示された欧州一の鉄道博物館です。貴重なナポレオンや大統領専用車両なども見ることができます。
■ 鉄道博物館Cité du Train
・住所: 2 rue Alfred de Glehn 68200 Mulhouse
・URL: https://www.citedutrain.com
・アクセス: トラム停留所Musées下車
工業関連の博物館だけでなく、昔のアルザス地方の田舎暮らしが再現されたユニークな屋外ミュージアムも! ミュールーズの中心部から車で約30分の「アルザス・エコミュージアム」では、20世紀初頭のアルザスの村がそのまま再現されていて、日光江戸村のように昔の家で生活する人々や当時の職人の仕事ぶりを見ることができます。
季節ごとにイベントが開催されますが、取材で訪れた12月は大きなクリスマスリースに火を灯したり、園内の各所で民族衣装を着た人々による合唱や寸劇が繰り広げられ、昔のアルザスにタイムトリップした気分を味わえました。
アルザス・エコミュージアムのすぐそばには「星の王子さま」のテーマパークもあるので、あわせて訪れるのもおすすめです。
■ アルザス・エコミュージアムÉcomusée d'Alsace
・住所: Chemin du Grosswald, 68190 Ungersheim
・URL: https://www.ecomusee.alsace/
※2020年は4月からオープン
フランスとドイツの間で何度も国境線が動いた歴史をもつアルザス地方は、料理にもドイツ色が濃く見られ、肉料理が充実しています。アルザス地方の郷土料理をはじめ、おいしい肉料理がいただけるミュールーズのレストランを3軒ピックアップ!
●アルザス郷土料理ならここ
30年以上続く、地元で人気のアルザス料理専門店「ル・セリエ」。豚肉やソーセージをザワークラウト(塩漬け発酵させたキャベツ)と煮込んだアルザスを代表する郷土料理「シュークルート」や、アルザス風の薄焼きピザ「タルトフランベ」など、伝統料理を堪能できます。どの料理もボリューム満点なので、数人でシェアするのがおすすめ。
■ ル・セリエLe Cellier
・住所: 4 rue des Trois Rois, 68100 Mulhouse
・URL: https://restaurant-lecellier.fr/
●生肉ラバーにおすすめ!絶品タルタルの店
みじん切りにした牛肉に玉ねぎやケッパー、ハーブなどを混ぜ、オリーブオイルや塩胡椒で味つけた「タルタルステーキ」は、生肉好きにはたまらないフランスの名物料理。シンプルな調理法だけに、素材の味と鮮度が命です。
町なかにある「レストラン・ユグ」はタルタルステーキが自慢のレストラン。臭みは一切なく、しっかりした牛肉の旨味と、混ぜ合わせた食材との一体感が抜群です。ほかにもメニューはいろいろありますが、来店したお客さんのほとんどがタルタルステーキを注文しているのも納得のおいしさ!
■ レストラン・ユグRestaurant Hug
・住所: 11 Rue du Sauvage, 68100 Mulhouse
・URL: http://restaurant-hug.zenchef.com
●ワインの品揃えも◎のおしゃれビストロ
「ル・プチ・パリ」は、フレンチの伝統を守りつつ、ひと味違うおいしさを提供するモダンなビストロ。2012年オープンの若いお店ながら、地元客の支持を集めています。ワインバーも経営しており、ワインの品揃えも充実。
■ ル・プチ・パリLe Petit Paris
・住所: 12 Rue de la Moselle, 68100 Mulhouse
・URL: https://www.lepetitparis.pro/
町の中心にある「ホテル・デュ・パルク」は、ミュールーズの人々の憩いの場所である緑あふれるシュタインバッハ公園の前に建つ美しい4つ星ホテル。自動車博物館のクラシックカーコレクションのオーナーだったシュルンフ兄弟が所有していた建物を改装した老舗ホテルです。
スタンダードからスイートまで全76室ある客室は、木のあたたかみを感じる落ち着いた雰囲気。ロビー階にある「チャーリーズバー」は、夜のバータイムはもちろんランチも可。タルトフランベなどのアルザス料理もいただけます。
■ ホテル・デュ・パルクHotel du Parc
・住所: 26 Rue de la Sinne, 68100 Mulhouse
・URL: https://www.hotelduparc-mulhouse.com
ミュールーズにはこのほかにも、駅のすぐ目の前に建つ「メルキュール・サントル・ガール」など、観光に便利なアクセスの良いホテルが複数あります。
■ ホテル・メルキュール・サントル・ガールHotel Mercure Mulhouse Centre Gare
・住所: 4 place du Général de Gaulle 68100 Mulhouse
・URL: https://all.accor.com/hotel/1264/index.en.shtml
気候的に過ごしやすいのは日が長くさわやかな初夏。屋内の博物館巡りなら通年いつでも楽しめますが、アルザス地方はクリスマスマーケットでも人気のエリア。一年のなかでも最も華やかなきらめく町並みは、冬の寒さを吹き飛ばす活気に満ちています。
特にミュールーズのクリスマスマーケットは、テキスタイルの歴史が息づく「布」で彩られていて、ほかの町とはひと味違う趣き。世界中から訪れる観光客であふれ返ったストラスブールやコルマールより落ち着いて散策できるのもおすすめしたいポイントです。ミュールーズのクリスマスマーケットは11月下旬〜12月下旬まで。こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。
おみやげにはアルザス地方の焼き菓子クグロフやココナッツ入りのマカロンなどがおすすめ。コルマールに本店のある「メゾン・アルザシエンヌ」ではアルザス名物のスイーツがずらりと揃います。ミュールーズの町なかにもあるので立ち寄ってみて。
■ メゾン・アルザシエンヌMaison Alsacienne de Biscuiterie
・住所: 22 Rue Henriette, 68100 Mulhouse
・URL: https://www.maison-alsacienne-biscuiterie.com/fr/
フォトジェニックな町並みやポップなストリートアート、世界有数の博物館も揃い、見るべきスポットが盛りだくさんなミュールーズ。アルザス地方のストラスブールからは鉄道で約50分、コルマールからは鉄道で約20分ほどなので、アルザスの町巡りに加えてみてくださいね。
取材協力
●フランス観光開発機構
・URL: https://jp.france.fr
●ミュールーズ観光局
・URL: https://www.tourisme-mulhouse.com
地球の歩き方編集部 上田暁世