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年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
日本ではクリスマスが終わるとすぐに街中は正月装飾に一変しますが、フランスではブッシュ・ド・ノエルが終わると次にガレット・デ・ロワがやってきます。ガレット・デ・ロワとはアーモンドクリームなどが入ったパイのこと。1月6日の公現祭に食べるもので、1月中であれば街中のパン屋やパティスリー、スーパーマーケットなど、至る所で売られています。ちなみに「ロワ(Rois)」とは「王たち」という意味で、キリスト教の東方の三博士を指します。
近年、日本でも認知度が上がってきているガレット・デ・ロワですが、ついに日本からフランスに逆輸入されたものがありました。
それはフェーヴ無しガレット・デ・ロワ! 通常であれば、ガレットにはフェーヴと呼ばれる陶器で作られた小さな人形などを入れて作られます。そして家庭で切り分けた時に、そのフェーブが入る一片に当たった人が王冠(市販のものには紙製のものが付きます)を被り、その人に1年を通して幸運が訪れます。
日本で売られているガレット・デ・ロワには、安全上の問題(誤飲や歯が欠けるなどを避けるため)から、パイ生地の中にフェーヴは入れられていません。フェーヴはガレットと別に付属させ、ガレットの中には何も入っていないか、もしくはアーモンドなどでフェーヴを代用しています。
フランス人からすれば「そんなのガレット・デ・ロワじゃなくない!? 」と突っ込まれそうですが、そのフェーヴ別途付属方式を、フランスでも取り入れるパティスリーが今年現れました。
その1つが、日本でも有名なアルノー・ラエール。M.O.F(国家最優秀職人章)も取得している、フランスでも指折りのパティシエです。仏ラジオ局フランス・ブルーによれば、アルノー・ラエールはガレットの中にフェーヴを入れないアイディアを、日本から持ってきたとのこと。ちなみにアメリカにも日本と同じ理由で、フェーブを入れないガレットが存在するということです。
私も今年アルノー・ラエールのガレットを買ってみましたが、本当にフェーヴは外付け。店員さんも「パティシエの考え方によりガレットの中にフェーヴは入っていません」と説明していました。
前述のフランス・ブルーは、「どうやってガレットの中にフェーヴを入れればいいの? 」と問いかけています。「答えは簡単、ガレットを切り分けた後、どれか1つに入れればいいんだよ」。それはそうですけど……。
一方で、このフェーブが入っていないガレット・デ・ロワ、意外な場所では昔から行われていました。どこかというと、それは大統領府であるエリゼ宮。1974年から1981年まで大統領を務めたジスカール・デスタンが、このフェーヴ無しガレットの伝統を始めました。なぜでしょうか? その心は……「共和国に王がいてはならない」。お見事!