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フランスで開催されるラグビーワールドカップ2023は、日本戦の舞台となるトゥールーズ、ニース、ナントの3都市を含む計9都市で開催されます。大会期間は約2ヵ月。選手の体力や健康を考慮して、試合は中5日以上の間隔を空けて開催されるため、現地に赴くファンは観戦の合間にフランス観光も楽しみたいもの。なかでも南仏らしい美しい風景とグルメが待つプロヴァンス地方のおすすめスポットを、フランス観光親善大使の大野均さんとご案内します。
かつてプロヴァンス伯爵領の主都として栄え、15世紀には大学が創設されたエクス・アン・プロヴァンスは、いまも知的でおしゃれな雰囲気が漂うプロヴァンス観光の中心都市。この町で生まれた芸術家といえば「近代絵画の父」と呼ばれるセザンヌですが、中心街から少し離れた丘にあるアトリエでは、セザンヌがよく題材にした果物や像などの静物が生前のまま保存されています。
選手時代も含めてフランスには何度も訪れている大野さん。日本代表でパリに遠征した際には、オフの時間にルーヴル美術館にも行かれたそうで、今回セザンヌのアトリエではオーディオガイドを片手に熱心に鑑賞していました。セザンヌは1906年に67歳で亡くなるまで、ここで制作活動を続けました。アトリエではセザンヌが野外制作の際に使った画材やカバンなども見ることができます。
セザンヌが最も好んで描いたモチーフがサント・ヴィクトワール山。エクス・アン・プロヴァンスの郊外にそびえる標高1000mの山で、石灰質の白い岩肌が特徴です。セザンヌは生涯で80回以上もこの山を描きました。そんなセザンヌが愛した山に見守られるように立つワイナリー「テール・ド・ミストラル」を訪れました。
2008年に創設された「テール・ド・ミストラル」は、ワイナリーとしてはまだ若いですが、ブドウ畑は30年以上前から手掛けていて、3つのブドウ品種(シラーSyrah、グルナッシュGrenache、ロールRolle)を栽培、ワインはロゼを中心に14種類を製造しています。フランスのなかでも南仏プロヴァンス地方はロゼの生産が盛んで、フランス国内のロゼワイン市場の約35%を占めているといいます。
ワイナリー見学では製造工程の説明を聞きながらカーヴ(貯蔵・熟成庫)などを巡り、最後にお待ちかねの試飲タイム。日本酒や焼酎のプロデュースもしている自他ともに認めるお酒好きの大野さん。フランスのワイナリー巡りのほか、現役時代には南アフリカ遠征の際、立ち寄った居酒屋で知り合った人にケープタウンのワイナリーに連れていってもらったこともあるのだとか。ラグビー日本代表のなかでもトップ3に入るほどの酒豪という噂は伊達でなく、試飲のグラスも次々に空いていきます。
大野さんが気に入った「ナディア・ロゼNadia rosé」は、柑橘系のアロマとスモークされたような樽の香りをほのかに感じる味わい深いロゼワイン。「ナディア」とは、ワイナリー創設者の妻ナディアさんのお名前からとったもの。実はこのワイナリーのワインには経営者家族の名前が付けられているというユニークな特徴があります。
南仏プロヴァンスの生活に欠かせないものといえばラベンダー。主要なラベンダー栽培地を結ぶ観光ルートは「ラベンダー街道」とも呼ばれ、現地では6月末~8月頃までの開花時期に合わせたバスツアーも催行されます。取材で訪れた「テール・ユーゴー」は、ラベンダー畑を眺めながらのんびりピクニックやBBQをしたり、南仏生まれの球技「ペタンク」もできる憩いのスポット。
ペタンクは、目標球に向かって鉄のボールを投げ合い、相手のボールより近づけることで得点を競うゲーム。老若男女楽しめるので、夏の南仏では至るところでペタンクに興じる人の姿を見ることができます。ペタンク初挑戦の大野さんでしたが「目標球を狙うなら高く投げて、相手の球をはじくなら低く投げるのがよさそう」とすぐさまコツをつかみ、地元の子どもたちと楽しんでいました。「テール・ユーゴー」の今年のラベンダー畑は8月末で営業終了しましたが、まだガイドブックでも紹介していない穴場スポットなので、ぜひ来年以降の夏旅のヒントにしてください。
そぞろ歩くだけでも楽しい瀟洒な町並みが広がるエクス・アン・プロヴァンスの旧市街には、歴史的な建造物の合間につい足を止めたくなるすてきなお店がたくさんあるので、ショッピングタイムは多めにとっておくのが◎。
2012年にできた「ローズ・エ・マリウス」は、香水の町グラースから取り寄せた原料をもとに、プロヴァンス地方のアーティストによってていねいに作られている香水店。こちらのルームフレグランスはなんとマクロン大統領夫妻も愛用しているのだとか。
この店の代表作「ロゼワイン」の香水以外にも、「UNE NUIT D'ÉTÉ SOUS LE FIGUIER(夏の夜イチジクの木の下で)」など、ネーミングもおしゃれな香水がたくさん揃います。いまのところエクスで1軒のみ、フランス国内にも支店はないそうなので、唯一無二のプロヴァンスみやげになることは間違いありません。
※デパートやセレクトショップでの取り扱いは有
エクスでチョコレートを求めるなら、国家最優秀職人章M.O.F.(Meilleur ouvrier de France)のタイトルをもつ「フィリップ・スゴン」へ。キャラメルやラズベリー、コーヒー、タイム、イチジク、ココナッツなど、どれも味が気になるプラリネがずらりと揃います。
「ラ・キャラメルリー」はオリーブオイルを原料にしたキャラメル専門店。リュベロン地区のマーヌManeに工場があり、50年代の古い機械と手作業で仕上げているのだそう。フレーバーはコーヒー、レモン、カマルグの塩、オレンジ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、甘草などさまざま。アソートされたパッケージもあるので、グルメな友人へのプレゼントにもぴったりです。
エクスの名物といえば「カリソンCalisson」。アーモンドパウダーとメロンのシロップ漬けを混ぜた生地を砂糖でコーティングしたお菓子で、葉っぱのようなひし形をしています。1920年創業の「ル・ロワ・ルネ」はエクスでカリソンといえば必ず名前が挙がる人気店。
カリソンは、15世紀にプロヴァンスを治めていたルネ王が、笑わない姫を妃に迎えるにあたり、笑顔になってもらいたいと作らせたお菓子。そのおいしさに顔をほころばせた姫がお菓子の名前をたずねると、王はこの地方の方言で「抱擁」を意味する「Di Calin soun(ディ・カリン・スン)」と答えたことが名前の由来と言われています。ちなみにカリソンは1個13.3gと決まっていて、13は「13聖人」、3は「三位一体」からきているのだとか。お菓子ひとつとっても歴史の深いフランス。おみやげ話にも花が咲きそうです。
フランスには、昔ながらの田舎の景観を保護することを目的に設立された「フランスの最も美しい村協会」があります。村の人口が2000人未満であること、2ヵ所以上の保護建造物があることなどの条件を満たした村だけが「美しい村」と認定され、現在172の村が登録されています。そのうちのひとつゴルドGordesに立ち寄りました。
映画『プロヴァンスの贈りもの』(2006年)の舞台にもなった人気の村ゴルド。丘の上に立つ古城に向かって石畳が迷路のように入り組み、中世にタイムスリップしたかような気分を味わえます。村にはおみやげ物屋やカフェのほか「プティ・パレ・ダグラエPetit Palais d’Aglaé」のような眺めのいい高級ホテル・レストランもあり、数日間ゆったり過ごすことも可能です。
終始笑いの絶えない旅でしたが、どこにいても地元の方とスッと仲よくなる大野さん。秘訣を聞くと、そんなことないですよと謙遜しつつも「目を合わせることが大事かな」とひと言。現役時代は、海外遠征中のオフの日にひとりでバーに行って地元の人と飲んだり話したりするのがリフレッシュできて楽しかったそう。多少言葉はわからなくても、アイコンタクトで通じ合えるのはラグビーで培われたコミュニケーション力かも。
南仏の太陽のように明るい人たちとの触れ合いもプロヴァンス旅行の魅力のひとつ。ぜひラグビーW杯観戦の合間にフランス各地を訪れてみてください。
TEXT & PHOTO:地球の歩き方 由良暁世 Akiyo Yura
取材協力
フランス観光開発機構 Atout France www.france.fr/ja
プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方観光局 Provence-Alpes-Côte d’Azur Tourisme
www.provence-alpes-cotedazur.com
エクス・アン・プロヴァンス観光局www.aixenprovencetourism.com
リュブロン観光局www.destinationluberon.com
東芝ブレイブルーパス東京 Toshiba Brave Lupus Tokoyo www.bravelupus.com
A06 地球の歩き方 フランス 2025~2026
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2025/02/21発売パリを満喫したら、“その先のフランス”も旅してみたい。パリとフランスの各地方を旅するための詳細マップと徹底ガイド。
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