
旅に行きたくなる記事をテーマ別に厳選!地球の歩き方ウェブマガジン
キーワードで検索
マドリードで必ず訪れたい観光名所のひとつが、1819年に王立美術館として開館したプラド美術館。スペイン王家のコレクションを中心に約3万点もの絵画や彫刻を所蔵する、世界でも屈指の美術館です。スペインが誇る「美の殿堂」で、芸術の世界に浸ってみましょう。
また、訪問の際は、事前にチケットを予約するのがおすすめ。公式サイトや旅行サイトからオンラインで簡単に購入できるので、混乱を避けてスムーズに入館できます。無料入場の時間帯もあるので、事前にチェックしてみましょう。
プラド美術館は、旧市街の東にあるプラド通り(Paseo del Prado)に面して建っています。地下鉄の最寄り駅は1号線のエスタシオン・デル・アルテ(Estación del Arte)駅、または2号線のバンコ・デ・エスパーニャ(Banco de España)駅で、どちらからも徒歩8分ほど。駅から美術館へと続くプラド通りは、プラタナスの並木が美しい遊歩道になっています。
美術館の建物は、18世紀に造られた本館と2007年に拡張された新館があり、主要作品が展示されているのはビリャヌエバ館と呼ばれる本館のほう。新館のヘロニモス館は、おもに特別展に使われています。
それでは、館内に入ってみましょう。入口はビリャヌエバ館の北側、ゴヤ門(2階)とヘロニモス門(1階)の2ヵ所にあります。
ビリャヌエバ館は、地下1階、地上3階からなり、中世から19世紀までのヨーロッパ絵画、彫刻、宝物など約1700点が展示されています。コレクションの多くは、スペイン・ハプスブルク朝(16世紀初~17世紀末)の歴代国王が、新大陸からもたらされた莫大な富をもとに収集したもの。その豪華さは、かつて「太陽の沈まぬ国」と呼ばれたスペイン帝国の繁栄を彷彿とさせます。
絵画館としては世界有数の質の高さを誇るプラド美術館ですが、その展示作品の半分以上がスペイン絵画です。なかでも、スペイン3大巨匠といわれるベラスケス(1599~1660年)、ゴヤ(1746~1828年)、エル・グレコ(1541~1614年)の作品は必見です。そのほか、ティツィアーノ(1490頃~1576年)をはじめとするイタリア絵画、ボス(1450頃~1516年)やルーベンス(1577~1640年)などフランドルの名画を多数所蔵し、「ティツィアーノ、ボス、ルーベンスを知るためにはプラドを訪れなければならないが、偉大なスペイン絵画を評価するにはここを出る必要はない」といわれるほどです。
膨大なコレクションをじっくり鑑賞するには1日ではとても足りませんが、時間が限られている場合は主要作品にポイントをしぼって見学するとよいでしょう。その場合でも、少なくとも2〜3時間はみておきたいところです。
以下に、プラド美術館で絶対に見逃せない作品をご紹介しましょう。
●『ラス・メニーナス(女官たち)』(1656年)/ディエゴ・ベラスケス
17世紀に活躍したベラスケスは、スペイン絵画の黄金時代を代表する画家。24歳で宮廷画家となり、61歳で没するまで、国王一家の肖像画や宮殿に飾る絵を制作しました。
『ラス・メニーナス』は、ベラスケスの最高傑作といわれる作品です。中央に立つのはフェリペ4世(1621~1665年)の娘マルガリータ王女、その周りに女官たち、画面左で絵筆を握っているのがベラスケス本人。さらに注目すべきは、奥の鏡に映っている二人の人物。実はこの絵は、画家の視点ではなく、画家が描く肖像画のモデルである国王と王妃の視点で描かれたものなのです。そのため絵を鑑賞する人は、モデルと同じ位置からこの情景を見ているような、不思議な感覚に陥ります。
●『着衣のマハ』『裸のマハ』(1797年)/フランシスコ・デ・ゴヤ
ひとりのモデルを着衣と裸で、しかも同じポーズで描いた珍しい作品。マハとは「小粋なマドリード娘」を意味する当時の言葉。ゴヤのパトロンだった宰相ゴドイ(1767~1851年)の依頼で描かれたといわれ、モデルもゴドイの愛人とする説が有力です。
このほか、宮廷画家時代に制作した大作『カルロス4世の家族』、フランス軍による虐殺を描いた『1808年5月3日』、『我が子を食らうサトゥルヌス』をはじめとする晩年の『黒い絵』シリーズに見られるように、徹底的なリアリズムで人間の内面を表現したゴヤは、近代絵画の先駆者とも呼ばれています。
●『聖三位一体』(1577〜1580年)/エル・グレコ
スペイン語で「ギリシア人」を意味するエル・グレコは、ギリシアのクレタ島で生まれ、1577年にスペインへ移住。マドリード郊外のトレドで後半生を送りました。画家として注目されるきっかけとなったのが、トレドの教会の祭壇画として描かれたこの作品です。
『聖三位一体』とは、父(神)と子(キリスト)と聖霊(白い鳩で表される)が一体であるとする教え。ミケランジェロの『ピエタ』を思わせる構図や鮮やかな色彩に、イタリアの影響がうかがわれます。
●『快楽の園』(1505年頃)/ヒエロニムス・ボス
ボスはフランドル(現在のオランダ)で生まれた、ルネッサンス期の画家。聖書に基づく寓話を主題にした作品が多く、独創的な作風で知られています。フェリペ2世がボスの熱烈な愛好家だったため、現存する約30点のうち10点がプラド美術館に所蔵されています。
なかでも有名なのが『快楽の園』で、この絵を観るために美術館を訪れる人もいるほど。3枚のパネルから成る祭壇画で、左は天国、中央は現世を表す快楽の園、右は地獄を表しているといわれます。
プラド美術館のチケットを予約・購入するには、下記の3つの方法があります。繁忙期(イースターや夏の観光シーズン)は美術館のチケット売り場に行列ができることもあるので、訪問日が決まっている人は、事前に予約しておくのがおすすめです。
トップページから「VISIT」へ進み、チケットの種類、訪問日(特別展示も見たい場合は時間帯も)を選び、E-mailアドレスやクレジットカード情報など必要項目を入力します。この場合、料金に予約手数料として€0.50が加算され、また購入後の変更や払い戻しはできないので注意しましょう。
《プラド美術館公式サイト》https://www.museodelprado.es
チケット販売サイト「GET YOUR GUIDE」などで予約できます。料金は公式サイトから予約するのと同じで、24時間前までなら無料でキャンセルも可能です。
プラド美術館の北側、ゴヤ門の1階にチケット売り場があります。11:00〜13:00は特に混み合うので、繁忙期はこの時間帯を避けるとよいでしょう。
《開館時間》
月~土曜:10:00~20:00
日曜・祝日:10:00~19:00
閉館日:1月1日、5月1日、12月25日
《料金》
一般:15€
65歳以上、学生:7.50€
18歳未満:無料
※シニア割引や学生割引を受ける場合は、年齢が証明できるもの(パスポート)、国際学生証などを持参しましょう。
無料入場について:
月~土曜の18:00~20:00、日曜・祝日の17:00~19:00は、無料で入場することができます! 閉館まで2時間しかありませんが、旅費を少しでも節約したい人、お目当ての作品だけ観られればいいという人は、この時間帯に訪れるのがおすすめです。予約は不要ですが、1時間くらい前から無料入場を待つ観光客の行列ができるので、特に繁忙期は早めに列に並ぶとよいでしょう。
●手荷物検査
入場する際に手荷物のX線検査と金属探知機のチェックがあり、危険物(ナイフ、液体、ライターなど)は持ち込めません。ペットボトルや大きな荷物は入口脇のクロークに預けましょう。
●館内での飲食
美術館への飲食物の持ち込みは禁止されています。必要な場合は、館内のカフェテリアを利用しましょう。
●写真撮影について
館内での写真や動画の撮影は、全面的に禁止されています。
●カフェ・プラド
美術館の1階にある、セルフサービス方式のカフェテリア。カウンターでコーヒーやジュースなどの飲み物と軽食が注文できます。またランチタイム(12:15〜16:00)には、前菜、メイン料理、デザートなどが並び、しっかりとした食事を取ることも可能です。美術鑑賞に疲れたら、休憩がてら立ち寄ってみましょう。
●ミュージアムショップ
カフェ・プラドの隣にあるショップでは、公式ガイドブック(日本語あり)やポストカードのほか、さまざまなオリジナルグッズを販売しています。特に、美術館所蔵の名画がプリントされたエコバッグやTシャツは、値段も手頃で、お土産として人気があります。
2019年に開館200年を迎えたプラド美術館は、スペインを訪れるなら外せない観光名所です。 ここでは、ベラスケスの『ラス・メニーナス』やゴヤの『着衣のマハ』など、ヨーロッパ美術の傑作を堪能できます。マドリードを訪れる際はぜひチケットを予約して、時を超えて輝き続ける「美の殿堂」で、スペイン王家が愛した至宝の数々にふれてみてください。
プラド美術館
詳細をみるTEXT: シエスタ
PHOTO: シエスタ、iStock
≫≫≫ スペイン旅行に役立つ記事はこちら
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記を参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL:https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html