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この日はジーザーンから同じ紅海東岸にあり、世界中から訪れる巡礼者たちの玄関口となる商都・ジッダ(ジェッダ)に向かいます。
イスラム教徒は死ぬまでに、メッカ(マッカ)やメディナ(マディーナ)というイスラム教の聖地を巡礼する”ハッジ”を行うべきと教えられているそう。私はイスラム教徒ではないので、市内全域が聖地となっているメッカには立ち入ることすらできません。メディナに関しては近年規制が緩和され、預言者のモスクの中までは入れないものの、町には入れるようにはなったそうです。
この日はジザーンからこのふたつの聖地の玄関口であるジッダ空港に移動しました。
ジッダは巡礼に訪れた世界中のイスラム教徒が集まる一大商都。アジアやアフリカなど中東以外の国のゲストが多いため、空港を行きかう人のファッションも、日本でも見るアジア系の服装だったり、グループで同じユニフォーム(ニジェールの国旗がところどころに入ったド派手なカラフルワンピース…)を着ていたりと、国際色が豊かでお祭り感も凄い。さすがに巡礼専用のビザや飛行機があるだけあって、世界中のイスラム教徒が集まるジッダは、聖地2都市と合わせてイスラム世界の中心地といってもいいかもしれません。
次の日には帰国してしまうこともあり、サウジ料理もほぼ食べおさめ。こちらのお店はリヤドにも店舗がある人気店です。
腹ごしらえしたあと、巨大なショッピングモール「Jeddah Park by Cenomi」内にある美術館「House of Islamic Arts」を訪れました。
こちらの美術館もビジョン2030の為に建てられたもので、キュレーションは女性が務めていました。
展示は陶器やガラス器、金属器や古銭、イスラムのカリグラフィーやテキスタイル、古書など15世紀まで遡ったイスラム美術が1フロアの半分くらいの空間に集められています。
地元の方はこうした古いものの展示が面白いのだろうと思うのですが、個人的に目を引いたのが巡礼の都市、ジッダにあって、ほんの100年くらい前の巡礼がどのようなものだったのかがわかる展示が多い事でした。
また、メディナからメッカへのマイルストーンの説明展示など、彼らがメッカへどのような道のりで巡礼していたのか。さらに、ヨーロッパ人が描いた、聞き取りのみで描いたメッカの想像図(模型と全然違う…)など、当時の人々のメッカへの人々の好奇心が、イスラム圏に限らない目線で展示されています。
現在でもイスラム教でない人はメッカには足を踏み入れることができないので、ここのメッカやメディナの町並みのミニチュアなどで、聖地への興味を紛らわせるにはいいかもしれません…。
入場無料ですが、かなり見ごたえがあります。ジッダを訪れた際にはぜひお立ち寄りください。
美術館の後は個人がコレクションしている面白い資料館があるというので、直行します。建物が近づいてくると…
こうした伝統的な建物は窓の内側が外からは見えないため、まだどんな博物館かが分からなかったのですが、一歩中に入ると…
展示内容は実に雑多…。衣装などの資料的な展示だけでなく、絵画や生物学的な展示、生き物についての紹介、果ては世界中の色々な国の文化の紹介展示などジャンルがまったく定まっておらず、外観と裏腹なカオス空間です。(日本の町のジオラマもあったのですが、某アニメの主人公宅のような普通の家屋が「Japanese Traditional House(日本の典型的な家)」とキャプションがつけて紹介されていて笑いました)
今回の旅では、砂漠や高原の美しさなど日本人としてはあまりなじみのない風景たちも当然心に残ったのですが、結果的にこの資料館が一番忘れられない空間になってしまいました。興奮して写真を撮りすぎてしまったのですが、訪れる人によってここでの写真はまったく違う内容になるはず。館内ではつねに修復や展示の更新が行われているようで生き物のような資料館です。個人的にはこの町で一番訪れていただきたいスポットです。
人気の観光地だけあって、道路が結構混雑しているジェッダ。あっという間に日が沈んでいきます。
サウジ最後の夜は旧市街散歩にでかけます。
それなりに人通りもあり、夜ですが安心して歩けます。
ここの魅力は昔ながらの建物を見ながら、カフェなどでリラックスして、隣接する市場、スーク・バブ・マッカなどを行き来しながら時間を過ごせること。
ちなみにここの向かいのお土産屋ではマグネット、Tシャツ、ステッカーなど日本人向けのデザインなので、こちらもおススメです(カッコいいアラビア語のフォントでジェッダと書いてあるベタなTシャツを購入してしまいました…)
旧市街も見たら新しいエリアも見ておきたい、ということで、今度はジェッダの北部に移動。もう深夜も違いというのに、夜に出歩いていることがとても多く、アラビアの夜は長いということを体感します。
思えばこの5日間、取材が終わると大体0時を過ぎていたのですが、事前に抱いていたサウジアラビアのイメージは激変しました。
夜はみんな散歩していて金細工を扱う市場などでも身の危険を感じたシーンはまったくなかったし、人々はあくまで穏やか。遠い国である日本に興味を持つ人も多く、またご飯も美味しいのでまったく食事には困りませんでした。特に安全面においては、これまで一般観光客を受け入れてこなかったこの国ゆえの、観光客目的の犯罪が少ないことに起因していると感じました。
また、20年ほど前にサウジを訪れたことがあるという同行者は「以前とはまったく別の国になっているし、これから20年たったらまた別の国になっているだろう」とおっしゃっていました。中心地の空き地が目立った首都・リヤドの開発予定を聞くだにその話には同意しますし、これから外国人客の受け入れも積極的にしていく国になるのでしょう。20年後、私ももう一度この地を訪れ、中東のダイナミズムを感じてみたいと思った旅になりました。