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今週末ついに新大統領決定へ! 街歩きの注意と今までのおさらい

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2017年5月6日
公開日
2017年5月6日
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5月7日の仏大統領選第2回投票で、新しい共和国大統領が決まります。この時期にフランスにいる人は、5年に1度行われる国家的イベントの空気に触れられる、絶好の機会です。決選投票を控え、現状はどのような感じなのか、候補者を簡単に振り返ってみました。

まず第2回投票に進んだのがマクロン前経済相とルペン国民戦線前党首(一時的に代表を退いている)の2人。両者のうち、現在優勢と伝えられているのが前者のマクロン氏です。

仏北部の町アミアンに生まれたマクロン氏は、パリにあるアンリ4世高校を卒業し、パリ第10大学へ進学。その後パリ政治学院、国立行政学院(ENA)と進み、財務省財政監察官、ロチルド銀行、大統領府副事務総長を務め、オランド政権時のバルス内閣で経済・産業・デジタル大臣に就きました。

アンリ4世高校は、パリ最難関といわれるルイ・ル・グラン高校のライバル校で、フランス人なら誰でも知る名門校。パリ第10大学は、ドビルパン元首相、イダルゴ・パリ市長、ストロス・カーン元IMF専務理事、サルコジ前大統領の出身校です。パリ政治学院はエリートコースの登竜門のようなグランゼコール(大学の上のレベルに位置付けられる高度な専門職業教育をする学校)ですし、国立行政学院は官僚および政治家のモデルコース。その後の職歴も、読んで字のごとく政治・経済の中心を通っています。つまり庶民から見ると、「別世界の人だな……」と思ってしまう内容です。

一方でルペン氏は、パリ郊外ヌイイ・シュル・セーヌで生まれ、高校は同じく郊外サン・クルーにあるフローラン・シュミット高校(現アレクサンドル・デュマ高校)に進学します。パリ第2大学を卒業後は弁護士に。そして父ジャン・マリー・ルペン氏が作った極右政党・国民戦線に入り、政治家の道へ進みました。

マクロン氏の経歴と比べると、ルペン氏の経歴は霞んでしまいますが、生まれたヌイイ・シュル・セーヌはパリに隣接した高級住宅地ですし、フローラン・シュミット高校があったサン・クルーも、お金持ちが集まる地域です。パリ第2大学を卒業し弁護士になっており、こちらも庶民という感じではありません。ただマクロン氏と並んだ場合では、イメージ的に庶民の側に見えます。

これを利用し、エリートのマクロン氏はいつも大企業の側に立ち、弱い立場である雇われの身や中小農家の味方ではない、とルペン氏は訴えます。マクロン氏のように欧州連合(EU)を肯定し、自由経済を進めることは企業にとって良いかもしれないが、賃金が安い他のEU地域に工場などの雇用は移転してしまうし、それら賃金の安い地域で作った製品が自由にフランス国内に入ってくるせいで、フランス国外にビジネス展開できない中小企業や農家は、競争に負けてしまう。EUに反対のルペン氏はそんな困った庶民の不満を代弁していく、という構図で票を広げようとしています。

またルペン氏は、マクロン氏はまず融和が大事というが、それが実際、フランス国内で頻繁に起こるイスラム過激派のテロの解決になるのか。加えてシェンゲン協定の加盟国間で人が自由に行き来できる現状をあらため、国境管理をすべきだ、とも主張します。

一方でマクロン氏は、EUという大きな経済圏から抜けたら、それこそフランス経済は低迷し、今以上に雇用も無くなる。逆に経済を停滞させる足かせとなる各種規制を緩和し、新しい投資や産業を呼び込み、硬直したフランス社会を活性化すべきだ、と訴えます。またルペン氏は減税や補助など甘い言葉をささやくが、財源をどうやって工面するのか、とも指摘します。そして移民出身者については、区別し遠ざけようとすれば、テロを起こすような過激思想を助長するだけだ。それよりは同じフランス国民として、共に歩めるような環境づくりをもっと進める、という考えです。

マクロン氏とルペン氏の支持率は、一時期僅差になったこともありました。しかし、ルペン氏の根底にある極右のイメージが払拭できないことに加え、第1回投票で敗れた候補者、中道右派フィヨン元首相と左派アモン前教育相がマクロン氏支持に回りました。そして第2回投票を控えたマクロン氏とルペン氏両者によるテレビ討論で、ルペン氏はマクロン氏の政策を嘲笑するだけで論理的に自らの政策を語れなかったことが、ルペン氏のマイナスイメージを広げました。このため直前の今日に至っては、マクロン氏が有利という雰囲気になっています。

投票結果がどちらに転ぶにせよ、投票が締め切りとなる5月7日20時以降は、出口調査や開票結果を受けて、パリ各所では新大統領の歓迎、反対の集まりがあると予想されます。反対集団が暴徒化したり、歓迎の集まりを狙ってテロが起きることも十分に考えられますので、選挙はテレビや街のざわつきを感じるくらいで、夜間の外出および政治関連の集まりは、なるべく避けるようにしてください。

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