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記録的な暑さが続いた2024年夏、京都・大阪では注目のホテルが一気にオープン。こちらではトラベルエディターの筆者が、実際に宿泊した上でおすすめとなるポイントをあげながら、3軒の最新ホテルをご紹介します。トリを飾るのは、2024年8月20日にグランドオープンを果たした「バンヤンツリー・東山 京都」です。
バンヤンツリーは、世界で展開するバンヤン・グループの最上位ブランドで、「心、身体、魂を回復させるための五感の聖域を提供」をコンセプトに掲げています。姉妹ブランドにあたる「ギャリア・二条城 京都」と「ダーワ・悠洛 京都」は2年前に京都に進出していますが、今回はフラッグシップブランドの日本初上陸とあって、多くのホテル好きや京都ファンが注目する中での開業となりました!
まず特筆すべきは、そのロケーション。歴史ある京都市東山区にあり、二寧坂や産寧坂、八坂の塔、そして清水寺といった観光地がすべて徒歩10分圏内にあります。ただし、高台にあるため喧騒とは無縁。中庭にたたずんで耳を澄ませば、聴こえてくるのは野鳥のさえずりと、敷地内の水盤に滴る水の音だけ。まさに“サンクチュアリ”と形容するのにふさわしい立地なのです。
このサンクチュアリへの入口となる正門と、木の大庇をデザインしたのは世界的建築家の隈研吾氏です。マスターアーキテクトを務めた隈氏は、東山の自然豊かな環境と建物の調和を大切にし、森に対して開く配置計画を採用。それにより、ゲストは館内のどこにいても周囲の山々や美しい庭園を身近に感じることができる造りになっています。
またランドスケープデザインを担当したのは、「ふふ奈良」や「エースホテル京都」も手がけたプレイスメディア社。サステナブルの観点から、入口でゲストを迎える石垣や中庭にあるシンボルツリーなど、もともとそこにあったものを保存して活用しました。ホテル奥に広がる竹林の足元にも廃材のチップが再利用されるなど、環境を慈しむバンヤンツリーの精神が随所に反映されています。
バンヤンツリー・東山 京都でもっとも特徴的な施設を挙げるとすれば、京都市内のホテルで初となる能舞台でしょう。霊山町は幕末維新の志士たちが眠る場所として知られ、神や鬼、霊などが物語に登場する能の世界観と重なることから、ホテル敷地内に現代的なデザインの能舞台を設置。8月20日に行われたグランドオープン当日にはこちらの舞台上で開業セレモニーと雅楽の演奏が披露され、ライトアップされたステージが水盤に反射する姿は非常に幻想的でした。
背後の竹林と相まって、幽玄な空気を作り出している能舞台。ホテルに滞在したゲストがもっとも非日常を味わえる空間なのは間違いありません。
客室は世界的なインテリアデザイナーの橋本夕紀夫氏が、能の伝書『風姿花伝』の一節「秘すれば花」をコンセプトにデザイン。一番小さいサイズでも48平方メートルあり、部屋に入った瞬間、畳みのいぐさやバスタブのヒバの木の香りがゲストを迎えます。金のなぐり加工が施された壁は、見る角度や時間帯により印象が変化。部屋からの景色も京都市街や東山の森、能舞台など、向きによって大きく異なり、どれも趣があり魅力的です。
一番おすすめしたいのは、やはり市街ビューのお部屋。京都市内は景観保護のため厳しい建築制限があり、市街を一望できるホテルはなかなかないのですが、高台にあるバンヤンツリー・東山 京都の客室からは息をのむ光景が見渡せます。八坂の塔や京都タワーなど、京都のシンボルとなる建物がパノラマにおさまり、いかに特別なロケーションに立つホテルかが実感できることでしょう!
バンヤンツリー東山・京都は、京都市内で数少ない天然温泉を楽しめるホテル。1階の大浴場と客室名に「ONSEN」と付いた部屋には単純弱放射能冷鉱泉が引かれ、さらりとした肌触りの泉質は神経痛や疲労回復などに効果があるとされています。
また、バンヤンツリーといえば外せないのがスパ。ホテルの地下1階には全6室のトリートメントルームを備え、全部屋に温泉とヒバの木のバスタブ、そしてスチームサウナを完備。スパメニューも日本ならではの内容で、温泉に日本酒を加えた足湯で足元からしっかりと温め、米糠オイルと天然の塩を使ってスクラブします。施術はプーケットにあるアカデミーからセラピストが数ヶ月間来日して指導を行ったそう。一番人気のメニューは「バリニーズ」で、リズミカルなストロークでのオイルマッサージは力加減も絶妙! 心身に極上のリラックスを与えてくれます。
3階の「りょうぜん」は、幽玄な能舞台を眺めながら割烹料理をいただけるメインダイニング。カウンターとテーブル全48席が設けられ、季節によっては外にテラス席も置かれます。料理は京野菜や京都の味噌、さらに黒七味といった調味料まで、できるだけ京都産にこだわった内容になっています。
さらにその下のフロアには「BAR RYOZEN」が隠れ家的に潜んでおり、希少な地酒やプレミアム日本酒がストック。カクテルでは「RYOZEN抹茶ジントニック」や「Mirinブリーズ」といった日本らしさ溢れるメニューが用意されており、食前食後どちらに立ち寄るにも使い勝手が良さそうです。
唯一無二とも言えるサンクチュアリに、魅力的な施設がずらりと揃ったバンヤンツリー・京都 東山。豊かな自然と隣接するため、これから迎える秋、冬、そして春にどのような景色を見せてくれるか、非常に楽しみです!
※当記事は、2024年10月7日現在のものです