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カンヌにお坊さん歩く 富田克也監督『典座 -TENZO-』上演

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2019年5月21日
公開日
2019年5月21日
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地中海のビーチとお坊さん。今年のカンヌ国際映画祭では、そんな組み合わせを見ることができました。「批評家週間」に全国曹洞宗青年会が企画した映画『典座 -TENZO-』が出品され、5月20日にカンヌでのお披露目があったからです。その上映会に行ってきました。

内容は見てのお楽しみですが、とにかく私が感じたのは「お坊さんも一人の人間だ」ということ。「お坊さんだからちゃんとしないといけない」のは確かなのですが、それと同じくらい「お坊さんも考え悩む人間である」ということが描かれていました。「その考え悩むお坊さん」の思いに対して、ナレーション的に挿入される曹洞宗の尼僧・青山俊董さん穏やかな語り口が、作品をさらに引き立てています。上映の最後は観客の拍手で終わりました。

上映を終えた後はビーチ沿いの道を歩いて、記者会見の会場であるカンヌ国際映画祭の敷地内にある日本ブースへ移動します。目の前にはカンヌのビーチ。そこに袈裟を着たお坊さんという、とても良いコントラストになっていました。

今回の作品を撮った富田監督は、主演の河口智賢さんと従兄弟同士です。記者会見では、身内らしく打ち解けた会話が時折出たり、終始和やかな雰囲気でした。

担当者によると『典座 -TENZO-』はフランスでも公開予定とのこと。フランスは弟子丸泰仙さんという僧侶が60年代後半に曹洞禅の坐禅というものを広め始めたという土壌があります。その結果、現在ではその芽が大きく育ち、各地でたくさんの実をつけています。同作がフランスで公開されても、興味を持つ人は多いのではないでしょうか。

さて、記者会見の後は、精進料理を使ったカクテルパーティーへ。肉や乳製品などを一切使わないビーガンのタパスが出され、招待された映画関係者も舌鼓を打っていました。

カクテルパーティーの会場には、地中海を前にして袈裟姿のお坊さんとフランス人映画関係者が談笑するという、なかなか見ることができない光景が広がりました。文化が出会い、お互いの理解があり、そこから新しいものが生まれていく。この日もそんな景色が広がっていました。

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