キーワードで検索
ドイツとの国境に近いザルツブルク。かつては近郊にある塩鉱の採掘が盛んで、塩の取引で栄えたことから「塩の城」を意味するザルツブルクが都市名になっています。798年には大司教区に昇格し、バチカン市国と並び、カトリック教会の大司教が統治する“国家”として歩んできました。そのため、オーストリアの他の都市とは異なり、ハプスブルク家の影響が少ないことが特徴です。モーツァルトが生まれた音楽の都としても知られています。
まずはザルツブルクのシンボル、ホーエンザルツブルク城塞を訪れてみましょう。街のいたるところから目に入る威風堂々とした外観。1077年にザルツブルク大司教ゲープハルトが築いた後は絶え間なく増改築が行われ、17世紀半ばには今の姿になったと言われています。
ホーエンザルツブルク城塞は有事の際に備えた軍事拠点としての役割が強く、平時において大司教が暮らし、執務を行っていたのはザルツブルク大聖堂前のドーム広場に面したレジテンツだったとされています。それでもホーエンザルツブルク城塞の敷地ほぼ中央に位置する大司教の居室は豪華絢爛。居室をはじめ、戦時のそなえとして設えられた武器庫などが、城塞博物館として公開されています。またガイドツアー(日本語オーディオあり)に参加すると、塔上の見張り台や拷問具の部屋など、当時の激しい権力闘争の痕跡を見学することができます。標高約500メートルの高みにある城塞からはレジテンツをはじめ旧市街の様子が一望でき、街の全景を俯瞰するのにうってつけ。眺望の素晴らしいレストランもあります。
また、新市街にあるミラベル宮殿の庭園から眺める城塞は、たびたびザルツブルクのポスターやガイドブックなどに登場する象徴的な景色です。ミラベル宮殿は大司教ヴォルフ・ディートリッヒが愛人のサロメ・アルトのために建てたもので、火災ののちに現在のクラシック様式に再建されました。被害を免れたマルモアザールという大理石の間は必見。また季節により色とりどりの花が咲き誇る花壇や、ギリシア神話に登場する彫刻が美しい庭園ものんびり散策してみてください。
ザルツブルクと近郊のザルツカンマーグートは、1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』の舞台となった場所が点在していることでも知られています。前述したミラベル庭園には、名曲「ドレミの歌」のシーンの大部分が撮影されました。またゲトライデガッセやレジデンツ広場など、徒歩圏内の随所に撮影地があるので、ザルツブルク旅行の際はぜひ『サウンド・オブ・ミュージック』を観てから訪れてください。
もうひとつ、ザルツブルク中央駅からバスで25分ほどとアクセスが便利な場所にあるのがヘルブルン宮殿です。こちらは大司教マルクス・ジティクスの夏の離宮として17世紀はじめに建てられたもので、突然吹き上がる噴水の仕掛けが来訪客を楽しませています。この宮殿内の公園に、『サウンド・オブ・ミュージック』内でトラップ大佐の長女リーズルが電報配達人のロルフと密会したガゼボ(ガラスの家)が置かれています。もともと、トラップ大佐の邸宅の撮影地であるレオポルヅクロン宮殿(現在はホテルとして営業中)にあったものを後でこちらの庭園に移築したそうですが、ガゼボの前で映画のシーンを思い浮かべ、「もうすぐ17歳」を歌うファンが後を絶たないようです。ほかに旧市街の東側にはマリアが過ごしたノンベルク修道院がありますが、こちらの修道院内部は立ち入り禁止(併設の教会には入れる)となっています。
ほとんどの撮影地は旧市街の徒歩圏内にありますが、個人ではアクセスしづらい撮影地もまとめて巡るのであれば、「サウンド・オブ・ミュージック・ツアー」に参加するのもおすすめ。前述したミラベル宮殿やヘルブルン宮殿に加え、マリアと子供たちが湖でボート遊びをしていたレオポルヅクロン城、そしてザルツブルクから30キロほど離れた町モントゼーにあり、トラップ大佐とマリアの結婚式シーンで登場した聖ミヒャエル教会なども訪れ、ファン垂涎の名シーンが目の前で蘇ります。ちなみに「サウンド・オブ・ミュージック・ツアー」を運営しているパノラマツアーズは、映画の撮影時にロジスティックスを担った会社。その縁で、作品名を掲げたツアー運営の許可を唯一得ています。
ザルツブルクは天才音楽家、モーツァルト誕生の地でもあります。モーツァルトの父、レオポルトは、ザルツブルク大司教の宮廷楽団として活躍。当時、旧市街のメインストリート、ゲトライデガッセの9番地にある建物で暮らしており、1756年1月27日にヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトがこの4階で生まれました。
建物は現在、「モーツァルトの生家」として観光客に人気のスポットに。4階の「出生の部屋」をはじめ、モーツァルトが子供の頃に使っていたバイオリンやクラヴィコード、作曲した楽譜、肖像画など貴重な品々を見学することができます。
1773年に引っ越したマカルト広場の「モーツァルトの住居」、またモーツァルト自身通っていたとされるカフェ・トマセッリ、ビール居酒屋のシュテルンブロイなど、ザルツブルク市内にあるモーツァルトゆかりの地を巡ってみるのもおすすめ。1890年に誕生したザルツブルクの定番みやげ、丸いチョコレート菓子の「モーツァルト・クーゲルン」を購入するのもお忘れなく。
ドイツ国境に近いザルツブルクはビールの製造も盛ん。1492年、コロンブスの新大陸発見と同じ年にザルツブルクで創業したシュティーグルは、麦・ホップ・水のみという伝統的な製法にこだわったオーストリア最大手ビールメーカーです。国内はもとよりヨーロッパ中で愛されるビールですが、その醸造所はいまだにザルツブルクのマックスグラン1カ所のみ。ミュージアムやレストラン、ショップを併設したヨーロッパ最大規模のビール博物館となっており、ピルスナーやヴァイツェン、ペールエールなど試飲も楽しむことができます。
ザルツブルクの名物といえば、スイーツの「ザルツブルガーノッケルン」も忘れてはいけません。粉砂糖がかかったふわふわのスフレのような食感で、ベリーのジャムを添えて食べるのがお約束。アルプスの山々に見立てたというだけあってその外見は大きく見えますが、あっという間に口の中で溶けてしまい、甘すぎることはないので意外にもぺろりと食べられてしまいます。
またB級グルメとして有名なのがカレー風味のホットドッグ「ボスナ」。値段も€3〜4と手頃で、街なかのソーセージスタンドであればどこでもオーダー可能です。ザルツブルクでボスナを食べるなら、おすすめなのがオーストリアにおけるボスナ発祥の店と言われている「バルカン・グリル・ヴァルター」。ゲトライデガッセ33番地の奥まった立地にあるにもかかわらず行列必至の人気店で、パンの焼き加減とソーセージのスパイスの味付けが絶妙。食材がなくなると早めに閉店してしまうので日中早めに行くのがおすすめです。
・アクセス: ウィーンからrailjetで約2時間25分、ドイツのミュンヘンからrailjet特急で約1時間30分。
※当記事は、2022年11月30日現在のものです
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年11月30日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。