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地球の歩き方「旅の図鑑」シリーズから、ついに『日本のグルメ図鑑』が登場! 古くから各地に伝わる郷土料理から最近注目のB級グルメまで、47都道府県のグルメを1冊に集約しました。日本食に欠かせない発酵食品や食にまつわる言い伝え、おうちで手軽に作れるレシピなども多数掲載。改めて世界で話題の“日本食”を見直すと同時に、食を巡る日本全国の旅へと出かけましょう!
各地には、名前からではまるで想像もできないご当地グルメが数々存在します。たとえば、どこか異国の料理を思わせる洋食ライス。トルコライス、シシリアンライス、ハントンライス、ボルガライス……。これらの名前から、あなたはどんな料理を思い浮かべますか?
「トルコライス」は、長崎県を代表するソウルフード。“大人のお子さまランチ”と称されるように、“誰もが大好きな”豚カツ、ピラフ、スパゲティがワンプレートに盛られています。名前の由来は、3つの料理の組み合わせが東西文化が交錯するトルコに通じるからとも、3色の“トリコロール”からともいわれ、なぜ“トルコ”と呼ばれるようになったのかは明らかではありません。
同じく、異国の名前が付いた佐賀県名物「シシリアンライス」はご存知でしょうか? こちらは、温かいご飯の上に生野菜を盛りつけ、さらにその上に甘辛く炒めた肉とタマネギをのせてマヨネーズをかけたもの。昭和50年頃、佐賀市内の喫茶店で誕生したとのことですが、“シシリア(シチリア)”料理とは何の関係もなく、当時はやっていた映画のロケ地であったイタリアのシチリア島から名づけられたといわれています。
石川県金沢市のご当地グルメとして知られる「ハントンライス」は、オムライスにカジキ(通称「カジキマグロ」)などの魚のフライをのせ、ケチャップとタルタルソースをかけたもの。バターライスの代わりにチキンライスを包んだものや、魚のフライの代わりにエビフライやから揚げをのせたものなど、さまざまなアレンジバリエーションも! ハンガリー料理との関係は明らかではありませんが、ハンガリーの「ハン」にフランス語でマグロを意味する「トン」を合わせて名づけられたといわれています。
同じくオムライスを使った料理ですが、大きな豚カツがのり、その上に特製ソースがたっぷりかかっているのは、福井県越前市武生地区のご当地グルメ「ボルガライス」。オムライスの中身やソースはさまざまで、定番から中華風、手軽に食べられる棒状のものまでバリエーション豊か。30年以上も前から親しまれていますが、名前の由来や起源は謎に包まれたままで、ロシアに流れる「ボルガ川」からとも、イタリアの地名に由来するからとも、実にさまざまな説があります。
では、突然ですが、ここで問題です。上のA~Fの料理名は何でしょう? 次の1~6とそれぞれ組み合わせてください。
1.とどめせ 2.ハトシ 3.イタリアン 4.ふくめん 5.エスカロップ 6.いただき
キャベツ、モヤシなどが入ったソース焼きそばの上に、具材入りのトマトソースやミートソースがたっぷりかかったこの料理は、新潟県民のソウルフード「イタリアン」。新潟市内の喫茶店で誕生し、しだいに市内外へと広まっていきました。ホワイトソースやカレーソースなどのアレンジバージョンも人気です。
練り物または揚げ物にも見えるこの料理は、長崎県で親しまれている「ハトシ」。明治時代に中国から伝わった料理で、中国語で「蝦(ハー)」(=エビ)、「多士(トーシー)」(=食パン)を意味するように、エビのすり身を食パンで挟んで揚げたもの。魚のすり身やはんぺんを挟んだり、チーズや野菜が入ったものもあります。
大型のいなりずしのようにも見えるこの料理は、鳥取県で親しまれている郷土料理「いただき」。大きな油揚げの中に旬の野菜と米を詰め、醤油や酒などで味付けただし汁でじっくり炊き上げたもので、「いただく」との感謝の気持ちが語源ともいわれています。明治中期頃、ある寺の住職が福井県で食べた油揚げをとても気に入り、持ち帰って作ったのが始まりなのだとか。しだいに“家庭の味”として定着し、今ではスーパーマーケットでも販売されています。
ちらしずしの1種にも見えるこの料理は、岡山県に伝わる郷土料理「とどめせ」。鎌倉時代、船頭たちの炊き込みご飯に酸っぱくなったどぶろくがかかってしまい、それを食べたところおいしかったことから生まれた料理なのだとか……。「どぶろくめし」が転じて、いつしか「とどめせ」と呼ばれるようになったのだそうです。
色鮮やかなこちらの料理は、愛媛県宇和島市に伝わる行事食「ふくめん」。食べやすい大きさに切った糸こんにゃくの上に白とピンクのそぼろ、ネギ、ミカンの皮をのせたもので、4色で四季を表現しているのだそう。名前の由来は「山ふく」(=こんにゃく)を麺のように細く切るからとも、そぼろで“覆面”するからともいわれています。
豚カツがのったライスにデミグラスソースがたっぷりかかったこの料理は、北海道根室発祥のローカルフード「エスカロップ」。フランス語で「肉の薄切り」を意味する「エスカロープ」が語源といわれています。地元では、ケチャップライスを使用した「赤エスカ」とバターライスを使った「白エスカ」の2種類が味わえます。
さて、あなたはいくつ答えられましたか? もしかしたら、旅行先で食べたことのあるものや地元に伝わる郷土料理があったかもしれません。名前から何となく想像できるものから、まったく予測不可能なものまで、全国各地にはさまざまな料理が存在しています。旅先で出合ったら、ぜひ食べてみてください。
一度聞いたら忘れられない、何だか気になるネーミングの料理もたくさんあります。たとえば、香川県で親しまれている「ぴっぴ飯」。ご飯に刻んだうどんやたくさんを混ぜ、モヤシ、卵などと一緒にいりこだしで炒めたものですが、「ぴっぴ」とは幼児語で「うどん」を意味するのだそうです。
漬けたたくわんをわざわざ水に浸けて塩を抜き、醤油、砂糖などで煮付けることから“あほなこと”をすると名づけられた三重県の「あほだき」といったものも。貴族の若君が八瀬(やせ)という名の乳母に「うま」(幼児語で食べ物)をねだったことから、「やせうま」と名づけられた大分県の平麵を使った甘いおやつもあります。
ほかにも、島根県に伝わる「ぼてぼて茶」や岡山県津山市で広く親しまれている「ヨメナカセ」、鳥取県の「どんどろけめし」、長崎県の「鼻はじき」など、気になる名前の料理がズラリ! それぞれの名前の由来を知ると、いかにその料理が地元で愛されてきたのかが伺い知れます。
また、名前からまったく違うものを想像してしまう料理もあります。たとえば、埼玉県行田市などで親しまれている「ゼリーフライ」。デザートとして人気のゼリーとは無関係で、“銭フライ”(=小判形のフライ)が語源とのこと。ゆでてつぶしたジャガイモにおから、野菜を入れて揚げたもので、軽食としてもおかずとしても人気です。ちなみに、行田市周辺には「フライ」という名の“揚げない”名物グルメも存在します。
群馬県富岡市には、ホルモン(モツ)は一切使われていない「ホルモン揚げ」という名物も。ちくわに小麦粉、パン粉をまぶして油で揚げ、ウスターソースにくぐらせたもので、縦切りにしたちくわが腸の断面に似ているので、こう呼ばれるようになったのだとか。広島県には「ワニの刺身」(実際はサメ)と呼ばれる、一瞬ドキッとしてしまうような名前の料理もあります。
南北に細長く、気候や地理的条件が大きく異なる日本では、地域によって食の嗜好や傾向はさまざま。歴史的背景なども影響し、その地ならではの食文化が築き上げられてきました。正月に欠かせない“お雑煮”にしても、各地域の嗜好を色濃く反映。日本料理の味付けのベースともいえる味噌や醤油にも、各地域ならではの特徴が見受けられます。地元では当たり前と思っていたことが、ところ変われば“びっくり!”の食文化も。目からウロコの発見があるかもしれません。
本書では、今や全国的に有名な料理から地元限定のローカルフードまで、各都道府県を代表するグルメ1000点以上を掲載! 知っているとつい自慢したくなる小ネタから旅先で食を楽しむためのヒント、今さら聞けないうどんとそうめんの違いや味噌、醤油の造り方まで、日本食にまつわる情報も満載です。この本をお供に、名物グルメを求めて各地を旅してみては? 旅の予習にも、ぜひ活用してください。
W32 日本のグルメ図鑑
47都道府県の名物料理を旅の雑学とともに解説
旅の図鑑
2024/02/08発売大好評『世界のグルメ図鑑』に国内版が新登場!日本全国47都道府県のまだ知らない名物料理やご当地グルメに出合う旅へ!
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※当記事は、2024年1月26日現在のものです。
TEXT:『地球の歩き方 W32 日本のグルメ図鑑』編集担当 竹内あや
PHOTO:©PIXTA