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浜通り、中通り、会津と呼ばれる3つの地方からなり、異なる気候風土を持つ福島県。豊かな自然と温暖な気候を持つ浜通り地方には、2011年の震災から時を経て、ひとつひとつ復興・再生へと向かう人々の姿がありました。シリーズ5回目となる今回は、川俣町、飯館村をめぐります。
福島県の中央北部に位置する川俣町は、古くから養蚕、はた織業が盛んで、明治期には織物の一大生産地として栄えた地域です。史誌の伝えるところによると、およそ1400年前、崇峻天皇の妃であった小手姫が、桑を植え養蚕を行い、糸をつむぎ、機織の技術を伝えたといわれています。最近では、川俣シルクの質の高さが注目され、ヨーロッパの高級アパレルブランドを顧客に持つなど、世界的にその存在が知られています。
「川俣町おりもの展示館 からりこ館」は、織物の歴史と伝統技術を伝えるとともに、はた織りを気軽に体験できる施設です。今回は、13cm×13cmの木綿のコースターづくりにトライ。はた織機をとんとんと動かして30分ほどで完成です。最近では、川俣町の花、アンスリウムでの草木染も行っていて、指導員の佐藤さんによると「赤ワインのような色」になると言います。草木染は、体験教室で行っているので、ホームページで内容をチェックしてみてください。
■川俣町おりもの展示館 からりこ館(道の駅シルクピア内)
・住所: 福島県伊達郡川俣町大字鶴沢字東13-1
・電話: 024-565-4889
・営業時間: 9:00〜17:00(最終入館16:30)
コースターの手織り体験: 10:00~12:00、13:00~16:00
・料金: 入館料無料(*コースターの手織り体験は一人500円)
・定休日: 毎週月曜日(祝祭日の場合は翌日)および12月29日~1月3日
・アクセス: 東北自動車道、福島西IC/二本松ICから各20km。JR東北新幹線・福島駅から18km
・URL: https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kanko-event/silkpia-karariko.html
近年、川俣町の新名物となったのが、エナメルのように光沢のあるハート形の花が特徴のアンスリウムです。近畿大学による「川俣町復興支援プログラム」の一環として始まり、2013年に実証栽培を開始。2019年には東京の大田市場花き部へ初出荷、独自のハウス管理と栽培技術で安定した生産が行われています。
アンスリウム栽培を行う高橋さんによると「現在は11人で47種類を栽培しています。1年間に23万本、切り花としての出荷量は日本一」だそうです。緑の葉の部分は草木染に活用されていて、最近では川俣シルクのアンスリウム染めが研究されています。「かわまたアンスリウム」は切り花として日持ちが良く、大ぶりの花が特徴となっています。
その旨味と深いコクで人気の高い川俣シャモ。川俣町には実に多彩な料理店が点在していて、川俣シャモの親子丼をはじめ、シャモメンチ、シャモのつけ汁で食べる手打ちそば、濃厚なスープが人気の川俣シャモラーメンなどが味わえます。川俣町のホームページには、川俣シャモの料理店マップや「川俣シャモまつり」の情報もあるので出かける前に要チェックです。
■ニュー新川
・住所: 福島県伊達郡川俣町鉄炮町18
・電話: 024-566-2211
・営業時間: 11:00~21:00
・定休日: 月曜日
■川俣町ホームページ(観光・イベント情報)
・URL: https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kanko-event/
■川俣シャモ料理研究会
・URL: https://syamoken.jp/
あぶくま山系の北部に位置する飯舘村。全国的にも珍しいとされるオオカミ信仰を受け継ぐ神社があると聞いてやってきました。1051年創建の「山津見神社」は拝殿にあるオオカミの天井画で知られていて、1905年に納められた貴重な天井画200枚以上が、2013年4月の災禍でそのすべてを焼失してしまったといういきさつがあります。
その後、貴重な文化財を後世に残すべく、復元計画が持ち上がります。実は火災の前に天井画の調査が行われていて、撮影された写真をもとに東京藝術大学の大学院生らによってオオカミの絵が復元されているのです。権禰宜の久米さんによると、正確に模写する再現模写ではなく、筆遣いなどを重視して「描いた人の気持ちで描いた」という「臨模」という手法が用いられているそうです。月に向かって吠えるオオカミ、子育てするオオカミ。様々なオオカミたちが躍動する山津見神社に足を運んでみてはいかがでしょうか。
■山津見神社
・住所: 福島県相馬郡飯舘村佐須字虎捕266
・電話: 0244-42-0846
・営業時間: 8:30~16:30
・アクセス: 東北自動車道、福島西ICから車で約45分。JR東北新幹線・福島駅から車で約50分
飯舘村で2004年に開業した農家レストラン「氣まぐれ茶屋ちえこ」へ立ち寄ってみました。2011年の原発事故による休業を経て、2019年春に営業を再開。もち米を使った郷土料理や手作りの「どぶろく」を提供しています。佐々木千榮子さんがここを始めたのは、この地域の食文化や伝統が無くなってしまうことを危惧して、「昔ながらの食べ物や野菜を残そうと思った」のがきっかけだそうです。
春からはじめて一年かかるという「凍み餅」は、おやまぼくちという山菜を乾燥させ、もち米、うるち米と混ぜて作る伝統的な保存食。寒い冬に凍らせて、日陰に干して乾燥させるとカチカチに。湿気に気をつければ、2、3年は保存できるというから驚きです。水で戻してから油で揚げて砂糖醤油でいただきます。懐かしいその味、昔の人の知恵の結晶ともいうべき凍み餅。ぜひとも味わっていただきたい。
■氣まぐれ茶屋ちえこ
・住所: 福島県相馬郡飯舘村佐須200
・電話: 0244-42-1303
・営業時間: 11:00~15:00(電話受付:9:00~17:00)
・定休日: 要予約
・アクセス: 常磐自動車道、南相馬ICから車で約35分。JR常磐線・相馬駅から車で約35分
・URL: http://www.chuheisakai.ne.jp/kimagurechieko/
取材・文=植木孝(地球の歩き方)
撮影=森田健一(ビュープランニング)
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※当記事は、2022年4月21日現在のものです