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『おおかみこどもの雨と雪』パリ上映に細田守監督が登壇、ファンと交流楽しむ【ジャポニスム2018】

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2019年2月20日
公開日
2019年2月20日
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今月のパリは多くの日本の映画関係者が、日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」の映画イベント「日本映画の100年」を飾るべく来仏しています。「日本映画の100年」とは、日仏の専門家が共同で119本を選び、1920年代から2018年までの日本映画の100年を巡る企画です。初日は戦前の無声映画『雄呂血』で幕開けし、現在は第2部-Ⅱ「日本映画再発見 知られざる傑作映画特集」と第3部「現代監督特集」が開かれています。

そのような中、2月12日にはアニメ『おおかみこどもの雨と雪』がパリ日本文化会館で上映され、同作品でメガホンを取った細田守監督がアフタートークに登壇しました。

『おおかみこどもの雨と雪』は2012年に公開されたアニメ映画です。「おおかみおとこ」と出会った19歳の女子大学生"花"は、おおかみおとこと恋に落ち、その後二人の間に"雪"と"雨"という二人の「おおかみこども」が誕生します。その、おおかみおとことの恋、そして人間とおおかみおとこの「ハーフ」である雪と雨の母親になった花、そして子どもたちの自立を描いた物語です。

じつは私、この作品がとても苦手です。特に映画館など、公共の場所で見るのがつらいです。苦手というのは、素晴らしい作品であるため私自身の感情にとても訴えかけてきて、できることなら誰にも邪魔されず一人で鑑賞したいからです。

人間とおおかみという二つの世界で揺れる、おおかみおとこと花、子どもたち。私見ですが「人間」と「おおかみ」二つの世界は、そのまま今私が住むフランスと日本ということにも投影できます。また私が今まで取材でお話をうかがう機会のあった、両親それぞれが違った文化背景を持つ子どもたち、またはそういう環境で子育てをしてきた親たちにも置き換えられます。彼ら、彼女らがどんなことを考え、悩んできたか、作品を見ながら私の心に押し寄せてきます。

多文化間での結婚・子育てという形だけでなく、同じ国や文化圏であったとしても、相容れない壁を感じるような集団、状況はいくらでも存在します。画面内で葛藤する花やおおかみおとこ、そして子どもたちの状況が、それらと重なり合り、どうしても感情が高ぶってしまいます。

それくらい私にとっては苦手な(好きな)作品なのですが、映画本編だけでなく細田監督によるアフタートークも大いに盛り上がりました。

観客からは、なぜ細田作品はファンタジーを用いたり、動物などが登場するのかという質問が飛びました。それに対して細田監督は「人間のことを描くときに、超自然的なことを挟むことによって、人間の皮がむけて本質が見えてくる。だからファンタジーを通して描いている」と言います。

また物語の中で、雨と雪が自分の将来をそれぞれ選択するシーンがあります(同作における、とても素晴らしい描写部分の一つです)。これに対しては「選択を悩む瞬間というのが人生にはある。人生で立ち止まる瞬間で自分とは何かということが見えてくる。選んだ方向によって、自分はこいうことだと分かることがある」と細田監督は観客に伝えました。

細田監督のアフタートークが行われたこの日は、平日夜にも関わらず多くの人が会場であるパリ日本文化会館を訪れて、細田監督との対話を楽しみました。こういう制作者とファンが身近に交流できるイベントがたくさん行われていることが、まさに今回の「ジャポニスム2018」の良いところです。

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