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クリスマスといえば日本ではデコレーションケーキが一般的ですが、世界ではどんなお菓子が食べられているのでしょう? 地球の歩き方「旅の図鑑シリーズ」に加わった『世界のお菓子図鑑』では、各国の祝祭菓子を特集! 今回はその中からクリスマスにまつわるお菓子を紹介します。今年のクリスマスは、どの国に“旅”する?
キリスト教徒にとってクリスマスはイースターと並んで一年で最も大切な日。イエス・キリストの誕生に感謝して教会の礼拝に参加したり、家族や親戚が一堂に会してごちそうをいただきます。欧米諸国では11月末になると広場にクリスマスマーケットが登場したり、道路や建物がイルミネーションで飾られたりと、街はクリスマスムード一色に。アドベント(待降節)と呼ばれるクリスマスイブまでの約4週間、人々は一年で最も楽しみにしている祝日に向けて、皆で楽しみながら徐々に気分を盛り上げていきます。
最近、日本でも見かけるアドベントカレンダーはクリスマスを迎える期間に欠かせないグッズのひとつ。クリスマスまでの日数をカウントダウンするためのカレンダーで、12月24日までの日付けが付いた窓やボックスを毎日ひとつずつ開けていきます。中にはチョコレートやキャンディなどのお菓子、小さなおもちゃなどが入っていて、今日は何が入っているかな?と毎日わくわくしながら開けるのが楽しみ! 既製品でなく、手作りしたものをプレゼントして楽しむ人もいます。
ドイツで古くから親しまれているシュトレンは、バターをふんだんに練り込んだ発酵生地にマジパンや洋酒につけたドライフルーツ、アーモンドなどのナッツが入った菓子パン。どっしりとした食感が特徴で、表面には粉砂糖がたっぷりと振りかけられています。日持ちするうえ、熟成が進むことで風味・味わいが少しずつ変わっていくため、ドイツではアドベント期間中、毎日少しずつスライスして食べながらクリスマスの到来を待ちわびます。
シュトレン発祥の都市ドレスデンでは毎年、アドベント期間中にシュトレン祭が開かれ、4000㎏近くにも及ぶ巨大シュトレンがお目見え! 馬車にのせられて音楽隊とともに街なかをパレードし、最後は集まった人々に一切れずつ振る舞われます。もともとは中世時代、この地域を治めていた王が自身の強さと権威を見せつけるため巨大シュトレンを作らせたのが始まりだそうで、今ではドレスデンのクリスマスマーケットを彩る冬の風物詩となっています。
イギリスでクリスマスディナーを締めくくるデザートとして欠かせないのが、クリスマス・プディング。パン粉、牛(羊)脂、卵、糖蜜にブランデーに漬けたドライフルーツやナッツをたっぷりと混ぜ、スパイス、柑橘類の皮、黒ビールやラム酒などを加えてじっくり蒸したお菓子で、食べ応えのある甘くて濃厚な味わいが特徴。現地では、食べる前にプディング全体に少し温めたブランデーをかけ、火をともしてから食べるのが昔ながらの慣習です。
クリスマスの定番といえば、ミンス・パイも欠かせません。手の平サイズの小さなパイの中に詰められているのは、ブランデーにドライフルーツやスパイスを漬け込んだ「ミンスミート」と呼ばれるフィリング。かつてはドライフルーツなどのほかに牛や羊などのひき肉も入っていたため、甘いスイーツに変化した現在でもこう呼ばれているのだとか。この甘酸っぱいお菓子はサンタクロースもお気に入りとのことで、イブの夜には暖炉の前にミンス・パイを置いておく習慣があります。
イタリアでは12月が近づくとスーパーなどに山積みにされる伝統菓子、パネットーネとパンドーロ。ドイツのシュトレン同様、クリスマスまでのアドベント期間に毎日少しずつ切って食べます。最近、日本でも見かけるようになったパネットーネはミラノ発祥。バターと卵をたっぷり使った生地にパネットーネ種という天然酵母を加え、何度も発酵を繰り返してから焼いたもので、なかにはラム酒に漬けたドライフルーツや柑橘類の皮などが入っています。
一方、イタリア語で「黄金のパン」を意味するパンドーロは、ヴェローナの名物。卵、ハチミツをたっぷりと使ったカステラのようなスポンジ生地で、ふんわりしっとりとした食感。表面には通常、バニラ風味の粉砂糖がまぶしてあります。真上から見ると星のようなギザギザになっていて、その形状はまるで雪を被った山かクリスマスツリーのよう。アドベント期間には朝食やランチ代わりに食べる人もいるほど、イタリアでは定番のクリスマス菓子です。
日本でもよく見かけるブッシュ・ド・ノエルは、フランスの定番クリスマスケーキ。フランス語で「クリスマスの丸太(薪)」を意味するように、ロールケーキにチョコレートクリームを塗って丸太に見立て、表面にフォークなどで木の模様をつけたものが伝統的なスタイルです。なぜ“丸太”なのかについては諸説ありますが、キリストの誕生を祝って夜通し薪を燃やし続けたからとも、薪を燃やして翌年の「無病息災」を願う北欧の「ユール(冬至祭)」に由来するともいわれています。
ブッシュ・ド・ノエルといってもさまざまなバリエーションがあり、ロールしたスポンジケーキの代わりにムースやアイスクリームを使ったものやマジパン、マカロン、メレンゲなどでデコレーションしたものも。近年は、定番の茶色の“丸太”以外にも、赤や緑など、さまざまな色合いのものが登場。クリスマス時期になるとパティスリーやスーパーなどに色とりどりのブッシュ・ド・ノエルが並び、クリスマス気分を盛り上げています。
クリスマス=ケーキのイメージが強いですが、キリスト教圏ではクッキーも定番。ドイツやオーストリアのクリスマスマーケットには、クリスマスツリーのオーナメントとしても人気のクリスマスクッキー(ジンジャークッキーにアイシングなどを施したもの)がずらりと並びます。スウェーデンではパッパーカーカ、フィンランドではピパルカックと呼ばれ、北欧の国々でも定番のクリスマス菓子。ジンジャー(ショウガ)以外にもクローブやカルダモン、シナモンなど、さまざまなスパイスが使われているのが特徴です。
チェコではクリスマスに皆で大量のクッキーを食べる習慣があり、12月になるとどの家庭でもクッキー作りが始まります。なかにはひとりで数十種類を焼く人も。この時期が近付くと、今年はどんなクッキーを焼く予定なのか、どれだけの種類を焼くのかが話題になることも多いのだそう。数えきれないほどのレシピが存在するといわれるチェコのクリスマスクッキーですが、なかでも有名なのがペルニーク。シナモン、アニス、フェンネルなどさまざまなスパイスが入ったクッキーで、ペルニーク用スパイスミックスというものも売られています。
クリスマスシーズンになるとショーウインドーやショッピングセンターなどに現れ、冬の風物詩となっているヘクセンハウス。ドイツ語で「魔女の家」を意味するように、あの有名なグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』に登場する“お菓子の家”を模して作られるようになったミニチュアサイズの食べられる家のことです。1812年に『グリム童話集』が出版されたのを機にドイツで広まり、今では欧米を中心に世界の多くの人々に親しまれています。
ドイツ語圏ではレープクーヘンハウス、英語圏ではジンジャーブレッドハウスとも呼ばれるように、お菓子の家の土台となっているのはクリスマスシーズンによく食べられるレープクーヘン(ドライフルーツ、ナッツ、スパイスで作るドイツのクッキー)やジンジャーブレッド(ジンジャー入りのクッキー)。表面にはアイシングなどが施され、チョコレートやキャンディ、グミなど、さまざまなお菓子がパーツとなって屋根や窓などを作り出しています。
デコレーションケーキ以外にも、シュトレンやブッシュ・ド・ノエルなど、最近ではさまざまな国のクリスマススイーツであふれる日本。でも、世界にはまだまだ知られざる“おいしい”クリスマススイーツが存在しています。大好評の「旅の図鑑シリーズ」から登場した『世界のお菓子図鑑』では、そんな祝祭菓子を多数掲載! 歴史的背景や文化、各国の慣習についても解説しています。誰をも幸せ気分にしてくれるお菓子とともに、世界各国のクリスマスをぜひ体感してみてください!
W25 世界のお菓子図鑑
113の国と地域&日本47都道府県のローカルおやつを食の雑学とともに解説
旅の図鑑
2022/12/15発売読めば必ず食べたくなる世界と日本のスイーツ&スナック大集合!各地で愛されるお菓子をとおして歴史や文化を学ぼう
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※当記事は、2022年12月18日現在のものです
TEXT: 『地球の歩き方 W25 世界のお菓子図鑑』編集担当 竹内あや
PHOTO: iStock
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