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どっちがお得? 乗車券とユーレイルパスの使い分け方!

地球の歩き方ウェブ運営チーム

地球の歩き方ウェブ運営チーム

更新日
2022年12月27日
公開日
2022年12月12日
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ヨーロッパ旅行に欠かせない移動手段のひとつとして、「鉄道」がある。アメリカやオーストラリアなど他の地域とは異なり、各都市間の鉄道網が充実しているのがヨーロッパの特徴である。一見、ヨーロッパの鉄道旅行は、初心者の方には分かりにくいかもしれないが、日本で鉄道を利用したことがある方なら、そんな難しい話ではない。今回はヨーロッパの鉄道乗車券とユーレイルパスなどの鉄道パスについてのメリットとデメリットを解説する。(文/鹿野博規(株式会社ワールドコンパス))

目次

ヨーロッパの列車を利用するには何が必要なのか?

複数の国が陸続きで結ばれるヨーロッパには、国や地域ごとの鉄道会社があり、多くの列車が運行している。しかし、基本的に列車の運賃や料金の構成要素は、次の3つである。これらは日本の鉄道も同じである。様々な乗車券や鉄道パスなどがあるが、どのような乗車券でも3つの構成要素の組み合わせであることを理解しよう。

①乗車運賃
②特急・急行料金
③指定料金(座席および寝台)

①の乗車運賃は、どの列車でも最低限必要なもので近郊列車、普通列車、快速列車は、基本的に乗車運賃のみで利用できる。
②の特急・急行料金は、国内長距離列車であるインターシティInterCity(略称IC)や国際列車であるEuroCity(略称EC)、さらにはICEなどの高速列車を利用する場合に必要な追加料金である。日本で例えるなら、新幹線や特急に該当する列車が対象である。
③の指定料金は、座席や寝台をあらかじめ確保する場合に必要な料金である。全席指定制の列車や夜行列車を利用する場合は、乗車運賃と特急・急行料金のほかに、この座席指定料金や寝台料金が必要となる。指定をするには、乗車日や乗車する列車をあらかじめ決めることになる。

鉄道パスとは何なのか?

鉄道パス=①乗車運賃+②特急・急行料金

ユーレイルパスやスイストラベルパスなどの鉄道パスは、ヨーロッパの鉄道旅行をした方や計画をしたことがある方にとっては、聞いたことがあるだろう。
鉄道パスとは、国鉄もしくはそれに類する鉄道会社の路線で利用できる外国人観光客向けの周遊券のことをいう。日本ではJRの路線で利用できる外国人観光客向けの「ジャパンレールパス」がある。
鉄道パスには、適用範囲国の鉄道会社の①乗車運賃 ②特急・急行料金が含まれている。
ロンドン、アムステルダム、ベルリン、フランクフルト、ミュンヘン、ウィーン、ローマなどでは、空港連絡列車も利用できるので、空港到着時からの移動にも活用できる。
しかし、③指定料金が含まれていないことがほとんどのため、全席指定制の列車や夜行列車を利用する際は、別途、指定料金に該当する「パス割引料金」のチケット購入が必要である。また全席指定制ではない特急列車などの座席指定をしたい場合は、「座席指定券」を別途購入する必要がある。
また近年では、イタリアのイタロ(.italo)、ドイツのフリックストレインなどLCC的な鉄道会社も増えてきており、一部を除いて、これらの民間鉄道会社の列車には利用できない。

包括運賃チケットとは?

包括運賃チケット=①乗車運賃+②特急・急行料金+③指定料金(座席および寝台)

ユーロスター、タリス、TGVなどのヨーロッパの高速列車、フランス、イタリア、スペイン、フィンランドなどの国内路線、LCC系の民間鉄道会社の路線など、現在主流になっている乗車券が「包括運賃チケット」である。
包括運賃チケットは、①乗車運賃 ②特急料金 ③指定料金の3つの運賃料金がひとつになったものである。一体化しているので、航空券と同じくノーマル運賃に該当する「普通料金」「フレキシー料金」から乗車時間帯や申し込みするタイミングなどで設定される割引料金、格安料金など多くの料金帯が設定されている。イギリス国内の格安運賃の「Advance Tickets」やドイツ鉄道の割引運賃「Sparpreis」や格安運賃の「Super Sparpreis」などの乗車券は、③指定料金が含まれていないこともあるが、指定した列車のみで有効な乗車券となるため、他の列車を使用することができない。

割引料金や格安料金は、場合によって普通運賃の半額以下で購入することもできるが、ひとつ注意しなければならないことがある。
割引料金や格安料金は、乗車券購入後の変更や払い戻しができないことが多い。割引運賃の場合は、一定の条件(例えば乗車予定日の7日前までの手続きや変更手数料がかかるなど)で変更や払い戻しができるが、格安運賃の場合は、変更や払い戻しができない。そのため、予約した列車に乗り遅れた場合やスケジュールの変更などで乗車できなかった場合は、すべての運賃料金が一体化しているので、乗車運賃からすべての料金を含めた乗車券を買い直しするが必要である。しかも、割引料金や格安料金は、常に変動する。そのため、乗車日も乗車する列車は同じでも、申し込むタイミングで料金は変動し、乗車日が近くなるほど、値段は高くなっていくのが現状である。乗車日当日での再購入の場合は、「割引料金は無い」と思った方が良いだろう。

鉄道パスと乗車券はどちらがお得なのか?

ユーレイルパスをはじめとする鉄道パスと乗車券がどちらかお得なのかという疑問に対する回答は、旅行する国やどういった鉄道旅行計画にするかどうかによるだろう。

1.鉄道利用が1~2区間の場合
鉄道パスは周遊券である。例えばドイツで利用できるユーレイルジャーマンレイルパスの2等3日間で料金は€201.00(1日あたり約€67.00)である。そのため、以下の区間ぐらいの移動をいないとパスの代金の元は取れない。

●ドイツ国内の事例
ベルリン~フランクフルト(547km):ICE用の乗車券:2等普通運賃 €127.20
フランクフルト~ミュンヘン (409km):ICE用の乗車券:2等普通運賃 €103.80

鉄道利用が1~2区間程度しか利用しないのであれば、包括運賃チケットなどの乗車券の方がお得になる場合が多い。しかし、全席指定制の列車が少なく、鉄道運賃が高いドイツ、イギリスなどの普通運賃との比較の場合は、1区間当たりの移動距離が長距離になる場合は、上記の事例のように、鉄道パスを使用した方が安価になるケースもある。

2.すべての利用する列車を決め打ちする場合
利用する列車をすべて確定して、割引料金や格安料金の乗車券ですべてを組み合わせる場合、価格面で鉄道パスよりも通常乗車券の方が安くなる時がある。しかし、デメリットとして、前項で説明した「乗り遅れ」、「列車遅延により接続できない」、「旅程変更」などで予定していた列車を利用できなかった場合は、乗車券を買いなおす必要が出てくるので、余計に費用が掛かってしまうことがある。日本の鉄道チケットとは異なり、乗車券料金は返金されないケースがほとんどである。また、割引料金や格安料金の乗車券購入の際は、即時での発券となるため、購入後に変更しようという考えはしない方が良い。

3.ある程度の予定を現地で考えたい場合
乗車券のメリットは、利用する列車をすべて決めることで価格が安くなることであるが、旅程の自由さは無い。その反面、鉄道パスのメリットは、適用範囲(国単位)内での①乗車運賃 ②特急料金が含まれているため、範囲内でのルート変更や列車変更の融通がきく。全席指定制の列車が少ないドイツ、スイス、イギリス国内などでは、高速列車も含めて鉄道パスだけで利用できる。そのため座席指定をした列車に乗り遅れたとしても、適用範囲内なら次の列車も利用できる。また宿泊した都市から日帰り旅行を計画した場合でも、本数が多いところであれば、その場の状況に応じて好きな列車を選択できる。フレキシブルさで価格面以上のメリットがあるのが鉄道パスの特長である。

ユーレイルグローバルパスを使用したおかげで回避できた乗車トラブルとひと口メモ

©︎iStock

ユーレイルグローバルパスを使い、以下の移動を計画して、必要な指定券や寝台券を購入していた。

1.ロンドン・セントパンクラス駅→パリ北駅:ユーロスター
2.パリ・モンパルナス駅→イルン:TGV
3.イルン→リスボン:国際夜行列車シュドエクスプレス(※現在運休中)
4.リスボン→バルセロナ:飛行機移動(格安運賃の航空券)

しかし、サマータイムの切り替えに気がつかず、1のユーロスターに乗り遅れた。運よく次のユーロスターの便にチケット変更ができたが、計画していた行程ができなくなった。当時はヨーロッパ鉄道時刻表を持っていたので、代案を調べつつ、以下のルートに変更をした。

A.ロンドン・セントパンクラス駅→パリ北駅:ユーロスター
B.パリ・オステルリッツ駅→バルセロナ・サンツ駅:国際夜行列車エリプソス(※現在は、パリ・リヨン駅発のTGVに置き換え)

2の座席指定券と3の4人部屋寝台券および4の航空券の総計€120程度は、無駄になってしまったが、Bの座席指定券の追加購入で移動ができた。ユーレイルグローバルパスだったため、乗車券から買い直しをせずに、夜行列車の追加料金である€49程度で済んだ。極端な事例かも知れないが、鉄道パスを使っていたメリットを受けることができた例として挙げておきたい。

それぞれのメリット、デメリットを見極めた上でチケットを購入しよう

このように乗車券と鉄道パスには、メリットとデメリットがある。ヨーロッパの乗車券や鉄道パスを検討する際には、どのような旅行をしたいのかを考えたうえで購入した方が良いだろう。ヨーロッパの鉄道は、日本と比べて遅延するケースが多い。逆に時間通りで到着する方が少ないと思った方が良いだろう。またターミナル駅での乗り換えも、思いのほか時間がかかることもある(ドイツのミュンヘン中央駅などの大きなターミナル駅では、ホームによっては、乗り換えだけで10分以上かかることも)。
想定外のことも多くあると思うので、状況を考えながら、自分ができる範囲で旅程を組んだ方が良いだろう。そのために価格面を重視するのが、フレキシブルな部分を重視するのかで、鉄道パスと乗車券はどちらがお得なのかが決まってくる。価格面を重視するなら、できる限り余裕を持った行程にしておこう、ということだ。

ヨーロッパの鉄道乗車券とパスとの料金を比較してみよう

ルート例)アムステルダム→フランクフルト→ミュンヘン→ザルツブルク→ウィーン

1)鉄道パス
ユーレイルグローバルパス 2等4日分(フレキシータイプ)大人1名:€258.00
鉄道パスには、各列車の座席指定料金は含まれません。

2)乗車券(2等格安運賃):€135.60
アムステルダム→フランクフルト(ICE利用) :€79.90
フランクフルト→ミュンヘン(ICE利用) :€17.90
ミュンヘン→ザルツブルグ(RJX利用) :€17.90
ザルツブルク→ウィーン(RJ利用) :€19.90

列車の変更ができない格安料金での算出。座席指定料金は含まれておりません。2022年12月23日に2023年5月31日の午前10時~11時台発の直通列車で検索した場合の料金です。格安運賃は常に変動するので、あくまで目安として参照ください。

3)乗車券(2等普通運賃):€337.40
アムステルダム→フランクフルト(ICE利用) :€324.90
アムステルダム→フランクフルト(ICE利用) :€131.30
フランクフルト→ミュンヘン(ICE利用) :€103.00
ミュンヘン→ザルツブルグ(RJX利用) :€37.20
ザルツブルク→ウィーン(RJ利用) :€53.40

列車の変更ができるフレキシー料金での算出。座席指定料金は含まれておりません。2022年12月23日に2023年5月31日の午前10~11時台発の直通列車で検索した場合の料金です。普通運賃も変動するので、あくまで目安として参照ください。

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