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2024年5月17日(金)より全国公開となる映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』。類稀な音楽センスから“レゲエの神様”と称されたボブ・マーリーの栄光の裏側には、苦悩や葛藤がありました。マーリーの家族の協力により制作されたこの作品を通して、伝説のミュージシャンの知られざる一面に触れてみましょう。
目次
物語は、対立する二大政党によりジャマイカが分断されていた1976年から始まります。その頃すでに国民的ミュージシャンとなっていたボブは、不穏な情勢の中でも家族や仲間と音楽やサッカーを楽しみながら暮らしていましたが、ある夜、政治闘争に巻き込まれ銃撃されてしまいます。仲間や妻、そしてボブ自身も負傷しますが、そのわずか2日後には、怪我をおして8万人の聴衆が集まるライブ「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のステージに立ちます。
しかし、襲撃の一件から身の危険を感じたボブはロンドンへ渡ることに。そこでアルバム『エクソダス』の制作を開始しました。それは「20世紀最高のアルバム」と絶賛され、ヨーロッパでのライブツアーを通して世界的スターとしての階段を駆け上がっていくことになります。しかし、その一方で、母国ジャマイカの政治情勢はさらに不安定化し、内戦の危がすぐそこまで迫っていました……。
この映画の大きな魅力のひとつは、カリスマ的存在と謳われたボブ・マーリーの人間味あふれる姿が描かれていること。レイナルド・マーカス・グリーン監督は、「本作で描いているのは、多くの人が知らないボブ・マーリーの姿。皆が見たことのない、Google検索しても出てこないような、実際の会話に基づいた内面に焦点を当てている。」と話しています。
実際にスクリーンでは、ボブ・マーリーの人間性がリアリティをもって伝えられています。それが実現したのは、映画制作にボブのふたりの子供であるジギー・マーリーとセデラ・マーリー、そして妻リタの協力があってこそ。ボブの歩き方や脚の組み方、そして、彼が話した故郷ジャマイカのナイン・マイルス特有のなまりなど、一つひとつの仕草は彼の子供たちの目線を通して再現されました。
また、ボブは運転手が付くのを嫌がりいつも自分の車を使いたがったこと、運転手が付くときは助手席に座り「僕たちは対等だ」と言ったなど、家族だから知り得るエピソードも作品作りに生かされています。
こうして細部にリアリティを宿らせることで、彼の人間性が温度をもって伝わる映画に仕上がった本作。監督は、マーリーの家族が制作に参加しなかったならこの仕事は絶対に引き受けなかったと語るほど、家族の存在は大きかったようです。