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スペイン第2の都市バルセロナ。そのシンボルともいえるのが、天才建築家アントニ・ガウディが生涯をかけて取り組み、今なお建設が続くサグラダ・ファミリア聖堂です。その独創的かつ壮大な教会は、「一度は訪れてみたい世界遺産」ランキングで常に高い人気を誇り、世界中から訪れる人々を魅了しています。
目次
バルセロナのほぼ中心部に位置するサグラダ・ファミリアは、正確には日本語で「聖家族贖罪(しょくざい)聖堂」といいます。ラテン語で、サグラダは「聖なる」、ファミリアは「家族」。イエス・キリストと聖母マリア、そしてマリアの夫でイエスの養父ヨセフに捧げる教会として、民間カトリック団体であるサン・ホセ(聖ヨセフ)協会によって1882年に着工されました。
当初はバルセロナ司教区の建築家フランシスコ・ビリャール(1828~1901年)が設計を担当していましたが、協会側と意見が合わず辞任。着工翌年の1883年、後継に任命されたのが、31歳の若きガウディ(1852~1926年)でした。当時まだ駆け出しの建築家だったガウディは、「聖堂の建設以上に、建築家が望みうる仕事がほかにあろうか」と、サグラダ・ファミリアの仕事を引き受けたといいます。
まずガウディが始めたのは、新たな設計図を作成しながら、キリスト教について学ぶことでした。それまでのガウディは信仰心の篤い人間ではありませんでしたが、キリスト教の知識を得るにつれ、次第に宗教に傾倒していきました。そして晩年は、サグラダ・ファミリアの建設を神から与えられた使命と考え、「神の家」である完璧な教会を造り上げようとしたのでした。
サグラダ・ファミリアは、信者からの寄進で財源をまかなう贖罪教会のため(贖罪とは、金品を差し出したり善行を積むことによって罪をあがなうこと)、たびたび資金不足による建設中断という危機に見舞われました。そうした際、ガウディは自ら資金集めに奔走し、ときには信者を戸別訪問して献金を集めることもあったそうです。
晩年のガウディは、他の仕事を断ってサグラダ・ファミリアの建設に専念し、報酬も受け取らず工事中の聖堂に寝泊まりしていました。1926年6月7日の夕刻、日課だった教会のミサ向かう途中で路面電車にはねられたときには、みすぼらしい身なりのため浮浪者に間違えられたといいます。3日後の6月10日、ガウディは73歳で神に召され、葬儀には3万人以上ものバルセロナ市民が集まってその死を悼みました。
ガウディの死後も建設が続けられてきたサグラダ・ファミリアですが、スペイン内戦(1936~39年)中にガウディが残した設計図や模型が失われたこともあって工事はなかなか進まず、完成まで200年以上かかるといわれたこともありました。
しかし近年、バルセロナを訪れる観光客の激増によって拝観料収入が増えたことや、近代工法を取り入れたことで、工事のスピードが飛躍的にアップ。2010年には聖堂内部が完成し、ローマ教皇ベネディクト16世(在位: 2005年4月19日 – 2013年2月28日)を招いてサグラダ・ファミリアを正式に教会と認定するミサが執り行われました。
また2018年には、中央にそびえる高さ約170mのイエスの塔がついに着工。ガウディ没後100周年にあたる2026年には、高さ172.5メートルあるメインタワー「イエス・キリストの塔」が完成すると発表されています。
●生誕のファサード
ガウディは、イエス・キリストの「生・死・復活」を象徴する「生誕・受難・栄光」の3つのファサードを計画しました(南側の栄光のファサードは現在工事中)。そのうち唯一ガウディの存命中に完成したのが、この生誕のファサードです。
太陽が昇る東側に面したファサードには、イエスの誕生から幼少期までの出来事が表現されています。ガウディ自らが指揮をとって制作した見事な彫刻は、聖堂のなかでも最大の見どころといえるでしょう。
●受難のファサード
太陽が沈む西側にあり、イエス・キリストの死がテーマ。装飾を排除し、冷たい石の肌をあらわにすることで、受難の苦しみを表現しています。左下からS字形に見ていくと、最後の晩餐から始まる磔刑前のできごと(下層)、ゴルゴダの丘への道(中層)、イエスの死と埋葬(上層)の順にたどることができます。
●聖堂内部
ガウディの設計案に基づいて建設され、2010年に完成。樹木のように枝分かれした柱がヴォールト天井を支え、天井は殉教のシンボルであるシュロの葉のモチーフで飾られています。また、色鮮やかなステンドグラスにも注目。東側は赤やオレンジの暖色、西側は青や緑の寒色を基調とし、太陽が差し込む方角によってさまざまな表情を見せてくれます。
●鐘楼
3つのファサードに4本ずつ建てられる鐘楼は、12使徒(イエス・キリストの12人の弟子)を象徴しています。現在、生誕のファサードと受難のファサードの8本の鐘楼が完成しており、エレベーターで昇ることができます。ガウディは聖堂をひとつの「楽器」と考え、塔に80以上もの鐘を吊して音楽を奏でようと計画していました。
●博物館
聖堂の地下に博物館があり、ガウディが残したスケッチや模型などが展示されています。なかでも有名なのが、フニクラ(Funicular)と呼ばれる「逆さ吊り模型」。ガウディはこの模型を使った実験を10年間も行い、ヒモに重りを吊り下げてできる曲線を上下反転したものが、自然で丈夫な建築構造であると考えたのです。
●地下礼拝堂
サグラダ・ファミリアの2代目建築家に就任したガウディが、初代建築家の設計をほぼ踏襲し、最初に完成させた部分。礼拝堂の片隅には、ガウディの墓が置かれています。受難のファサードに向かって左側に入口があり、毎日数回行われるミサの前後のみ無料で見学することができます。
時間があれば、夜のサグラダ・ファミリアもぜひ訪れてみましょう。日没後にライトアップされ、昼間とはまた違った幻想的で美しい姿を見せてくれます。写真を撮影するなら、生誕のファサード側にあるガウディ広場(Plaça de Gaudí)がおすすめ。池に映った「逆さサグラダ・ファミリア」を見られます。
ライトアップの時間は季節によって異なるので、事前に確認しておくとよいでしょう。
・ライトアップの時間
1月 18:30〜22:00
2月 19:00〜23:00
3月 19:30〜23:00
4・9月 21:00〜24:00
5・8月 21:30〜24:00
6・7月 22:00〜24:00
10月 20:00〜23:00
11月 18:30〜22:00
12月 18:00〜22:00
(ライトアップは、予告なく中止されることがあります)
サグラダ・ファミリアを訪れた記念に、ここでしか手に入らないお土産を探してみてはいかがでしょうか。マグカップ、文房具、Tシャツ、スイーツなど、サグラダ・ファミリアやガウディの作品をモチーフにしたオリジナルグッズが満載で、きっとお気に入りの品が見つかるはずです。
ミュージアムショップは、生誕のファサード側と受難のファサード側の2ヵ所にあり、品揃えはどちらも同じ。生誕のファサード側のショップは入場チケットがなくても利用できるので、後でゆっくり買い物したい場合にも便利です。
入場チケットは基本的に予約制で、公式サイトのチケット販売ページから購入できます。オンライン販売で残った分のみ当日券として販売されますが、ハイシーズン(4~9月)は売り切れてしまうことも多いため、旅程が確定したら早めに予約しましょう。
・チケット販売ページのURL: https://sagradafamilia.org/tickets
予約は下記の手順で行います。
1)チケットの種類を選ぶ
2)訪問日と入場時間を選ぶ
3)枚数を選ぶ
4)氏名とメールアドレスを入力
5)クレジットカード情報を入力
決済が完了すると、チケットのPDFファイルがメールで届くので、プリントアウトして持参するか、スマートフォンに保存しておきましょう。当日は生誕のファサード側にある入口で、予約チケットのQRコードを機械にかざして入場します。
バルセロナ市内から公共交通機関を利用する場合は、メトロ(地下鉄)が便利です。2号線(紫色のライン)または5号線(青色のライン)のサグラダ・ファミリア(Sagrada Família)駅で下車。出口は数ヵ所にありますが、どこから出てもすぐにサグラダ・ファミリア聖堂が見えるので、迷うことはありません。
サグラダ・ファミリアの建設にすべてを捧げ、「神の建築家」と呼ばれたガウディ。今も彼の魂が眠る聖堂を訪れ、細部にまで込められたこだわりと情熱を知れば知るほど、そのすばらしさに圧倒されることでしょう。