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ポーランドは、昨今の円安でもお得に旅することができる国であり、行く先々で街や建物の雰囲気が異なるので、まるでヨーロッパを何ヵ国も旅行しているかのような気分が味わえる。観光都市として人気を博しているポーランド第3の都市ウッチは、ポーランド版赤レンガ倉庫とも称されるマヌファクトゥーラ(Manufaktura)や、美しい街並みにアートが映えるピオトルコフスカ通りなど、見どころ満載であり、おすすめの旅行先である。
目次
LOTポーランド航空は、創業95年というEUで3番目に歴史のある航空会社で、日本線は成田-ワルシャワ間をデイリー運航している。フライト時間は昨今の情勢により少し伸びており、現在は成田→ワルシャワが14時間25分、ワルシャワ→成田が12時間45分である。
成田→ワルシャワは北極上空を通過するので(天候や航路の混雑状況により南回りとなる場合もある)、個人的には滅多に通れない場所だという思いと、運がよければオーロラが見られるかもしれないというワクワクが勝ってしまい、あっという間に14時間が過ぎていった。
使用機材はボーイング787で、ビジネスクラス・プレミアムエコノミークラス・エコノミークラスの3クラスが用意されている。今回の取材ではエコノミークラスを利用したが、ブランケットと少し小さめの枕が用意されており、コンセント・USBポートや機内エンターテイメントも充実していたので、機内泊も快適だった。
機内食もおいしく、今回の取材では帰国時の機内食でピエロギが提供されたので、ポーランドでの思い出に浸りながら帰国することになった。
成田空港から飛び立ち、14時間後にワルシャワ・ショパン空港へ到着。空港は、ワルシャワ中央駅から約8kmのところに位置し、電車も乗り入れているので利便性が高い。国内線も各都市に接続しており、どの都市へもフライト時間は1時間程度なので、飛行機を使って各都市へ行くのも効率的でいいかもしれない。
ワルシャワ空港はシンプルな構造なので、空港内で道に迷うことはほぼないが、特に帰国時など空港内での待ち時間が長い場合には過ごし方に少し工夫が必要だ。そんな時は、ビジネスラウンジを利用するという手がある。LOTポーランド航空のビジネスラウンジは、シェンゲンエリアにあるポロネーズ、非シェンゲンエリアにあるマズルカの2カ所。ラウンジでは食事や飲み物もあり、落ち着いた空間で自由な時間を過ごすことができる。
利用方法など詳細はLOTポーランド航空の公式ホームページで確認を。
シェンゲンエリア・非シェンゲンエリア:シェンゲン協定とは、協定加盟国の国家間において、出入国検査なしで国境を越えることを許可する協定のこと。シェンゲンエリアはシェンゲン協定加盟国間の出入国、非シェンゲンエリアは非加盟国への出入国の際に利用できるエリアである。ポーランドはシェンゲン協定加盟国だが、日本はシェンゲン協定加盟国ではないので、日本へ帰国する際は非シェンゲンエリアにあるマズルカを利用することになる。
ポーランド第3の都市ウッチは、2023年で設立600年目を迎えた歴史ある都市。かつては産業都市として栄え、現在は観光都市として人気を博している。
空港があるワルシャワから、車なら1時間40分程度、列車ならワルシャワ中央駅からウッチ・ファブリチナ駅まで1時間30分程度で着くので、アクセスも良好である。
今回は、ポーランド版赤レンガ倉庫とも称されるマヌファクトゥーラ(Manufaktura)や、美しい街並みにアートが映えるピオトルコフスカ通りなど、ウッチの見どころをいくつかご紹介しよう。
物価は、2024年5月31日の時点で1ズウォティ=45円程度であり、マヌファクトゥーラのショッピングモール内にあったスーパーでは0.75~1リットルのミネラルウォーターが2~3ズウォティで購入できた。マヌファクトゥーラにはスターバックスもあり、トールサイズのカフェラテが18ズウォティと日本と比べると多少割高だったが、スターバックスへのこだわりがなければ他のお店でもう少しお安くいただくことができる。
グルメに関しては、途中立ち寄ったレストランでは30cmのピザが51ズウォティ(キッズ用の22cmのピザは31ズウォティ)だったなど、食べ応えのわりにかなりお得だと感じるものが多かった。なお、ポーランドはグルメのクオリティが非常に高く、おいしいものが多いのだが、少しばかり量が多いので「こんなにおいしいのに食べきれなくて悔しい…」という感情が湧いてくる。注文の際は、シェアして食べるなど工夫を忘れずに。
治安については、海外旅行する際はどの国でも防犯・スリ対策を行っておくのは当然のこととして、ポーランドでは過剰に身構える必要はないだろう。ウッチは観光都市なので人通りは多いが、客引きなどに話しかけられたり身の危険を感じたりすることもなく、穏やかな時間を過ごすことができる。
さて、ウッチを訪れたらまず立ち寄りたいのが、マヌファクトゥーラ。紡績工場の跡地や遺構を活用して作られた複合商業施設で、ポーランド版赤レンガ倉庫とも称される人気の観光スポット。シンボルとなっている門は、かつて紡績工場の出入り口として使われていたものだそう。
門をくぐって少し進むと、27ヘクタール超の広大な土地に、ホテル、250以上のショップが入るショッピングモール、シネマ、レストラン、博物館などが建ち並ぶ。観覧車やメリーゴーランド、夏には噴水があるなど、子どもが楽しめる施設も充実している。イベントも開催され、冬にはスケートリンクがオープンするのだそう。
赤レンガの建物はリノベーションされており、中に入ると歴史的な雰囲気を残しつつも現代風にアレンジされた空間が広がっているので、マヌファクトゥーラをひと通り巡ったら敷地内のレストランやカフェでランチをいただくのもおすすめ。
マヌファクトゥーラをひと通り楽しんだら、門を出て左に進み、ポズナンスキ宮殿へ。19世紀に活躍した資本家イズラエル・ポズナンスキの大邸宅だった建物であり、現在はウッチ市歴史博物館(Museum of the City of Łódź)として利用されている。
エントランスを入ると、写真映えする階段が出迎えてくれる。これが個人の邸宅だったことを考えると、いかにウッチが産業都市として栄華を極めたかをうかがい知ることができる。
内装や調度品は当時のものが展示されており、19世紀の資産家たちの生活を垣間見ることができる。
大広間は、オークで作られたシックな空間を、繊細で華やかな彫刻が施された白い天井が覆っている。上部に描かれている絵画は物語になっており、まだ何もなかったころのウッチにたどり着いたポズナンスキの父が、産業と貿易で財を成していく様子が描かれている。
また、大広間を入って右側にあるオークの棚の上には2体の像があり、左側の像は繊維産業を象徴するリボン、右側の像は貿易を象徴するホイールを持っており、ポズナンスキの功績を象徴した装飾になっている。
館内にはウッチが輩出した著名人の貴重品も展示されている。代表的なものは、20世紀を代表するピアニストであるアルトゥール・ルビンシュタインの展示と、1970年の第42回アカデミー賞で「愛の物語(L’amour de la vie)」が長編ドキュメンタリー賞を受賞した際に授与された本物のオスカー像だろう。通りすがった皆が写真に収めていた。
ポズナンスキ宮殿から少し歩けば、ピオトルコフスカ通りにたどり着く。タデウシュ・コシチュシュコの記念碑が建つ八角形の広場(ヴォルノシチ広場)を起点に約4km続くウッチのメインストリートである。
産業都市としての力強さを感じさせる赤レンガが印象的なマヌファクトゥーラとは打って変わり、非常に優雅な通りである。
第2次世界大戦による被害を免れた建築物が多く残されており、美しい装飾が施された建築物を見ることができる。また、歩道にテラス席を設置しているお店が多く、人々が穏やかな笑顔を見せながら過ごしていたのが印象的。
ピオトルコフスカ通りを歩いていると、ところどころに銅像があり、写真スポットとして人気を集めている。ピアノに羽が生えたビジュアルが印象的なルビンシュタインの像は、ルビンシュタインの隣に座って一緒に写真を撮ることができる。ほかにも、作家ユリアン・トゥヴィムの像などがある。
日本では「おやすみクマちゃん」として知られる人気キャラクターのミシ・ウシャテク(耳くまちゃん)の像も人気だが、他の像に比べるとサイズが小さいので、見逃さないように気を付けて。
目線を少し上に向ければ、建物の側面の壁や中庭の壁に描かれたスケールの大きいグラッフィックアートを見ることができる。イラストのタッチはさまざまで、全部で200点以上あるのだそう。通りを歩きながら、お気に入りのアートを探してみるのはいかがだろうか。
ピオトルコフスカ通りを通り抜け、少し進んだ先に、ポーランドのマンガやゲームの文化に触れられるミュージアムがある。
ポーランドはマンガやゲームの文化が浸透している国で、日本のマンガもよく読まれているのだそう。ミュージアムでは、マンガやゲーム制作過程などを学べるほか、日本でもよく遊ばれていた昔ながらのアーケードゲームや家庭用ゲーム、ポーランドで人気のゲームで遊ぶことができる。
子ども連れはもちろん、大人同士でも童心に返って楽しむのもいいかもしれない。
ポーランドは、ヨーロッパのなかでも昨今の円安でもお得に旅することができる国であり、空港があるワルシャワから少し足を延ばせばたどり着くウッチには見どころが満載。少し歩けば建物の雰囲気がガラリと変わり、まるでヨーロッパを何ヵ国も旅しているかのような気分を味わえるので、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。
TEXT&PHOTO:ヒラカワ