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2019年1月23日〜3月18日の期間、パリ市内ギメ東洋美術館にて「古都奈良の祈り」展が開かれています。平安時代の作である木造地蔵菩薩立像、鎌倉時代の作である木造金剛力士立像(阿形・吽形)の3体が、「ジャポニスム2018―響き合う魂」の企画の一環として興福寺を出て海外で初めて展示されました。
初日前日にマスコミなど関係者へ向けた内覧会があり、拝観してきました。そしてこの日、パリは雪でした!
今回日本から来仏した3体が安置されたのは、美術館内1階にある旧図書室の展示スペースです。中央に地蔵菩薩立像、脇侍に対の金剛力士立像が並びます。背景にはずらりと並ぶ美術館が持つフランスの古書。日本で拝むのとは異なった趣です。
中央に立つ地蔵菩薩立像は平安時代(9世紀の)の作。重要文化財に指定されています。同展によれば、地蔵菩薩は元々バラモン教の地神と考えられており、大地に宿る徳を擬人化した尊格として仏教に取り入れられたそうです。
今回来仏した地蔵菩薩は、興福寺に3体ある鎌倉時代以前の地蔵菩薩のうちの1体で、現在は非公開の仮講堂内に安置されているもの。2017年に修理を終え、今回のパリで初めて公開されました。
地蔵菩薩を守護するように立つ金剛力士立像は、鎌倉時代(13世紀)の作。国宝に指定されています。同展によると、金剛力士の起源はインドで、釈迦の強化に従わない者を降伏する薬叉または密迹として、阿含経に説かれているそうです。また金剛力士は執金剛神とも呼ばれ、ギリシア・ローマ神話のヘラクレス、ディオニュソス、プットや、古代インドの神ヤクシャ、中央アジアの王侯像などの造形から影響をうけているといいます。
今回の金剛力士立像は、いつもは興福寺の国宝館で公開されています。
内覧会では参加者向けに今回の展示と、それぞれの仏像に対する解説も行われました。日本だと何気ないこれら3体の並びも、やはり異文化を通すと多くの疑問が起きるようで、「この3体にはどのような関係性があるのか」「なぜ神が神を守るのか、不思議だ」といったような質問も飛びました。
また、お寺ではなかなか拝めない、それぞれのお背中も拝観できます。
そして同企画展を訪れるなら、併せて見ておきたいのが他の地域、時代の仏像です。ガンダーラ、インド、中国、韓国などシルクロードの各場所、各時代の仏像が美術館内には常設展として展示されています。これらと一緒に「古都奈良の祈り」展を見ることで、世界に横たわる大きな地理的、時代的つながりを感じられるはずです。
【データ】
住所:6 place d'Iéna, 75116 Paris
開催期間:2019年1月23日〜3月18日(10〜18時)
定休日:火曜
料金:11.50ユーロ
最寄り駅:地下鉄9号線Iéna