キーワードで検索
ユーレイルパスとは、ヨーロッパの鉄道を制限なく自由に利用できるお得な周遊券で、1959年に発売されて以来、60年以上の長い歴史を誇る。発売当初は13カ国のみだった利用可能国は、現在は、「ユーレイルグローバルパス」との名称となり、33カ国にまで拡大し、文字通りヨーロッパ全域をカバーする鉄道周遊券となった。このユーレイルパスだが、2020年からのここ2年間の間で大きな変化があった。それまで使われてきた紙で発行したパスとは別に、スマートフォンやiPadなどのデバイスに組み込む「モバイルパス」形態が登場した。しかも、従来の紙タイプのパスは廃止する方向で、今後は「モバイルパス」のみの販売となっていくようだ。紙タイプのパスに慣れている人にとって、モバイルパスはどのように使うのか、紙のパスと比較して使い勝手の面で問題はないのか、いささか不安に感じる人もいるのではないだろうか。そこで今回は、今後の主流となっていくであろう、モバイルパスの設定から検札するまでの流れについてご紹介しよう。(文/橋爪 智之(鉄道ジャーナリスト)、鹿野博規(株式会社ワールドコンパス))
目次
ユーレイルモバイルパスを使うための手順としては、以下のとおりである。
「Eurail / Interrail Rail Planner」をインストール
旅行代理店やユーレイルの販売サイトで「ユーレイルグローバルパス」やユーレイルジャーマンレイルパスなどの「ユーレイル1ヵ国パス」を購入すると、鉄道パスの番号(アルファベットを含む6ケタのコード)が購入時に登録したメールアドレスに送られてくる。この番号はモバイルパスの登録に必要となるので、無くさないようにしておこう。次に自分のスマートフォンもしくはデバイスにユーレイル社の専用アプリ「Eurail / Interrail Rail Planner」をインストールしよう。インストール作業にはインターネット環境が必要となるため、インターネットが使える場所で事前に用意しておく必要がある。
購入した鉄道パスの登録(Add a Pass)
まず、どのパスを持っているか聞かれる。日本在住であればユーレイルパスを購入することになるので、Eurail Passを選択する。ヨーロッパ在住の方は、インターレイルパス Inter Rail Passを選択する。次にモバイルパス(mobile pass)か従来の紙パス(paper pass)かを聞かれるので、ここはもちろんモバイルパスを選択しよう。次に名前とパスの番号を聞かれる。名前は購入時に登録したお名前(パスポートと同じローマ字)の苗字(Last Name)とパス番号(アルファベットを含む6ケタのコード)を入力する。
次にConnect a tripという画面が出て、Trip nameを聞かれる。何のことかと思うが、これは今回の利用する旅を識別するためのもので、入力する文字は「2022 summer」や「my travel europe」など、思いついた旅行名を自由に入れて構わない。もし1年のうちに何度もパスを買って使う予定があるのなら、日付を入力しておくと記録として残すこともできる。
旅行名を入力してConnectボタンを押すと、パスと旅の情報が紐付けされた(Connected)と表示されるはずだ。
鉄道パスをアクティベーション(有効化)する
パスの登録が終わったら、鉄道パスをアクティベート(有効化)する画面へと移る。このアクティベートが、旧来の紙パスのヴァリデート(スタンプを捺して有効化する作業)に相当するため、入力する情報を間違えないように気を付けよう。入力するのは、パスポート番号と利用開始日で、入力が終わると最後に「Review your detail」という確認画面が出てくる。内容を確認して、問題が無ければ「Activate this pass」をクリックしよう。これでアクティベートの作業は完了し、パスを利用することが可能となる。(もう一度、旅程にミスがないか確認しよう!)
鉄道パスで利用する列車の入力(トラベルカレンダー入力)
ユーレイルモバイルパスを利用する際に、必要な作業として「トラベルカレンダー」の入力がある。モバイルパスは、以下の構成となっている。
①Planner乗車日、出発駅と到着駅、時刻を入力して列車のスケジュールを検索するページ。トラベルカレンダーに入力する列車もここで検索を行う。
②Station 駅単位での列車発着スケジュール検索できるページ。
③My TripPlannerやStationで検索をして、セーブした列車データが表示される。
④My Pass鉄道パスの本体になるページ。トラベルカレンダーのQRコード表示は、ここから行う
⑤Moreユーレイルパスに関する情報や予約についての情報が掲載されている。
「トラベルカレンダー入力」とは、鉄道パスで利用する列車をモバイルパスに登録することで、従来の紙タイプのパスにおけるチケットカバーに記載義務があったトラベルヒストリー(乗車記録)に相当する。フレキシータイプのパスの場合は、利用日入力と同じ行為となる。そのため、「トラベルカレンダー入力」をせずに鉄道利用した場合は、罰金の対象となるので、注意が必要である。
日付の入力は、数字(日数)の書いている丸を選択して、「Use travel day」をクリックするだけ。クリックすると、本当に今日使うかどうかの確認メッセージが表示される。OKなら、もちろんそのままUseボタンをクリック、これで乗車日の入力は完了となる。
続いて乗車する列車を入力しよう。これは従来の紙パスにおけるトラベルヒストリー(乗車記録)に相当するもので、これを入力しなければ列車に乗車することはできない。紙パスと異なる点は、すべての情報を手作業で入力するのではなく、区間を入力すると時刻表が表示され、自分が乗りたい列車を選択するだけ。選択後、「Add to pass」をクリックすればそれで入力は完了となる。入力完了後、急な行先の変更などでデータを変更する必要が生じた場合は、もう一度検索して再入力し、元の要らなくなったデータは削除すれば問題ない。
注意点として、日付の入力にはインターネット環境が必要になること。乗車当日にホテルや駅など、Wi-Fi環境がある場所で必ず事前に日付入力を済ませておくようにしよう。なお、時刻検索はアプリ内にデータが入っているため、とりあえずWi-Fi環境になくても検索することは可能だ。このデータはWi-Fi環境にデバイスがあるときに、常に更新されている。しかし、電波がない場所では最新ではないデータが使われることもあり、乗りたい列車が検索に出てこない場合もあるので、この場合は前後の列車を選択するなどして乗ってしまい、検札時に車掌へ事情を説明しよう。(未登録のまま乗らないように注意しよう)
車内での検札
実際に乗車し、検札が来たらモバイルパスを立ち上げ、QRコードを表示する画面を車掌へ見せる。車掌はそのQRコードから情報を抜き出し、有効なパスかどうかをチェックするという仕組みだ。もちろん、紙タイプのパスと同様にパスポートとの照合を行うことがあるので、車掌に提示を求められたらパスポートを見せなければならない。
注意点として、スマートフォンの充電は前日にしっかり済ませ、充電量が減ってきたら早めに充電をしておくことをおすすめしたい。多くの人は、スマートフォンをカメラ代わりに使う人も増えており、また移動中にネットを閲覧したりなど、それだけバッテリーを消費する機会が増えている。もちろん、頻繁に列車に乗車するときは、検札のたびにバッテリーを消費することになる。途中で充電が切れて、スマートフォンが起動できなくなれば、無賃乗車という扱いになり高額の罰金を請求される可能性もあるので、十分注意したいところだ。
座席予約が必要な全席指定制の列車については紙タイプのパスと同じく、事前に予約が必要となるので、必ず乗車前に予約をしよう。
残念ながら、モバイルパスでもウェブ上で予約して、座席予約券とパスの紐付けをするという機能は今のところないため、乗車前に駅や鉄道会社のホームページで購入する必要がある。ただし、コロナ禍以降、フランスのSNCF、イタリアのトレニタリアなど鉄道会社のホームページで鉄道パス用の座席指定券や寝台券が購入できない状況である。また、現地の券売機でレイルパスのための座席予約券や寝台券だけを購入できるものは少ないので、駅窓口で駅員から購入しよう。
混雑している主要都市の駅では、長時間待たされることもあるので、時間には余裕を持って、なるべく早めに予約をしておきたい。もちろん混雑する人気列車の場合、当日には満席で予約できない可能性もあるので、どうしても旅程で外せない区間がある場合は日本の旅行代理店などで予約を済ませるなど、早めに手配をしておくことを強くおすすめする。
次回は、iPhoneなどのiOSでのユーレイルアプリのインストールの注意点や鉄道パスの利用開始日(アクティベーション)や「トラベルカレンダー」を変更する方法などユーレイルモバイルパスの応用編について解説する。