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駅といえば、旅立ちを連想させる場。旅行好きな方にとっては、空港と同じくなじみ深い場所かと思います。今回は旅の出発だけではなく「人生の出発」にもまつわる、縁起の良い名前の駅があるということで、静岡県島田市を訪れました。
訪れたのは大井川鐵道の「合格駅」。ひと昔前にタイムスリップしたような外観ですが、無人駅として令和の今も現役です。
大井川鐵道は、静岡県大井川流域を基盤とする鉄道会社。車窓から大井川沿いののどかな風景を楽しめるほか、通常電車に混ざってSLも通年運航しているため、観光列車としても人気があります。
合格駅は、1927年の開業時は「五和(ごか)駅」という名前でした。2015年から、この駅名を「合格」にもじった合格祈願の地域おこし活動が盛んに行われるようになります。そしてついに2020年、一つ先に門出駅が開業することに伴い、それまでの合格にちなんだ地域おこしにもあやかって駅名を「合格駅」に改称しました。
このように地域の人の思いが集まってできた祈願スポットの合格駅。現在駅舎内には木彫りの「合格地蔵尊」が祀られています。
駅舎内にはノートや付箋が置かれていて、訪れた人は思いおもいに合格祈願しています。自分の願い事はもちろん、家族や大切な人の合格を願っている人も。そして、「今後受ける何かしらの試験に合格できますように」というような願い事まで。合格駅のどことなくのんびりした空気感が、このようなゆる〜い願掛けもできる大らかなパワースポットを作り出しているのかもしれません。
ちなみに、「おかげで合格できました!」という書き込みも多く見られました。駅だから、なにかのついでにフラッと立ち寄りやすいのかも。
無人駅なのに、なんだか温かい人の気配のようなものを感じるのも印象的でした。木造で温かみのある駅舎なのもあるでしょうが、長年地域おこしをしてきた人や、たくさんの人の願いなど、町や相手を思う気持ちが集まった場所だからなのかもしれません。
駅舎内を撮影していると、ちょうど列車が来ました。2~3両編成のこじんまりした列車です。平日の日中だったのもあってか、乗車する人も降車する人も誰もいません。それでも車掌さんが電車を降りてていねいに点検をし、作業が終わるとまた乗り込んで、ゆっくりと電車が走り出します。駅舎からホームをつなぐ踏切には遮断機がないので、目の前を通る電車は手を伸ばせば触れそうな距離。
電車が到着してから発車するまでの短い時間でしたが、その時間がとてもゆったりと感じられ、穏やかな気持ちになりました。
今回は通常電車の撮影でしたが、大井川鐡道は通年でSLの運航を行っているため、タイミングが合えば、レトロロマン全開のSLを見たり、乗ったりすることもできます。
のどかであたたかい雰囲気に包まれる無人駅。
電車の利用はもちろん、なにかのついでに立ち寄っても楽しめる場所でした。合格祈願はもちろん、「ちょっと癒しが欲しいかも」という方にもぴったりのスポット。ぜひ足を運んでみてください。
TEXT&PHOTO : 奥津結香