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1874年4月15日、サロン(官展)に落選した無名の若手画家たちがパリで初のグループ展を開催しました。メンバーは、モネ、ルノワールなど後に美術界の潮流を変えた「印象派」の画家たち。以来150周年となる2024年。パリとノルマンディーで、多彩なイベントが開催されます。Ph:ルーアン美術館© Marie-Anaïs Thierry
世界の美術ファンに愛されている「印象派」。実はこの名称、ディスられたことがきっかけで誕生したのをご存知ですか? 1874年、サロンに落選した画家たちが開いた展覧会に出品されていた作品のひとつ、モネの『印象、日の出』を観た批評家が、「印象に過ぎない」と作品を皮肉ったことから、この展覧会は「第1回印象派展」と称されるようになったのです。外光のもとで、刻々と変化する色や形を描くことは、当時の常識を覆す手法でした。美術史を大きく変えた印象派の誕生から150周年を迎える2024年、「第5回ノルマンディー印象派フェスティバル」が開催されます。3月22日から9月22日の期間、150ものイベントが予定されています。
■印象派の旅 les voyages impressionnistes
・URL: https://voyagesimpressionnistes.com/en/
ノルマンディー印象派フェスティバルでは、ルーアン、ル・アーヴルなど、作品の舞台となったゆかりの町で、さまざまなイベントが開催されます。計150のイベントの半数がコンテンポラリーアートを扱っているのも、今回の特色のひとつです。各界の有名アーティストが、印象派からインスピレーションを受け、創作した作品を披露するのです。たとえばルーアン美術館では、2023年に東京で大規模な個展が開催され、大きな反響を呼んだデイヴィッド・ホックニーの新作と印象派主要作品との競演を企画しています。なんと入場は無料! ノルマンディーを愛し、80歳を過ぎても精力的に制作を続けるホックニーと印象派画家たちが、どんな化学反応を見せてくれるのか、今から楽しみです。
ルーアンでは、モネが連作のテーマに選んだ大聖堂も観ることができます。2024年夏の夜は、この大聖堂のファサードが巨大スクリーンに。5月24日〜9月28日の夜、印象派フェスティバルに合わせた視覚インスタレーション「光のカテドラルCathédrale de Lumière」が行われます。アメリカ人造形芸術家・演出家のロバート・ウィルソンがクリエイションを担当 。「光の天才」といわれるアーティストと中世の建築が創り出す、壮大な映像世界に圧倒されることでしょう。
モネの『睡蓮』が制作された場所として知られるジヴェルニーも、ノルマンディー地方にあります。モネは1883年より1926年に亡くなるまでこの家で暮らし、数々の作品を制作しました。『睡蓮』のモデルとなった太鼓橋の架かる池は、「水の庭」にあります。「庭師」としても才能を発揮したモネ、「自然のパレット」ともいえる「花の庭」も必見です。モネの家の近くには、ジヴェルニー印象派美術館もあり、3/29〜6/30の間、「印象派と海」をテーマにした企画展が開催されます。
パリと近郊も印象派にとって重要な場所です。パリは、若き印象派画家たちが学び、競い合い、交流を深めた場所であり、第1回印象派展が開催された町でもあります。世界に誇るコレクションを所有し、「印象派の殿堂」とも称されるオルセー美術館では、2024年3月26日〜7月14日の間、「1874年パリ、印象派の創造」展を開催、約130点の作品を展示します。なかには、第1回印象派展に出品された初期の傑作群も含まれ、当時高評価を得ていたサロンの作品と見比べることも可能。さらに企画展と並行して開催されるのが、「印象派画家と過ごす一夜、1874年パリ」と題された没入型ヴァーチャル・リアリティ体験コース。ヘッドギアを装着して、19世紀のパリへタイムスリップ! 画家たちと一緒に、印象派の誕生に立ち会ってみては?
パリ近郊のセーヌ河畔も、印象派画家たちが作品のモチーフとして好んだ場所です。当時はパリ市民の娯楽の場にもなっており、週末にはボート遊びを楽しむ人々でにぎわいました。ルノワールは、そんな人々の楽しげな様子を、『舟遊びをする人々の昼食』で描いています。舞台となったのはパリ近郊の町シャトゥにある「メゾン・フルネーズ」。「印象派の島」と名付けられたセーヌの中洲にあるこのレストランは今も営業しており、当時の雰囲気そのままのテラスで、食事を楽しめます。パリ近郊にはほかにも、ゴッホ終焉の地となったオヴェール・シュル・オワーズのゴッホの家や、カイユボットが20年近く暮らし、89点の作品を制作した家もあります。2022年9月には、アルジャントゥイユでモネが暮らした家が公開、またブージヴァルにあるベルト・モリゾの家も公開される予定で、ゆかりの地を巡る楽しみが増えそうです。
印象派150周年を記念する2024年のイベントを、日本で広く知ってもらおうと、パリとノルマンディーの地方観光局、また印象派を巡る旅プロジェクトリーダーとノルマンディー印象派フェスティバルのディレクターが来日し、お話を伺うことができました。強調されたのは、印象派の革新性が現代に繋がっていること。このため、印象派作品と現代アートをクロスさせる企画展が多数予定されています。また、印象派画家たちが着想を得た場所を実際に訪れることができるのも、パリとノルマンディーを旅する醍醐味とのこと。「印象派絵画を連想させる景色をぜひ見てほしい」とパリ観光局のラファエル・ギユーさん。今も変わらない風景があることを教えてくれました。
印象派が登場したのは、技術が飛躍的に発展し、鉄道網が広がっていった時代でした。時代の変化に敏感だったモネは、ノルマンディー地方と結ぶ発着駅であるサン・ラザール駅や、パリ近郊のアルジャントゥイユの鉄橋などを描いています。画家たちが利用した鉄道は、今も旅行者をパリ近郊やノルマンディーへと運びます。画家たちの時代に思いをはせながら、ジヴェルニーやルーアンなど沿線の町を巡って足跡をたどるのもいいでしょう。2024年の記念すべき年に、印象派を巡る冒険の旅に出かけてみませんか。
■フランス観光開発機構
・URL: https://www.france.fr/ja
TEXT:『地球の歩き方 A06フランス』編集担当 坂井彰代(オフィス・ギア)
PHOTO:パリ地方観光局、ノルマンディー地方観光局、フランス観光開発機構、オフィス・ギア
A06 地球の歩き方 フランス 2025~2026
Aシリーズ(ヨーロッパ) 地球の歩き方 海外
2025/02/21発売パリを満喫したら、“その先のフランス”も旅してみたい。パリとフランスの各地方を旅するための詳細マップと徹底ガイド。
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