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「旅の図鑑」シリーズから、地球の歩き方と世界遺産検定事務局がコラボした『世界遺産の歩き方 学んで旅する!すごい世界遺産190選』が登場! 7月21日(木)の発売を記念して、世界遺産検定事務局のおふたりと「地球の歩き方」編集長の鼎談が実現しました。前編は旅のエピソードや海外にある世界遺産の魅力をたっぷり紹介!
プロフィール:
<写真・左>
宮澤 光さん
世界遺産アカデミー主任研究員。大学院で文化人類学の研究をしながら、世界遺産関連の書籍監修や専門校閲を務めたことがきっかけで、2008年より現職。大学院時代の専門はフランスで、留学経験もあり精通している。
<写真・中央>
二見 咲穂さん
世界遺産検定事務局スタッフ。大学時代にアラビア語を専攻し、パレスチナやヨルダンへの留学経験あり。新卒で新聞社に入社後、海外ともっと近い仕事をしたい気持ちが芽生え、世界遺産検定事務局に転職。
<写真・右>
宮田 崇
『地球の歩き方』編集長。会社説明会で、「地球の歩き方」を創刊した当時の社長が旅を語る姿に魅力を感じ、入社してはや21年。これまでに71の国と地域を訪問し、コロナ禍前は1年に1回訪れるほどのインド好き。
<聞き手>曽我 将良/「地球の歩き方」観光マーケティング事業部
――実は、私も世界遺産検定2級を取得していて。仕事に役立つかなと思ったのもあるのですが、まずは「世界遺産検定」について教えてください。
二見:「世界遺産検定」とは、人類の共通の財産や宝である“世界遺産”を通して、ユネスコの平和理念を理解しながら、世界遺産について学んで、国際的な教養を身に付け、持続可能な社会の発展に寄与していくような人材の育成を目的とした検定です。
宮澤:私たちとしては学ぶことはもちろん大切なんですけど、学んだあとはぜひアクションに移してもらいたい、っていう気持ちがありまして。旅するときに道しるべになるのはなんだろう?と思ったら、『地球の歩き方』なのかなと。だから、今回一緒にコラボできたらいいなと思ったんです。
宮田:本の中にも「学んで旅する」って書いてありますもんね。
宮澤:そうです。学んだら、ぜひ旅に出てほしいんです!
宮田:基本的に旅人って「これが世界遺産だ」ってことは認識していても、正しく知識として理解してない部分もあるはずなんです。一方で、世界遺産検定は「きちんと学びましょう」という目的があると思うんですが、検定を受ける方がさまざまなエリアに足を運んでいるのかっていうと、運んでいない可能性もあるし。今回は、お互いが互いに持っているポテンシャルを掛け合わせて、まさに「学んで旅する」一冊になったと思います。
――私は、バックパッカーデビューで訪れた世界遺産がタイのアユタヤだったんですけど、今でも鮮明に覚えていて。世界各地を旅されているなかで、インパクトがある思い出や世界遺産にまつわるエピソードってありますか?
宮田:初めて友人と海外旅行に行ったのは、19歳のときかな。行き先はインドで世界遺産だらけでした。デリー、アーグラー、ジャイプル……それだけでけっこう回りましたよ。なかでも、タージ・マハルが印象的ですね。タージ・マハルはストーリーがいっぱいあって、『地球の歩き方 インド』でもいい書き方をしてるんですよ。皇帝が亡き王妃を愛しすぎて作っちゃったとか、莫大な費用で国家が傾いちゃったとか……そんなエピソードに思いをはせながらね。当時は世界遺産だって意識していたわけじゃなかったけど、いちばん最初に衝撃を受けた場所です。
宮澤:僕はインドに行ったことはないんですけど、ジャイプルのお城は訪れてみたいですね。あの周辺はイスラム王国だったから、ほかのインドの都市とは異質なものがあるんです。文化的な違いがお城の作り方にも出てきているので、見てみたいなと。ただ、家族だとハードルが高いイメージで。
宮田:今はちゃんとインフラが整っているので、日本からツアーで行けば、空港まで迎えに来てもらったりして、あまり苦労することなく旅できますよ。風の宮殿があって、ジャンタル・マンタルがあって。象にも乗れるし、デリーからのアクセスもいいし、お子さんももちろん連れていけます。
宮澤:僕はフランスに留学していたんですけど、かなり楽観主義者なので到着日のホテルを取ってなかったんですよ。空港に15時くらいに着いたんですが、まずフランス語を聞き取ってもらえず、空港を出るのに1時間30分くらいかかって。パリの市内に着いたらすでに真っ暗。リヨン駅でホテルを探してもらって、道行く人に尋ねながら歩いてたら、道を教えてくれたちょっと怖そうなお兄さんが微妙な距離でずっとついてくるんですよ。ちょっと嫌だな、怖いなと思っていたら、そのお兄さんは僕のことが心配だったらしく、信号で停まるたびに道を教えてくれたんです。
――隣に立って教えてくれるわけではなくて、絶妙な距離で(笑)
宮澤:そう、すごく優しかった。でも最初は暗いし、フランス語も通じないし、ガタイのいいお兄さんがついてきて怖いなと思っていたんですけど、そういう経験を積み重ねたからこそ、フランスが好きになったりとか、パリがいいなって思うことがあるんですよね。だから、僕は意外と旅先で苦労をした方がいいって思っているんです。言葉が通じないとか、ホテルにたどり着けないみたいなことが起こるのも、世界の多様性のいいところかな、と。
宮田:私は、苦労したくない派です。すぐにGoogle翻訳使っちゃいますもん、「このお店でいちばんおいしいものは?」って(笑)。でも、若いうちはそういう旅もいいですよね。
二見:私が初めて行った海外は、留学先のヨルダンだったんです。ヨルダンは治安的なところでいうとあまり心配ないんですけど、タクシーのメーターがぼったくり価格でケンカをしたり……とかはけっこうありました(笑)。ヨルダンのペトラ遺跡やパルミラ遺跡、パレスチナだったらエルサレムなどにはだいたい足を運んでいましたね。
――そのなかで、二見さんが初めて行った世界遺産はどこですか?
二見:最初はペトラ遺跡ですね。ペトラ遺跡まで行く道って何にもないんですよ。まるでここは火星かって思うほどで……。それぐらい本当に何にもないんですけど、めちゃくちゃ高い岩の細い隙間をとおって、20分くらい歩いて、ようやくエル・ハズネが岩の隙間から見えたときには、ああ、こんな場所があるんだって思って、それは本当に感動しました。
宮田:エル・ハズネって、いちばん有名な神殿ですよね。
二見:そうです、映画の『インディ・ジョーンズ』にも出てくるところです。
宮田:私がヨルダン編を担当していたころは、シリアの紹介もいれて『地球の歩き方 ヨルダン』としていたんです。その後、『地球の歩き方 ペトラ遺跡とヨルダン』とタイトルを変えて。地元のツアーガイドさんに怒られるんじゃないかってほどに、めちゃくちゃペトラ遺跡の情報を載せているんですよ(笑)。そこまでやらなくてもってくらい、全力で。あれは今でも印象に残ってますね。
――先ほど「学んで旅する」という話がありましたが、“学び”があった世界遺産のエピソードがあれば教えてください。
宮澤:日本にいたらわからなかったのは、フランス革命をはじめとする「革命」に関すること。日本にいると、お城を見に行っても「人々の富が意識的に集まる」っていうことをあまり実感する機会がないと思うんです。でもフランスに行って、ヴェルサイユ宮殿から庭園を望むと、地平線が見えるんですよ、本当に。もう、ヨーロッパの富の集まり方って半端じゃないんだな、そりゃ革命が起こるよ、と思いましたね。
――実際に行ってみないと、わからないですね。
宮澤:そう、行ってみて初めてわかることもあるんです。いろんな金銀の財宝があって、絵画が飾ってあって、美術館みたいな感じで、あまりの広さに地平線まで見えちゃう。日本とは全然違うっていうのは、身をもって感じたことではあります。
二見:私は、エルサレムがすごく印象に残っていて。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の3つの聖地って世界史でも学ぶと思うんですけど、言葉だけ見てもあんまりピンとこないですよね。
――確かに、そうですね。
二見:実際に足を運んでそれぞれの宗教の聖地を見てみると、まずそれぞれの宗教の祈り方が違うんです。たとえば、ユダヤ教だったら嘆きの壁に向かって涙を流しながら祈っている人たちがいて……。聖墳墓教会では、キリストの遺体を置いて清めたとされる聖油の石板があるんですけど、そこにみんながひれ伏すように祈りを捧げていました。初めてさまざまな宗教の礼拝を見て、自分がここにいていいのかな? っていう気持ちになりましたね。宗教や聖地がどういうものなのかとか、エルサレムという場所は昔から人々が祈りを捧げる場だったんだなっていうのを、体や空気で感じることができた場所だと思っています。
――海外旅行に行くときは、行く場所を調べたり勉強してから行きますか?
宮澤:僕はどんな歴史があったかなどは、それなりに調べてから行きますね。もちろん『地球の歩き方』を買って(笑)。やっぱり『地球の歩き方』いちばん実際の旅行に即していますしね。あとはYouTubeを観たり、本で調べるのも好きなので図書館に行って専門書を読んでみたりとか。直近で行ったのはデンマークなんですけど、論文なんかも読んでから行きましたね。
――デンマークに行ったとき、事前に知っておいてよかったことはありました?
宮澤:文化的なものというよりは、旅行に生かせることは調べておいてよかったなって思います。あと、旅行に行ったときには絶対にその国の言葉で1から100まで数えられるようにしてます。デンマーク語って本当に難しくって、発音聞いてもわからないし挫折しかけましたけど(笑)。よく『地球の歩き方』の巻末に、現地の言葉とかも載っているじゃないですか。飛行機を待ってる間にそれを覚えたりとか。
宮田:めっちゃ正しい使い方してくれてますね!
――宮田さんはいかがですか?
宮田:この今のポジションで、調べてないって言ったらびっくりするでしょ(笑)。
――いや、もしかしたら、プライベートでは違うかもしれないじゃないですか。
宮田:あの~……、ぎっちぎちに考えます、スケジュール(笑)。妻はもともと自分でものすごく調べるタイプだったんだけど、付き合いだしたころからなんにもしなくなりました。「ここはどうなってるの?」って聞いてくるけど、「何時何分発のこれに乗って、これが乗れなかった時にはこれに乗り換える」とかタイムスケジュールまでばっちりだから。
――世界遺産の歴史とかはインプットします?
宮田:『地球の歩き方』の何ページにここが載っているな、ってことくらいかな。好きな場所とか有名な遺跡とか、世界遺産もそうですけど、実際に行ったときにその場で『地球の歩き方』を開いて学ぶ時間があると、そこで勉強するから一生忘れないと思う。だからインプットまではしてないけど、現地で必ず読んで、学ぶようにはしています。
二見:私はけっこう無鉄砲タイプなんです(笑)。でも、『地球の歩き方』は必ず旅に行くときには携帯していて。インプットはしないで現地で読むって、宮田さんが言われたとおりの使い方をしていますね。遺跡の前で、これはこういう背景があるんだなって、文字と視覚で見ることで、より自分の記憶に刻まれるような気がしています。
――読者の方におすすめする世界遺産や、それにまつわるエピソードがあれば。
宮澤:フランスのヴェズレーにはぜひ行っていただきたいです。フランスに留学しているときに、まさにガイドブックを見ながら毎週末にレンタカーを借りてドライブしていて。で、今日どこに行こうかなって思ってヴェズレーを選んだら、ちょうど復活祭のお祭りのときだったらしくて。
――お祭りとかぶると、かなり混みますよね……。
宮澤:でも、まあどうにかなるだろうと思ってホテルに行ってみたら、案の定いっぱいで。ホテルのおじさんがほかの宿に電話してくれたんですけど、空いてなくって「ちょっと待って」って言ってそのまま出て行っちゃったんですよ。少しの間待っていたら、隣の民家のおばあさんの家の1室に泊めてもらうことができて。そんな経験って日本ではあんまりないですよね。ヴェズレーは昔から巡礼者を受け入れてきた「巡礼の町」だったので、ホスピタリティあふれる体験をしてほしいなって思います。
――なるほど、人々を受け入れてくれやすい土壌があるんですね。
宮澤:そうだと思いますね。第二次世界大戦が終わったあとに、「平和の大行進」っていうのをやっているんです。フランスを中心に戦勝国が十字架を作って巡礼をするっていう。で、ロマネスクの最高傑作ともいわれるサント・マドレーヌ教会では、敵国だったドイツ軍が廃材を使った十字架を担いで、参加したいって申し出たのを、最初は反対していたんです。でも、敵国であっても同じ平和を望む気持ちは同じだ、ということで受け入れて、大行進にいちばん最後に加わったんですよ。
――懐が深いエピソードですね。
宮澤:今も教会内に飾ってある十字架の中に、ドイツ人たちが担いでいたボロボロの廃材の十字架がひとつだけ残ってるんですよ。中世だけではなくて、現代でもさまざまな境遇の人たちを受け入れられる柔軟な地域なのかな、っていうふうに思ってます。
――フランスだから、ご飯もおいしいですよね?
宮澤:ご飯も本当においしいし、お酒もおいしい。きれいなところだし、最高な場所です。
二見:私は、トルコのイスタンブールです。アラブに留学していた人間なので、やっぱり中東の雰囲気がすごく好きなんですけど、イスタンブールはまさに東西文明の十字路というか、それぞれの要素がすごくミックスされているんですね。アヤソフィアは今、モスクになっちゃいましたけど、私が訪れたときは博物館で。感動したのは、キリスト教のモザイク壁画やイスラム教のカリグラフィーが同じ空間にあることです。イスタンブールがたどってきた歴史を、アヤソフィアだけで体現されているなっていうのを感じました。個人的におすすめの場所です。
――(『世界遺産の歩き方』編集担当に)金子さん、トルコどうでしたか?
金子:実は今年の3月に行ってきたんです。マスクをしている人は1~2割弱で、まぶしいな~って(笑)。アヤソフィアも行きましたけど、前と変わっていて靴を脱いで入ることと、2階のギャラリーには行けなくなってました。
宮田:コロナ禍が明けたら、トルコがいちばん人気出るよね。リラが大暴落しているし。今は円安だから、どこにも行きづらい状況ですけど、トルコは世界遺産も多いしおすすめです。
【後編】は28日(木)に公開予定!3人がおすすめする国内の世界遺産などを紹介します!
宮澤さんがいち押しするフランスや二見さんおすすめの中東の遺跡や町並み、宮田さん推薦のインドやエジプトの世界遺産は、2022年7月21日(木)発売の『世界遺産の歩き方 学んで旅する!すごい世界遺産190選』に掲載されています。「世界遺産検定」によく出題される世界遺産190件をテーマ別に厳選し、最新の世界遺産はもちろん、知っておきたい登録の背景や過去問クイズ、動画なども紹介! 「学んで旅する」最強の一冊です。
【後編】地球の歩き方×世界遺産検定コラボ記念鼎談! 推しの国内世界遺産&コラボ図鑑の注目ポイント
https://news.arukikata.co.jp/column/travel-info/Japan/Kanto/Tokyo/311_142485_1658821899.html?w=311
Text :水野千尋
Photo:渋谷裕理
※当記事は、2022年7月25日現在のものです
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年7月25日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。