内容紹介
圧倒的なスケールの解放感と自由。究極の“夏休み”を味わうべく訪れたのは、幼い頃から憧れていた南の島だった。そこには、思い描いていたとおりの夢のようなトロピカルな暮らしがあり、そのいっぽうで日本の都会暮らしでは考えられない、抜け出したくても抜け出せない「血」と「地」に縛られた不自由な現実があった。本書は、筆者を取り巻く島の住人との人間模様や、自分たちと違う価値観をもつ世界の「光と影」を記した45日間の滞在記である。滞在当時の日記の原文とともに、旅を終えた4年後に綴る「いま、思うこと」を掲載。
【本書より抜粋】
おれの思う面白いとは、「自分らと違う」ということ。自分らと違う世界を、自分らより豊かか貧しいかではなく、おもろいかおもろくないかで判断したいと思っている。だって、それ以上のことがわかる人って、天才が嘘つきでしょ。おれ、どっちでもないから。
豊かさに関していえば、自分らと価値観の違う世界がどこかにあるということこそが、わしらの世界の豊かさにも繋がると思っている。自分らと違う他者を貧しいか悪かのどちらかと決めつけて、自分たちの価値観を押しつけるかやっつけるかの発想しかない世界こそが貧しさそのものだと思っているし、退屈だと思っている。
おれたちが地球上で最高のイイ顔で生きているなら、その思い上がりも仕方ないが、自分らとは違う世界の、しかもおれたちの物指しでいう貧しい国の人たちが、おれらよりイイ顔で生きている場面にたくさん出会った。これは最大のミステリーだ。
もがきながらも夢のトロピカルライフに勤しむのは、そのナゾの解明の一助にでもなればいいという思いから。
第1巻の本書では、滞在1日目から15日目までを収録。期待に胸を膨らませて訪れた南の島で、ブッシュマテリアル(木と葉っぱ)で造られた家でガリバー気分の暮らしが始まる。ある日、筆者は村の権力の双璧をなす学校と教会という二大権力からそれぞれランチに招かれ、力くらべのような“ランチ合戦”に巻き込まれて行く……。
【著者プロフィール】
山西崇文(Yamanishi Takafumi)
写真家。30代半ばから始めたバックパッカースタイルの旅で開眼して以来、写真や文章で作品を発表し続けている。見知らぬ世界への出会いの喜びの一方で、何かが失われている、そんな直感と予感を胸に、それでも見知らぬ世界との出会いを求めて旅に出る。
TRANSIT(講談社)、Bird(講談社)、カメラライフ(玄光社)、などで作品を発表。また、写真展という発表形態に拘らず、旅トークイベント『お寺 de 旅トーク』や、バライタの印画紙を手に旅を語る『写真紙芝居』など、旅の臨場感に拘ったイベントにも力を入れている。
〈写真展・展覧会〉
2003年 青山 『旅人的熱狂視線』、2008年 横浜 TICADアフリカ会議の企画展として『3人が見たアフリカ』(女優 鶴田真由、写真家 設楽茂男氏と)、2010年 大阪 『uninstall』、2010年 大阪 『Faaaaaantastic INDIA』、2014年 フジフィルムスクエア 『TRANSIT回顧展 旅する惑星』、2015年 東京 『Yemen2005』、2018年 東京『解綴 ~ある旅の記憶と記録、その呂律の羅列と陳列に関して』他
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