【沖縄&北海道のおすすめスポット】インバウンドガイドが教える地元のおすすめ6選
2022.8.10
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日本各地でガイドを採用・育成し、訪日外国人向けのツアーや体験を提供しているマジカルトリップ。そのツアーの最中には、日本に住んでいる私たちには、当たり前すぎて考えたこともなかったような質問が、外国人から飛び交います。今回は、マジカルトリップのガイドが「訪日外国人からよく受ける9の質問」とその回答例を『今こそ学びたい日本のこと』の著者・蜂谷さんが紹介。
前半は「習慣・文化」をテーマに、後半は「信仰・あなた自身への質問」をテーマにお届けします。
マジカルトリップのツアーでは、レストランに外国人を案内することが多いため、「いただきます」や「ご馳走さま」の説明をよく行います。日本では当たり前の光景ですが、実は「いただきます」と同じ意味をもつ外国語はなく、食前になにかを唱える文化は不思議な行為と感じられることもあります。
「いただきます」とは感謝を表す言葉で、日本人は食事をする時に周りに人がいなかったとしても呟くくらい習慣化しています。
「いただき / いただく」とは「もらう/食べる」の謙譲語で、「ます」もリスペクトを表す言葉です。日本人は、食事をする前に料理を作ってくれた人、運んでくれた人、食材を取ったり育てたりしてくれた人など食事に関わってくれた人、そして食材である動物や魚、野菜などの命そのものに感謝を伝えるため「いただきます」と言います。
2300年ほど前、稲作が日本に伝えられて以来、日本ではお米中心の食文化となり、仏教伝来から明治維新までの間は肉食禁止令の影響で、魚や野菜中心の食生活をしていました。その主軸となる漁業と農業は、どちらも収穫量や出来が天候や自然に左右されるため、日本人は古くから自然との共存を目指し、お祭りや儀式では神/自然に祈りを捧げ、五穀豊穣や大漁祈願などをしてきました。太陽神である天照大神や風神雷神などの神々の種類からも、自然が神格化されていることがわかると思います。「いただきます」という自然への感謝を伝える言葉も、また神道のそういった思想が関わっているのだと思います(ちなみに仏教も多く関わっています)。
多くの人が行き交う街なかでも落ちているゴミが少なく、その上ゴミ箱の少ない日本に対して、驚く外国人は多いです。きれいに保たれている公共のトイレや無数に設置される自動販売機の多さからも、海外の人は日本のきれいさや治安のよさを感じとります(外国では、自動販売機を設置すると盗難に遭うことが多いため、施設内以外にはあまり設置されていません)。
日本人は小さな頃から「箸の持ち方」「はさみの渡し方」など多くの礼儀を教わりますが、「ゴミはゴミ箱に捨てる / ポイ捨てしない」ことも小さな頃から言い聞かせられます。「他人に迷惑をかけてはいけません」という教えが一般的なので、街なかのポイ捨てはもちろん、トイレなどみんなが使う共有スペースもきれいに使うよう心がける人が多いです。
上記のような、日本の教育論やモラル的な観点からも回答できると思いますし、①で触れた神道の教えと関連づけて回答するのもよいと思います。
例えば神道では「気枯れ」とも書く「穢れ」という思想があります。穢れとは「清まっていない不浄の状態」を指しますが、穢れの状態であると、物質や精神は腐敗・腐食すると信じられるため、精神も身体も身の回りも風通しがよく、きれいで清まった状態がよいと神道ではされています。お相撲さんが試合の前に塩を投げますが、あの行為も土俵を清める行為であり、日本人のそういった思想が日本の街のきれいさにも関係していると思います。
世界的に「日本=侍」というイメージは非常に強く、現在でも「侍はいないのか?」という質問を受けることがあります。そういった質問には、侍の定義や歴史を伝えるのがよいです。
残念ながら、現代の日本に侍はいません。侍は800年ほど前から日本の政治の中心を担っていましたが、150年ほど前に終わりを迎えました。
侍は刀を二本差し、街なかを歩いていましたが、150年ほど前、武家政権から明治政府に実権が変わったタイミングで廃刀令が出され、刀を外にもち出すのが禁止となり、侍という身分はなくなってしまいました(その時代背景をテーマにした映画が『ラスト・サムライ』です)。
また漫画・アニメ『るろうに剣心』もアメリカやスペイン、ポルトガル、タイなど多くの国で放送されていて、明治維新について詳しい外国人も実は結構多いのです。「幕末」と呼ばれている日本の歴史的転換期は、『龍馬伝』『西郷どん』など多く大河ドラマ化されているので、エンタメ作品などから侍について学んでみるのもおすすめですよ。
ほかに侍に関するキーワードとして「武士道」「切腹」「将軍」などについても質問を受けることが多いので、事前に意味を調べておくとよいと思います。
外国人に人気の観光地・京都のなかでも、根強い人気なのが、「Geisha」で親しまれる舞妓さんや芸妓さんです。今でも京都を案内していると、芸者さんとすれ違うことがありますが、そんなときにも説明できるように基本的な違いをおさえておくとよいです。
芸妓と舞妓の違いは、「一人前であるか、修行の身であるか」です。衣装の色や柄、髪飾り、小物から履き物まで特徴が異なります。
舞妓は15〜20歳まで置屋に住み込み、昼は作法を学びながら夜はお座敷とよばれる料理店でゲストをもてなします。舞妓は、若々しさやかわいらしさを強調する華やかな装いで、対照的に、一人前を意味する芸妓は、女性の魅力を引き立てるシンプルで洗練された装いをしているのが特徴です。
上記の装いの違いを知っていれば、通り過ぎた芸者さんが、舞妓さんなのか芸妓さんなのかがすぐにわかるようになりますよね。そういった情報をさっと伝えられると、喜ばれますよ! 日本では禅の思想もあり、時を重ねるごとに無駄を省きシンプルに洗練させていく美意識がありますが、芸者の世界にも影響しているのだと思います。
今回は「訪日外国人からよくある9の質問」のうち4つを紹介しましたが、急に聞かれるとパッと答えられない質問もあったかと思います。質問に対して「This is a Japanese culture!」などと単純に答えるのではなく、「なぜ」「どういった理由」で日本人がそうしているのかを伝えると、より理解が深まりますよ。後半の記事では、「信仰・あなた自身への質問」をテーマにお送りします。お楽しみに!
海外旅行の「地球の歩き方」と訪日旅行者向けツアーの「マジカルトリップ」がタッグを組みおくる、日本人のためのまったく新しい日本案内書が登場!エンタメ、食、歴史、信仰などのテーマを通して、日本が世界から愛される理由、魅力の正体を大解剖します。
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※当記事は、2022年12月26日現在のものです
TEXT: 蜂谷翔音
PHOTO: istock