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「古楽」って何か知っていますか? バロック期以前の音楽のことを、こう呼んでいます。現在、音楽というとコンサートホールなどに足を運んで聴くというのが一般的ですが、当時は宮廷や邸宅のサロンなどで開かれていました。昔の上流階級の人にとって、客人へのもてなしや家での楽しみのひとつでした。
いま、新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くのコンサートが中止や延期になっています。大人数が集まるコンサートを開きづらい状況です。それなら逆に、かつてのサロン・コンサートのようによりプライベートな空間で、感染拡大を防ぎながら演奏を行おうという試みが起きています。
友人でありヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の原澄子さんと、その演奏パートナーであるバロックフルート奏者の奥村みゆきさんが、「おうちでバロック」という同様の活動をパリで始めたそうで、話を聞いてみました。
▲奥村みゆきさん(左)と原澄子さん(右)
今回の試みについて、もともとのきっかけは、ベルギーで活動するバロックフルート奏者の柴田俊幸さんが始めた「デリバリー古楽」に触発されたといいます。実際には、どのような曲を聴けるのでしょうか? 原さんによると、ルイ14世の宮廷で奏でられていたような曲を中心に、利用者へ届けているそうです。
演奏プログラムは固定。具体的には17世紀後半〜18世紀の、以下のような曲を演奏します。ただしプログラムは、今後リクエストに応えて構成することも視野に入れているそうです。
– ジャン・バティスト・リュリ『Idylle sur la paix』より序曲
– マラン・マレ『マレ風ソナタ』
– サント・コロンブ『2台のヴィオールのためのコンセール』より 「涙」(クラヴサン用編曲Pierre Gouin)
– ミシェル・ド・ラ・バール『フルートのための組曲9番"Sonata l'inconnue"』よりシャコンヌ
「おうちでバロック」の料金は€60〜(変動の可能性あり)。時間は演奏準備時間など含めて40分(演奏時間は30分程度)で設定されています。
家への訪問と演奏については、感染拡大を防ぐため、いくつかの制限をしています。手洗いやアルコール消毒の衛生管理はもちろんのこと、演奏者と観客は2mの距離を取り、観客同士は1mを空けます。演奏者と観客は、コンサート中もともにマスクを着用して行います。利用者に体調不良の兆候がある場合は、無料でキャンセルできるなど、演奏に際しては事前にさまざまなルールを定めています。
新型コロナウイルスの影響で、社会生活はずいぶん変わりました。制限は窮屈ですが、ニューノーマルのなかで新たな楽しみを見つけていくのもいいかもしれません。もし興味があるようなら、Facebookのページもしくはメールアドレスまで問い合わせてみてください。
【演奏者プロフィール】
■奥村みゆき(おくむら・みゆき)
バロックフルート。福岡県生まれ。10歳よりフルートを始める。上野学園大学を奨学生として入学し、モダンフルートとバロックフルートを学ぶ。大学卒業後フレンチスクールのフルートの音に憧れ渡仏。ストラスブール、ラン高等芸術学院修士課程をシルヴィア・カレッドゥの下で修了。2020年9月より マルク・アンタイ氏の下バーゼル・スコラカントルム音楽院在学予定。 パリ・フルートコンクールにて6位および特別賞受賞。オリヴィエ・オルト指揮『Orch'est Ensemble』とライネッケの協奏曲を共演。定期的にフランスでリサイタルや、ラジオフランスで公演している。
■原澄子(はら・すみこ)
ヴィオラ・ダ・ガンバ。新潟県生まれ。6歳よりピアノに親しむが、東海大学教養学部芸術学科音楽学課程入学後、ヴィオ ラ・ダ・ガンバに出合い、3年次より専攻楽器とする。第81回読売新人演奏会に出演。2013年同 大学院芸術学研究科音響芸術専攻修了。修了時日本福音ルーテル教会にてリサイタルを開催する。同年渡仏、パリおよびブーローニュ・ビヤンクール市立高等音楽院古楽科で学ぶ。ヴィオラ・ ダ・ガンバを志水哲雄、福沢宏、アリアーヌ・モレット、グイド・バルストラッチ、ニマ・ベン・ダヴィッドの各氏に師事。所属するアンサンブルでのツアーや、日本での演奏会に多く出演している。