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オーストリアの中部に位置するザルツブルクへは、ウィーン中央駅からオーストリア連邦鉄道(略称ÖBB)の特急列車(RJX)を利用すると所要約2時間25分で到着します。ザルツブルクを訪れるなら、周囲のザルツカンマーグートの美しい湖と山々も見逃せません。1泊することで、この地域の本当の魅力をたっぷりと味わえます!
ウィーンとザルツブルクの間には、ÖBBの他にもウェストバーン(略称WB)という私鉄が運行しています。WBはウィーン西駅、ÖBBはウィーン中央駅と発着駅が異なるので注意が必要ですが、同じ路線上を走り所要時間もほとんど同じ、料金はWBのほうが若干安いです。ザルツブルクの発着駅はどちらも同じです。滞在先がウィーン西駅に近いならWBもよいですが、今回はÖBBの特急を利用します。
ウィーン中央駅7:28発の特急(RJX)を利用すると、ザルツブルク中央駅着は9:53。見どころが集まる旧市街へは、駅前から電気で走るトロリーバスで約10分です。
まず訪れたいのは、ゲトライデガッセという歩行者専用の道路です。ここは旧市街のメインストリートですがかなり道幅が狭く、通りの両側には隙間なく商店が並んでいます。店の軒先に取り付けられた、鉄細工の看板がこの通りの名物です。この通りの9番地にヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが誕生した家があります。ザルツブルクの誇りである音楽の天才は、1756年に生まれてから17歳までこの家で暮らしました。
小高い山の上にそびえる白い建物はザルツブルクのシンボル、ホーエンザルツブルク城砦です。旧市街の先からケーブルカーで上れるので訪れてみましょう。城砦のテラスからは町だけでなく、その周囲に広がる山々を一望できます。城砦は1077年にザルツブルク大司教が町の防御のために築き始め、現在のような姿になったのは1500年頃のこと。内部はガイドツアーで見学できます。
旧市街に戻ったら、再びゲトライデガッセを歩きましょう。ゲトライデガッセには、見落としがちな細い抜け道(パッサージュ)が延びています。33番地にあるパッサージュを入っていくと、行列ができるボスナの店、バルカン・グリル・ヴァルターがあります。
ボスナとはバルカン地方発祥のホットドックに似たファストフードのこと。カリカリのパンに細身のグリルソーセージが2本サンドしてあります。この店のボスナにはトッピングが何種類かあって、玉ねぎのみじん切り、パセリ、香辛料、マスタード入りが一番人気です。ほのかにカレーのような香りもするピリッとした香辛料が効いていて、のんびり歩きながら食べるのにぴったりです。
旧市街からザルツァッハ川を渡った対岸の新市街にも見どころがあります。ミラベル宮殿は、もとは大司教が愛人と子供たちのために17世紀に建設。19世紀の火災の後、再建されました。現在は市役所や図書館として使われているので、内部を見られるのは焼失を免れた大理石の間(マルモアザール)のみです。
実はミラベル宮殿よりも、付属のミラベル庭園のほうが多くの人々を魅了しています。色とりどりの花々が咲き誇るこの庭園は、ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』に登場しました。とりわけペガサスの泉と、その近くにある階段は有名な「ドレミの歌」のシーンに登場したので、思わずあのメロディーを口ずさみたくなります。
ザルツブルクにはカフェがたくさんありますが、新市街側でおすすめしたいのがカフェ・クラシックです。ここはモーツァルトの住居(生家とは異なる建物です)の1階にあるので、見学後の観光客の姿が多いですが、地元の人も訪れます。この店でおすすめしたいケーキはモーツァルトトルテです。モーツァルトと名の付くケーキは、なぜかどの店でもピスタチオクリームが使われています。そして、この店にはモーツァルトメランジェという名物ホットコーヒーもあり、ミルクコーヒーの上に生クリームとピスタチオの実がトッピングされています。さらにザルツブルクで生まれた名物チョコ、モーツァルトクーゲルがひとつ添えられているのがうれしい!
ザルツブルクの南東一帯は、ザルツカンマーグートという山々と湖が織りなす風光明媚な大自然が広がっています。この地方ならではの迫力の絶景を楽しむのがプランAです。ザルツブルク中央駅前からポストバスに乗って出発しましょう。ザンクト・ギルゲンで降りたら、ヴォルフガング湖のクルーズ船に乗って、対岸の町ザンクト・ヴォルフガングに渡ります。ここからシャーフベルク登山鉄道に乗り継げば、いよいよオーストリアでも指折りの絶景が広がる山頂の展望台に至ります。
5~10月に運行するシャーフベルク登山鉄道は世界中からの観光客で賑わう人気スポットなので、事前に列車のオンライン予約をしておくのがおすすめです。車窓からの眺めは進行方向左側がよいですが、標高を上げると右側の風景が開けてきます。山頂駅までの所要は約35分。山頂駅から展望台まで歩けば、眼下にはヴォルフガング湖、モント湖、アッター湖が広がり、さらにダッハシュタインの山々など360度の絶景を堪能できます。
湖船と登山鉄道が運休する11~4月や天気が悪い日には、ザルツブルクから出ている定期観光バスツアー利用のプランBがおすすめ。観光バスなら効率よく郊外の見どころをまわれます。パノラマツアー社が運行する「サウンド・オブ・ミュージック・ツアー」は特に人気があり、映画のロケ地となった場所を中心に走り、途中下車の時間もあります。
同社の「ハルシュタット半日ツアー」もおすすめです。ザルツカンマーグートの奥深くにたたずむ町ハルシュタットには世界最古の塩坑があり、紀元前から独自の文明が栄えた場所なのです。湖に沿った町の姿は美しく、約2時間30分の滞在時間があるので、ゆっくり楽しめます。どちらのコースも14:00ぐらいにはザルツブルクに戻ります。
ザルツブルク中央駅16:07発の特急RJXに乗ると、ウィーン中央駅着は18:30となります。
この1泊旅行では「ザルツブルクの旧市街」と「ハルシュタット、ダッハシュタイン、ザルツカンマーグートの文化的景観」の2ヵ所の世界遺産を訪問しました。
ここで紹介できたのは見逃せない重要な見どころだけです。この地方にはまだまだたくさんの魅力があります。興味に合わせて付け加えて、より印象深い旅を楽しんでくださいね。
TEXT:鈴木眞弓(アルニカ)
PHOTO:iStock/鈴木眞弓(アルニカ)
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