W29 世界の映画の舞台&ロケ地
2024.12.12
キーワードで検索
『ピアニスト』(2001年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞し、『エル ELLE』(2016年)でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたイザベル・ユペールが主演を務める映画『不思議の国のシドニ』が2024年12月13日(金)に公開されます。主人公であるフランス人作家のシドニが訪れた日本は、不思議に満ちた国。ちょっぴり滑稽な日本人の行動に困惑しつつも、京都や奈良の歴史ある風景や自然とアートが共存する直島など、美しい風景に心がほどけていきます。日本人にとってはおなじみの風景の中に、新しい発見があるこの映画。シドニとともに、不思議の国・日本の旅へ出かけてみましょう。
夫を亡くし喪失感を抱えるフランス人作家のシドニは、日本の出版社から招かれ日本を訪れることに。大阪の空港で彼女を迎えたのは、フランス語は堪能だが寡黙な編集者の溝口。朴とつとした溝口に案内され、初めての日本に戸惑いながらも、彼女の作品を愛する日本の読者たちと対話しながら、シドニは奈良・京都・直島など、さまざまな場所を訪れます。そんなある日、突然彼女の前に亡くなった夫アントワーヌの幽霊が現れて……。旅を通して自身の過去や心と向き合いながら、シドニの心はどう変化するのでしょうか? フランス人であるシドニの目線で見る日本の風景にも注目です。
この映画の撮影が行われたのは、京都、奈良、直島など。本作で印象的だったスポットをいくつか紹介しましょう。
まずは、奈良。鹿が草を食む奈良公園を通り、シドニと溝口が向かったのは東大寺。世界最大級の木造建造物である大仏殿の中には、奈良の大仏として知られるご本尊・盧舎那仏(るしゃなぶつ)が鎮座しています。像高14.98mもの大仏様をふたりが見上げる姿は印象的です。
続いて、京都。法然院にある谷崎潤一郎夫妻の墓を訪れたシドニと溝口。夫婦がひとつの墓に眠っていると聞いたシドニの「無駄がないわね」というコメントに、文化の違いを感じるシーンでもあります。
法然院は鎌倉時代に住蓮・安楽が創建した仏教寺院。映画で登場した谷崎潤一郎夫妻の墓をはじめ、風情ある茅葺、数寄屋造りの山門、国宝の十一面観音や古刹など、見どころがたくさんあります。
直島に向かうフェリーで、シドニが「カプリ島にいるみたい。」とつぶやくシーンがあります。監督は日本について「近くに感じると同時に異国にも感じられる国」と話していますが、このシーンはその感覚が伝わるシーンのひとつといえるでしょう。
直島は、アートと自然が調和する島。その風景がシドニの旅の終盤をそっと彩ります。なかでも、シドニが海の絵を鑑賞するシーンは印象的。ロケ地となった「ベネッセハウス ミュージアム」は美術館とホテルが一体となった施設で、映画からもわかる通り、瀬戸内海を望む高台に位置する気持ちのいい場所です。
脚本も務めたエリーズ・ジラール監督によると、この作品は、監督自身が2013年に初めて日本を訪れたときの感情を基に生まれたそう。また、物語の舞台を日本に選んだことを、「日本の古いものと超現実的なもの(伝統文化と新しい文化)の共存は、私の心に深く響きました。そしてその要素が、日本を舞台に選んだ理由。」と話しています。この作品を「日本への愛の告白」と語る監督の、日本愛に満ちた映画をぜひスクリーンで満喫してみてはいかがでしょうか。
TEXT:清水真理子
W29 世界の映画の舞台&ロケ地
422作品の物語の聖地を旅の雑学とともに歩こう
旅の図鑑
2023/07/06発売422の映画作品の舞台やロケ地となった場所へご案内。アジアからアフリカまで、物語の世界を旅してみよう。
422の映画作品の舞台やロケ地となった場所へご案内。アジアからアフリカまで、物語の世界を旅してみよう。