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沖縄県読谷村に2020年に開業した「星のや沖縄」は、ラグジュアリーかつ圧倒的な非日常体験が叶う唯一無二のリゾート。史跡から着想を得たグスクウォールに囲まれた敷地内で、琉球王朝時代の礼服をイメージした制服のスタッフがおもてなしをしてくれます。そんな星のや沖縄で特筆すべき施設が、敷地内にある道場。今日は、普通の沖縄旅ではもう刺激が足りないという方におすすめの「琉球唐手滞在」をご紹介します。
目次
空手が沖縄発祥の武術であることにちなみ、星のや沖縄の敷地内に建てられている道場。沖縄文化体験のアクティビティスタジオとして活用され、ここで実際に空手や三線、琉球舞踊など体験プログラムが楽しめるほか、ゲストのウェルカムドリンクとして沖縄の伝統茶「ぶくぶく茶」が振る舞われます。
道場といえばなんとなく汗臭いイメージがあったのですが……(失礼!笑)、ここはそんな先入観とはまったく無縁。道場内に足を踏み入れると杉の香りがふんわりと漂い、凹凸のある浮造り仕上げの床板からはひんやりとした心地よさが素足に伝わってきます。窓は全面開放が可能。道場からは芝生の広場と海がひと続きに見え、まるで沖縄の自然と一体になったかのような感覚を味わえます。
実はこの道場、東京オリンピックの空手男子形で金メダルに輝いた喜友名(きゆな)諒選手も訪れており、「世界一美しい道場」と称賛。世界中、数々の道場を巡ってきた喜友名選手の言葉には非常に説得力があります(ちなみに喜友名選手の迫力の稽古動画はこちら)。
そもそも空手は、琉球王国の武道「手(ティー)」が当時の唐(中国)から伝わった武術と融合し、現在の空手の基礎になったと言われており、「唐手」と表記されたり、沖縄の言葉で「トゥーディ」と発音したりするのはそのためです。17〜18世紀頃、空手は士族の多かった沖縄の首里、那覇、泊の3地域で発展。現在ではその系統を踏まえ、諸説あるものの4大流派(首里手系、那覇手系、泊手系、上池流)に大別されています。
星のや沖縄の稽古では、上地流の範士9段、新城清秀先生をお招きして稽古を行っています。空手道の基本、「礼に始まり、礼に終わる」の教えをいただき、いよいよ稽古の始まりです!
星のや沖縄の空手アクティビティは、1時間だけ気軽に体験できる「島の手習い~琉球空手~
」と、2泊3日で空手を習う「琉球唐手滞在
」の2種類。琉球唐手滞在では、空手の心得を学び稽古に没頭することで自分自身と向き合います。沖縄発祥の空手の稽古が受けられるとあって、これまで経験者の方をはじめ、海外からのお客様で参加した方もいるそうです。
私は初心者ながら今回2泊3日の琉球唐手滞在を体験。3日の間に「空手稽古3回、動禅瞑想2回、指圧1回、泡盛セット」が予定されており、かなり本格的な内容に仕上がっています。
(以下、HPに掲載されている滞在例になります)
<1日目>
15:00チェックイン
17:00稽古① 立ち方・固定基本等 (1.5時間)
20:00動禅瞑想 道場にて
お休み前に泡盛で身体を和らげる
<2日目>
10:00稽古② 古武術を取り入れた型・試割り練習等(1.5時間)
14:30指圧
19:00動禅瞑想 自然海岸にて
お休み前に泡盛で身体を和らげる
<3日目>
9:00稽古③ これまでのおさらい・試割り本番(1.5時間)
12:00チェックアウト
経験者の方であれば稽古内容も変わってくるかと思いますが、初心者の私は沖縄県の中学校でも教えられているという「普及型Ⅰ」の習得からスタート。結び立ち、礼から始まり、上段・中段・下段の「受け」と「突き」を組み合わせた基本的な型で、動き自体を覚えるのはさほど難しくないのですが、角度や姿勢、重心など全身(それこそ指先まで)に神経を働かせるので、かなり集中力を使います。初日はこの普及型Ⅰを体に叩き込んで終了。1回の稽古は90分。幸い体が悲鳴をあげるような内容ではなく、じんわりとかく汗に清々しさを感じます。
2日目は前日に習った普及型Ⅰに、古武術を組み合わせます。古武術とはかつて首里の王族に仕えていた者たちが王府を守るために身に付けていた武器術で、こちらの稽古ではかんざしのような形をした「釵(サイ)」と呼ばれる武器を両手に、打つ、突く、受けるなどの動きを習います。空手同様、沖縄に伝わる伝統的な武術ですが、現在では古武術の稽古を受けられる場所が少なくなっているそうで、貴重な体験を積ませていただきました。
そして3日目(最終日)は星のやオリジナルの道着に着替え、ミットを突いたり、蹴ったりと、実戦を意識した内容に。ミットに対してきれいに力が伝わるとバシンと心地よい音が鳴り、実に爽快! 空手稽古にこんなにもストレス解消効果があるなんて、やってみるまで思いも寄りませんでした。
昨今、日本のホテルでも心身ともに健康な状態に導く「ウェルビーイング」を重視し、ヨガやメディテーション(瞑想)のプログラムを取り入れるところは増えてきています。しかし、「道場で空手稽古」というアプローチをとるホテルは、私が知る限り星のや沖縄だけ。これが実に空手発祥の地沖縄にふさわしく、効果的なウェルビーイングだと感じました。
そもそも道場とは自分と向きあい、稽古を通じて自分を磨く場所。新しいようで、実は正統派。心身の健康を取り戻すのに、これほどふさわしいシチュエーションはないのです。琉球唐手滞在の最後には、空手稽古でよく見かける試割りにトライ。中段突きと蹴りで無事2枚重ねの板が割れたところで稽古は終了となりました!
さて、ここまで空手稽古の様子を挙げてきましたが、宿泊しているのは「星のや沖縄」ということを忘れてはいけません。開業してまだ3年ちょっとですが、既に海外の大手旅行専門誌「Travel + Leisure」が選ぶアワード、「Travel + Leisure Luxury Awards Asia Pacific 2023」で日本の「Hotel Pools部門」で1位、「Beach + Upcountry Hotels部門」で入賞するなど、リゾートとしての真価もお墨付きです。
琉球唐手滞在は稽古以外の時間でもしっかりとリゾートを堪能できるよう、ゆとりをもったスケジュールが組まれています。特に稽古のあとのクールダウンにプールはおすすめ。プールサイドの更衣室に直行すれば、稽古が終わった10分後にはインフィニティプールに浮いていることも可能。こうした体験こそが星のやが掲げる「圧倒的非日常感」、そして「夢中になるという休息」なのです。
また琉球唐手滞在の宿泊プランには、指圧で体をほぐすマッサージと、泡盛セットの差し入れが含まれています。稽古のあとに客室で行うマッサージは至福のひととき。そして体を柔らかくほぐしたあとに、夕食の前に泡盛「琉球泡盛 熟成十年古酒 古都首里25度」という古酒(くーす)をいただきます。琉球王朝時代の士族たちも、空手の鍛錬のあとにこの「カラカラ」と呼ばれる酒器から小さな盃「チブグヮ」に泡盛を注ぎ、なめるように味わっていたのかと想像すると感慨深いものがあります。
夕食は客室でギャザリングサービスのしゃぶしゃぶセットメニュー(別料金。2名分で20,570円)をいただきました。ギャザリングサービスとは、シェフが事前に下ごしらえをした料理を部屋の冷蔵庫で保管しておき、ゲストの好きなタイミングでいただく部屋食サービスのこと。星のや沖縄は全客室がオーシャンフロントかつ西海岸に面しているため、部屋のダイニングテーブルが海に沈みゆくサンセットを眺める特等席なのです。星のや沖縄に泊まるのはこれが3回目ですが、ギャザリングサービスは室内で快適かつメニューが豊富なので毎回利用させてもらっています。
最後に空手以外のアクティビティもご紹介。ひとつ目は、木と木を分銅で継ぎ合わせ、鉄釘は使わず竹釘で仕上げる沖縄の伝統的な木造漁船、サバニという舟に乗り込む「舟を漕ぐ 南風サバニ」。熟練した造船技術を要するため、現在では造り手も減り、乗船自体が貴重な体験。目の前のビーチのサンゴ礁を舟の上から水中スコープで覗くと、ブルーが美しいルリスズメダイやオレンジ色のハマクマノミなど、驚くほどたくさんの水中生物を見つけることができます。
ふたつ目は「朝凪よんなー乗馬」。かつて読谷村には琉球王府の管理する広大な馬場があったことにちなんで、まだ気温の低い朝に目の前の浜辺を優雅に乗馬するもの。「舟を漕ぐ 南風サバニ」は2023年9月いっぱいの催行ですが、「朝凪よんなー乗馬」は通年開催しており、前日17時までに予約をすれば体験可能です。
普通の沖縄旅ではもう刺激が足りないという方は、道場での琉球唐手滞在や上記アクティビティなど、星のや沖縄での唯一無二な体験を通じて、より濃密な旅の思い出を作ってみてはいかがでしょうか? 実際、私もコロナ禍になってから何度も沖縄には足を運んでいましたが、今回の空手体験がここ数年で一番記憶に残る沖縄旅となりました!
星のや沖縄
沖縄県中頭郡読谷村儀間474
050-3134-8091(9:30〜18:00)
https://hoshinoya.com/okinawa/
※当記事は、2023年9月24日現在のものです