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2021年8現在、まだまだ以前のように自由に海外旅行に行ける状態ではないが、だからこそ、今はゆっくり旅について語りたい!そんな思いで生まれた、「こんな時だから、旅を語ろう」企画。その一部として『地球の歩き方』を作るスタッフにインタビューを実施。第二回は、『地球の歩き方』編集部の池田祐子。様々な自然の神秘的な風景を旅してきた彼女に、アフターコロナに注目を集めると予想される「地球のパワーを感じる旅」について話を聞いた。
外出が制限されたり密を避けた生活を求められ、世界中が都市部での暮らしに疲労を感じている今の状況を見ると、アフターコロナでは、大自然のエネルギーを感じるような旅に注目が集まるのではないかと予想される。『地球の歩き方』をはじめ、『aruco』や『聖地&パワースポット図鑑』などをプロデュースする池田祐子は、オーロラや火山、滝、砂漠など自然の神秘を感じる旅のエキスパート。今回のインタビューテーマを伝えるとあっという間にリストアップした。
「地球のパワーを感じる場所だと、例えばアイスランドの“地球の割れ目”とか?」と、開口一番パワーワードでガッツリ心を掴んでくる彼女。地球の割れ目とは、ユーラシアプレートと北米プレートが引っ張り合ってできた地形で「ギャウ」と呼ばれているのだそう。「アイスランドには、割れ目が剥き出しになっている世界唯一の場所があるんです。そこに自然に真水が溜まって、潜ると青い世界が広がっているんですが、泳いでいると吸い込まれるんじゃないか?と思う怖さと、ワクワクする気持ちが同時に沸き起こってきて、本当に神秘的な場所なんです。」
アイスランドと聞いて「地球の割れ目」を連想する人は決して多くないだろう。大抵の場合、思いつくのはまずオーロラのはずだ。彼女はもちろん、アイスランドでオーロラを目撃している。「街の中でもオーロラが見られるんです。ホテルの上に観測所があったり、オーロラが出そうなところに車で移動しながら追いかけるオーロラハントツアーなんてものもあるんですよ。」
ただ、北欧では一般の人が想像するよりもオーロラが見られる可能性は低いと彼女は言う。「1週間いて60%くらいの観測率なので運次第。でも北欧は街並みも綺麗だし、スウェーデンのアイスホテルやフィンランドの『グラスイグルー』のような独特な施設があったり、街自体に楽しめる要素がいっぱいあるので、オーロラは見られたらラッキーくらいの気持ちでいるのがいいかもしれません。」
オーロラが発生するいわゆる“オーロラベルト”はアイスランドをはじめ、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの北欧4カ国と、カナダ、アラスカに跨がっている。「高確率で観測したいならアラスカやカナダ北部のイエローナイフですね。3日間で90%という高確率で観測できるんです。」実は彼女が初めてオーロラを見たのはアラスカで、滞在中に何度もオーロラを観測できたと言う。大自然の中での観測は厳しそうだが、「観測所は山奥が多いけれど設備が整っていているので不便はありません。防寒着を貸してくれたりするので頼もしいですよ。」と語る。
オーロラのレベルは5段回に分けられていて、緑の光がうっすら見られるくらいだとレベル1、レベル3以降でカーテン状の光が見られるというのが目安となる。彼女はアラスカで、最高レベルの5で“ブレイクアップ(オーロラ爆発)”という現象を見たそう。その印象は「震えるほど感動的!」と今でもその時の気持ちをはっきりと覚えているようだ。「突然空に亀裂が走って『空が割れた⁉︎』と思ったらいろんな色の光が空全体に広がって。その光が生き物のようにうねり始めたんです。まるでカーテンのようでもあり花火のようでもあり、竜のようでもあり…なんと表現していいのかわからないくらい。現実離れしすぎていて宇宙にでもいるような気分でした。あまりの神秘的な光景に気づいたら涙が溢れていました。」
圧倒的な自然の力を感じる場所として次に挙がったのは火山。中でもバヌアツのタンナ島にあるヤスール火山は格別だと話す。「たくさんの島が集まって国を成すバヌアツは、 “火と水の国”と呼ばれているだけあって火山がたくさんあるんです。その中で観光客でも見られるのがヤスール火山です。トラックで噴火口まで乗せて行ってくれて、誰でも火口の前の噴火が見られて、しかもその噴火がちょうどいいんですよ。他の火山だとマグマ溜まりを見られることはあっても噴火はなかなか見られません。噴火が激いと人は近寄れないですしね。でもヤスール火山は20分に1回くらい、人が見られる程度の噴火が起こるんです。火口の淵でみんなで囲んで見るんですが、天候次第で噴火口に回り込んでマグマ溜まりを見ることもできるんです。」そんな至近距離では熱さが心配になるが、装備は通常の登山服で問題ないよう。火山の存在が少し身近に感じられそうだ。
大自然に触れる旅は、確実にお目当ての風景が見られるわけではない。実は彼女の火山デビューはエチオピアだった。「エルタアレ火山を目指したんですが、ダナキル砂漠を通って、火山の麓から夜中に4時間くらいかけて登ったのに、噴火後だったせいで噴煙で何も見えなかったんですよ。あんなにしんどい思いをしたのに!」と悔しさを思い出す。せめてもの救いはダナキル砂漠にあるもうひとつの火山・ダロル火山を見られたこと。「海抜下にあって、“世界で一番低位置にある火山”と言われているんですが、まるでナメック星のような不思議な風景なんです。ポコポコと硫黄を発していて、歩いていると厚手の靴の底がベリっとめくれちゃうくらい熱いんです。替えの靴を用意していなかったから急遽現地で調達しました。」
ワイルドで体力が必要なエチオピアに比べて、バヌアツはオーストラリア人のバカンス地としても人気の場所。「おもてなしが行き届いていて居心地がいいんですよね。料理も美味しいし。ナチュラルな牧草で育ったオーガニックなバヌアツ牛なんて絶品ですよ。」と、楽しめるのは火山だけではないようだ。「神秘的な場所ならラピスラズリが溶け込んで美しい青色になったブルーホールや隠れ家的なシャンパンビーチなど、ロマンチックな場所が多いのでハネムーンなどのバカンスにもおすすめです。」火山をきっかけに出逢える風景も多そうだ。
続いて話してくれたのは荘厳な滝。「天然の滝として一番すごいと思ったのはビクトリアの滝です。」ジンバブエとザンビアにまたがるビクトリアの滝は、これまた“大地の割れ目”にできた一続きの滝。「大地の割れ目は1年に数センチずつ移動していて、上からその軌跡が見えるんです。」地球の不思議を感じるのはそれだけではない。「とにかくスケールが大きいんですよね。滝からは水しぶきの噴煙が上がっていて、それが雲になって雨が降るんですけど、その雨は滝が雲になった雨だと思うと面白くて。」
この滝を十分楽しむためには、ウルトラライトプレーンという小型飛行機がおすすめだそう。「ビクトリアの滝は常に綺麗な虹が出ているんですが、ウルトラライトプレーンでは虹の橋を渡れますよ。」
また、時間や時期によって異なる魅力があるというビクトリアの滝。「夜になると滝しぶきと月の光の条件が揃えばナイトレインボーが見られます。虹の下を水がサーっと落ちていってとっても幻想的な風景です。」また、乾季には「悪魔のプール」と呼ばれる滝の上の水たまりから滝壺を覗けるようになるのだとか。崖から滝壺を見下ろすという迫力満点の体験は他ではきっとできないだろう。
彼女が心奪われたもう一つの滝はイグアス。ビクトリアが一続きであるのに対し、イグアスは275の滝の集合体で滝幅はなんと4kmにも及ぶ。「中でも奥まったところにある滝壺「悪魔の喉笛」の迫力は本当にすごい!アルゼンチン側の展望台から見た時、ゴォー!という爆音に圧倒されました。1箇所のポイントでの迫力はこれに勝るところはないと思います。」彼女はさらに、ヘリで上空を飛んで俯瞰でフルサイクルレインボーを見たり、ゴムボートで滝をくぐったと話す。ボートで滝に突っ込んでいくんですが、水圧のレベルが笑っちゃうくらいすごくて、くぐるときは一瞬息が止まりました。」日本で滝行をした経験を持つ彼女だが、その圧力は比較にならないようだ。
地球の割れ目、オーロラ、火山、滝、ほかにも砂漠や渓谷などあらゆる地球の神秘に触れてきた彼女。アフターコロナに行きたい場所を聞いてみた。「行ってみたいのは南極ですね。できれば12月5日の皆既日食を見たいです。きっと『生きてる!』って実感できそう!」と、また未だ見ぬパワーみなぎる土地に思いを馳せていた。
<プロフィール>
池田祐子(イケダユウコ)
『地球の歩き方』編集者。担当タイトルは、『地球の歩き方』ベトナム、フィリピンなどのアジア系タイトル。女子向けシリーズ『aruco』のポルトガル、オーストラリア、バリ島、セブ、オーストラリア、インド、スリランカ、ハノイなど多方面のエリア。その他、御朱印シリーズや、聖地&パワースポット図鑑など多岐に渡る。
※当記事は、2021年8月5日現在のものです
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
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◎外務省海外安全ホームページ
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