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沖縄発、イタリア・フランス行き?「星のや沖縄」と「星のや竹富島」で味わう感動の食体験!

伊澤慶一

伊澤慶一

トラベルエディター

更新日
2023年6月27日
公開日
2023年3月2日
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沖縄県には日本で唯一、ふたつの「星のや」が存在。星野リゾートの最高峰ブランドだけあって、料理長が腕を振るう施設内のダイニングでは至極のディナーが味わえます。コンセプトは、星のや沖縄が「琉球シチリアーナ」、星のや竹富島が「琉球ヌーヴェル」(季節により「島テロワール」)。伝統的な沖縄食材とヨーロッパの料理法が出合うことで生まれた、感動の食体験をご紹介します!

シチリア料理の技法が生んだ星のや沖縄の琉球シチリアーナ

宮廷料理「東道盆(とぅんだーぶん)」に見立てた器に、9種の小さな前菜を盛り合わせた「ストゥッツィキーニ」。器は沖縄の大学で陶芸を学んだ小孫哲太郎氏によるオリジナル作品で、蓋の表にはシチリアの街並みや沖縄の海・太陽が描かれている。

2020年7月に沖縄県読谷村に誕生した星のや沖縄。こちらのメインダイニングで提供しているのは、沖縄特有の食材をシチリア料理の技法で仕上げた「琉球シチリアーナ」です。「なぜシチリア?」と思う方もいらっしゃると思いますが、実は沖縄とシチリア島には共通点がたくさん。まず、どちらも本土から離れており、地理的に他地域からさまざまな影響を受け、独自の料理文化を築いたという点が挙げられます。また、沖縄とシチリアは美しい海と温暖な気候に恵まれ、新鮮な魚介や柑橘を食材にしている点も類似。シチリア料理のように、シンプルに素材の旨みを生かしつつ、温暖な気候に合う軽やかな味わい、そして沖縄食材のもつ味わいや食感をアクセントにしたのが「琉球シチリアーナ」なのです。

例えば、冷前菜の「車海老とカリフラワー」では、魚介のスープを凝縮したジュレに、カリフラワーのピュレ、さらに沖縄らしく柑橘「タンカン」のピュレを合わせ、キャビアのように輝く「海ぶどう」をトッピング。プチプチとした食感がアクセントになり、琉球シチリアーナの幸先よいスタートを実感することでしょう。また、パスタの「トマトの冷製カッペリーニ」では、秋から冬にかけて沖縄で旬を迎えるトマトを使用。冬でも比較的暖かい沖縄だからこそ冷製パスタで提供し、爽やかな酸味と甘味を届けてくれます。

見た目で一番楽しませてくれるのは、琉球王朝時代に宮廷料理で使われていた東道盆(とぅんだーぶん)から着想を得た、前菜の盛り合わせ「ストゥッツィキーニ」でしょう。シークヮーサー風味のアランチーニや、パパイヤシリシリボッタルガ(シリシリとは食材を細切りして炒めあえる沖縄料理)など、琉球シチリアーナを体現したひと口サイズ料理が9品、まるで宝石のように散りばめられています。ディナーコースは全9品(こちらで紹介しているのは2023年2月28日までの秋・冬メニュー)、すべて紹介するとネタバレになってしまうのでこのへんで控えておきますが、食材や味付けのアイデア、そして器のチョイスなど、終始驚きと笑顔に満ちた感動のディナータイムとなりました。

ここで付け加えておきたいのが、ワインの充実ぶり。南イタリア産を中心に90種類以上がオンリストされており、そこからさらにソムリエがペアリングコースを厳選してくれるのですが、乾杯からデザートまでなんとその数、7種類!そのセレクトも絶妙で、泡・白・ロゼ・赤のような定番の流れではなく、先ほど紹介した序盤の「トマトの冷製カッペリーニ」から軽めの赤ワインであるイタリア・カンパーニャの自然派「トッルンピーゾ カンリーベロ」、9種の前菜にはマルチに合うギリシャのロゼ「イエア・ワインズ アギオルギティコ」、メインの牛フィレには芳しい香りと長い余韻が楽しめる赤ワイン「コーレム・アルジオラス 2010」など、実に豊富な引き出しの中からマリアージュを楽しませてくれます。沖縄にいながら、シチリア、さらには南ヨーロッパ中を旅しているかのような、とても幸せな気分に酔わせていただきました。

天井高5mのダイニング。海と砂浜を連想させる内装で、壁にはシルバーの塗料で海を泳ぐ魚や水面の光を表現。あえてオーシャンビューの造りにせず、目の前のテーブルに意識が向く内装になっている。
小枝のようなパスタ「スーチカラグーとピスタチオソースのフジアーテ」。塩漬けの豚バラ肉と、サルディーニャ地方伝統の熟成白ワイン「ヴェルナッチャ・ディ・オリスターノ」が相性抜群!
沖縄の高級魚を昆布出汁で蒸し上げた「アカマチのヴァポーレ雑穀のリゾット」。シチリアのレモンやバジル、オリーブなどをモチーフにしたカラフルでポップな器は栢野紀文氏の作品。
メインは炭火で焼き上げた牛ヒレ肉。シチリアの万能ソース「サルモリッリオソース」はレモンの代わりにシークヮーサーで仕立て、島人参や田芋、山東菜といった沖縄で馴染みのある野菜を添えた。
プリモ・ドルチェ「ジーマーミとマンゴーのグラニータ」の次に、メインのドルチェ「プロフィットロール」(写真上)が登場。小さなシューの上に置かれているのは、パイナップル&タンカンのソースを閉じ込めたゼリー。

気兼ねなく部屋食を楽しめるギャザリングサービスも人気

星のや沖縄の客室では「土間ダイニング」と呼ばれるスペースに大きなダイニングテーブルが置かれ、インルームでの朝食や夕食を快適に楽しめる。遠浅の海岸線の眺めは素晴らしく、特に目の前に沈んでいくサンセットは絶景だ。

また星のや沖縄では、各部屋に大きなダイニングテーブルと冷蔵庫、オーブンレンジが備え付けられているのですが、そんな客室でゆっくりと自分のペースで温かい部屋食を楽しめるのが「ギャザリングサービス」です。

シェフが下ごしらえした本格的な料理を部屋の冷蔵庫に届けてくれ、オーブンレンジやIH調理器などで5〜30分程度、どれも簡単に仕上げるだけで出来立ての味わいを楽しむことができます。セットメニュー、アラカルト、どちらでも注文でき、「海鮮しゃぶしゃぶ鍋(2名分より注文可)」のような本格的なものから、「3種の貝の泡盛蒸し」、「スペアリブのトロピカル煮込み」、「豆腐ようの香るチーズフォンデュ」、「煮込みソーキそば」など、バリエーション豊かな沖縄料理が取り揃えられています。

またダイニングでの朝食は、沖縄料理を少しずつ楽しめる「琉球朝食」か、シチリアの郷土料理オレンジのサラダや卵料理などの「シチリア朝食」を選択可能。部屋でいただく場合は、通常のインルームダイニング(和洋2種類あり)のほか、季節によって南国ならではのフルーツを堪能できる「みーくふぁやー果実朝食」や、旬の魚を中心に海の恵みを堪能できる「いまいゆ朝食」など、朝からぜいたくなメニューも楽しめます。

広々としたダイニングテーブルの上で、全室オーシャンフロント&サンセットビューを満喫しながらいただくインルームダイニング。一般的に想像するホテルの部屋食以上の感動と価値があり、1泊しかしない場合はダイニングの琉球シチリアーナとどちらにするか、非常に悩ましいところです(笑)。

ギャザリングサービスは当日の16時までに予約。鍋料理だけでも「海鮮しゃぶしゃぶ鍋」「和牛のしゃぶしゃぶ」「豚のつゆしゃぶ」3種類を用意。IH調理器も部屋に運んできてくれる。
前菜からメインの和洋食、さらに中華料理や小鉢料理、デザートまで、約40種のメニューが揃うギャザリングサービス。小さなお子様連れでも気兼ねなく楽しめる。
沖縄の方言で「とれたての魚」を意味する「いまいゆ朝食」。本日の魚や車海老、セーイカ、ツブ貝、ハマグリなど、近くの港で料理長が選りすぐった食材をマース煮でいただく1日1組限定の朝食メニュー。
(左上)水平線に溶け込むインフィニティプール。(右上)ベッドルームの壁紙は琉球紅型。(左下)沖縄の深海をイメージしたレセプション。(右下)施設を囲むグスクウォール。

伝統のフランス料理で仕上げた星のや竹富島の琉球ヌーヴェル

星のや竹富島のダイニングでいただくオリジナルフレンチ。陶芸家・大嶺實清氏のペルシャブルーの大皿など、鮮やかな沖縄のやちむんたちが美食のコース料理を引き立てる。

さて、続いて紹介するのは星のや竹富島です。石垣島からフェリーで10分ほどの竹富島は、サンゴ礁が隆起してできた周囲9.2kmほどの小さな島。沖縄の原風景が残ると言われており、島内では独自の伝統文化と景観の美しい3つの集落が大切に保全されています。星のや竹富島の客室群は、島の伝統家屋や集落設計を見事に踏襲し、まるで4番目の集落かのような佇まい。ゲストは一棟ずつ離れになった琉球赤瓦の客室で、島民のように滞在できるのが魅力です。

敷地の中央部には「集いの館」とダイニングがあり、こちらはオーセンティックなフレンチの技法で沖縄食材の魅力を引き出すディナーになっています。3月下旬〜11月下旬までの間は「琉球ヌーヴェル」という名前で、島で親しまれる野菜やハーブなどの伝統的な食材、豊かな海産物などをふんだんに使ったオリジナルフレンチを提供。「ヌーヴェル」とはフランス語で「新しいもの」を意味し、「いわゆる沖縄料理で連想するイメージをいい意味で裏切りたい」という料理長の思いが込められています。

そして12月〜3月中旬までの間は、さらにこのオリジナルフレンチを進化させた「島テロワール」が登場。フランス語で食材が育つための環境(天候・土地・人・歴史・文化など)を意味する「テロワール」。竹富島は年間平均気温が24℃と温暖な気候で、秋に植えて冬に収穫する芋が一番おいしかったり、周辺の海で獲れる車海老は特に冬場身が引き締まっていたり、本州とは違う竹富島ならではの旬のサイクルがあり、そんな冬ならではのテロワールが感じられる季節限定のコースメニューになっています。

今回取材して紹介するのは「島テロワール」。例えばアミューズの「ガザミと島豆腐のクープ」は、マングローブの生息するワタリガニの一種、ガザミをタルタル状にした上に島豆腐のムースを重ね、上に長命草のソースをかけて閉じ込めた一品。沖縄の食材が層のように積み重なり、ガラスの器越しに見る断面は崩すのがもったいないくらいの美しさですが、ソースからガザミまでをスプーンで同時にすくって味覚の共演を楽しんでみてください。

他にも車海老や高級イカ「クブシミ」、あかね芋など、沖縄の海と大地の恵みをふんだんに使った「島テロワール」。2018年以降、毎年冬になると登場する人気コースですが、2022-2023シーズンの最新作では肉や魚介類ではない植物由来食品を主食材とした新メニュー「ディーツのクネル シェーブルクリームソース」が開発されるなど、昨今高まるサステナブルへの関心を受けてバージョンアップが行われています。「琉球ヌーヴェル」を含め何度かいただいたことがあるのですが、毎回新しい驚きに満ちていて、こちらのディナーを目的に「星のや竹富島」に滞在するゲストもいるほどです。

ダイニングに入る前、「風のテラス」と名付けられた屋外スペースでいただく「島風アペロ」。自然や夕焼けを体感しながら、ジーマミー豆腐やちんすこうなど沖縄にちなんだフィンガーフードを味わう。
植物由来食品「ディーツ」のクネルはもちもちした弾力のある新食感。島に古くからある山羊食文化からヒントを得て、コクと旨味が詰まったシェーブルクリームソースで仕上げた。
島民の健康を支える命草(ぬちぐさ。ハーブや野菜などの総称)で車海老を蒸しあげ、殻出汁からとったコンソメを添えた一品。この日のマリアージュは桃の葉を白ワインに漬けてつくる珍しいイタリアの白ワイン「ペルセギン」と。
旨味と甘味が凝縮した熟成黒毛和牛を、中に水分を閉じ込めたまましっとりと焼いたメイン料理。フーチバ(ヨモギ)や長命草など、命草のピュレがアクセントになり味の変化を楽しめる。
柑橘「タンカン」をタルト仕立てにしたデザート。ここでも命草を使ったハーブのソルベが使われていて、口の中に爽やかな風が吹く。Avantdessertには「あかね芋のモンブラン仕立て」も。

一棟貸しの客室縁側でいただく、命草(ぬちぐさ)たっぷりの島鍋

客室の縁側でいただくインルームダイニングも雰囲気抜群。事前予約制となるため、メインダイニングか部屋食かを事前に決めておき、チェックインしたらすぐに予約を。

離れになった客室でのインルームダイニングも、星のや竹富島ならではのぜいたくな時間。縁側の窓をすべて開放することで、竹富島で縁起がよいとされる南風がやさしく入り込みます。

部屋食でおすすめなのが、なんと言っても「柑橘薫る島鍋」。柑橘の薫る出汁に牛ロース肉と豚バラ肉、命草やハーブなどの島野菜などをしゃぶしゃぶでいただく鍋料理で、薬味にポン酢やピバーツ(島胡椒)、シークヮーサー胡椒などを合わせ、さっぱりといただくことができます。締めには残った出汁で八重山そばをいただき、満腹間違いなしのディナーです。

他にも「鉄板焼き御膳」や「ミーバイの出汁しゃぶ御膳」などの御膳料理、そして「五穀米のタコライス」や「炙りラフテー丼 半熟卵添え」といったカジュアルなメニューもオーダー可能な星のや竹富島のインルームダイニング。暮らすように連泊して宿泊しても、選択肢が豊富で飽きが来ないのが嬉しいところです。

また朝食はメインダイニングにて、沖縄伝統の重箱料理(ウサンミ)から着想を得た「九品朝食」、お粥と昔ながらの製法で作られた豆腐を合わせた「ゆし豆腐粥朝食」、さらに冬限定で油味噌と混ぜ合わせた旬の命草をお粥でいただく「畑人粥朝食」、八重山で親しまれる五穀とフルーツを添えた「シリアルブレックファスト」など、長寿健康で知られる竹富島らしいヘルシーな朝ごはんをいただくことができます。こちらも星のや沖縄同様、1泊だけだとメニューのチョイスが悩ましく、またのんびり島時間を味わうためにも連泊するのがおすすめです。

柑橘薫る島鍋(写真は2人前)。やわらかくて甘味と旨味が詰まった牛ロース肉と豚バラ肉を、柑橘の出汁&薬味でさっぱりといただく。
魚介のブイヤベースや命草サラダなど、竹富島らしさを味わえる洋朝食「海風ブレックファスト」(写真上)。朝ごはんの種類だけでも常時最低4種類あり、連泊でも毎朝選ぶ楽しみがある。
(左上)屋根瓦に置かれたシーサーはすべて異なる表情。(右上)すり鉢状になったプール。(左下)53〜66㎡と十分な広さの客室。(右下)見晴台から眺めた星のや竹富島の客室群。

※当記事は、2023年3月2日現在のものです

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