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昨年6月30日に亡くなったフランスのシモーヌ・ヴェイユ元保健相のパンテオンへの合祀式典が、今月1日に行われました。パンテオンとはパリ市内5区にあるフランスの偉人をまつる霊廟のこと。式典では、大勢の人がパンテオン前から伸びるスフロ通りに集まり、女性解放に奔走した稀代の女性政治家の棺がパンテオンに入っていくのを見送りました。
パンテオンに女性が合祀されるというのは、物理学者マリー・キューリーなどフランスの歴史でも多くなく、シモーヌ・ヴェイユで5人目。日本ではそれほど、なじみのない人かもしれませんが、なぜシモーヌ・ヴェイユはこれほどまでにフランスで重要視されるのでしょうか。それには彼女が生前に実現してきた数々の活動がありました。
パリで生まれたシモーヌ・ヴェイユは、第二次大戦中にゲシュタポに逮捕され、16歳のときにアウシュビッツの強制収容所に送られます。強制収容所での生活をなんとか生き延びた彼女は、パリに戻りパリ政治学院などで学び官僚へ。ジスカール・デスタン大統領就任時のシラク内閣、およびバール両内閣で保健・家族相に就任します。
シモーヌ・ヴェイユが実現した政策でもっとも注目されているのが、まず中絶の合法化です。カトリックの考え方の名残から、当時のフランスでは、まだ中絶は刑法で罰せられる対象でした。そのため中絶を望む多くの女性は非合法に手術を行うか、外国へ行くしか手段がありませんでした。その状況下で、シモーヌ・ヴェイユは中絶解禁の法案を通し、法制化を実現。当時、国民議会に女性議員はとても少なく、法案の裁決にかなりの困難が伴いましたが、シモーヌ・ヴェイユはそれをやり遂げました。
その後もシモーヌ・ヴェイユは欧州議会議長、フランス憲法評議会評議員などを歴任。欧州憲法条約発効の推進にも尽力しました。つまりホロコーストを体験し、女性の解放を進め、欧州統合を進めたことが、シモーヌ・ヴェイユの大きな評価につながっているのです。
昨年6月30日にシモーヌ・ヴェイユが亡くなった後、マクロン大統領はシモーヌ・ヴェイユを夫のアントワーヌ・ヴェイユと共にパンテオンへ合祀すると発表。そして今回式典が執り行われました。
式典ではシモーヌ・ヴェイユを讃えるパフォーマンスが行われる中、儀仗兵がヴェイユ夫妻の棺をパンテオンに運びました。マクロン大統領の演説があった後、棺はパンテオンの中央部へ。その後、地下の霊廟へと安置されました。
通常パンテオンは有料ですが、7月1日から7月8日まで無料解放されています。この機会に、地下で眠るヴェイユ夫妻に会いに行ってみませんか。
【データ】
住所:Place du Panthéon 75005 Paris
営業時間:10時〜18時30分(10月1日から3月31日は〜18時)
休み:1月1日、5月1日、12月25日
最寄り駅:RER B線Luxembourg